すでに滑稽
前回のあらすじをざっくり説明しよう。
暗殺部隊に任務で枯れ木の森に行く→キメラに遭遇→その時に
レイジ、ルネ、レネが川に流される→研究所で合流することになった。
は?説明が雑すぎやしないかって?それに関してはこっちは渡された台本読んでるだけなのでなんとも言えないです。
そもそもお前誰だよって?お忘れですか皆さん。私はレイジさんを異世界に送り出した天使ですよ。エリアスの出番は無いのか?ですか?あの子はまたそのうち出番があると思うので大丈夫でしょう。(適当)
まあそんなことはいいとしてですね。せっかくこうして出てきたわけですから少しお話をしましょう。早く本編を見たいでしょうが焦らず落ち着いて私の独り言にお付き合いください。
突然ですが転生者、というか人間は面白いものですね。力を手に入れるとそれを使って好き放題やるんですから。どんな人間にも抑えている欲がある。食欲に性欲、富、名声など人間には色々な欲があります。チート転生というのはそれらを抑えている理性という名の錠を外す鍵みたいなものです。男性に多いのは富と性欲ですね。あいつら転生させるとすぐにハーレム作りますから。
女性の場合も逆ハーレムを作る人も多いですが男性に比べると
少なくなにかするわけでもなく純粋に異世界ライフを楽しんでいるようです。
それで今回転生した坂下レイジという少年は珍しい方でして、
彼は「ハーレム作りたい」とか「金持ちになりてえ」とか
そんなことは考えてないんですよね。というか考えてもそれを実行しようとはしないというか。彼はただ今日を、明日を楽しく生きていたいとだけ思っているようです。
まああれだけ大変な日々を送っているならばそう思うのも当然ですが。私も何人もの転生者を見ていますがあそこまで色々なことに振り回されているのはおそらく彼が初めてです。
まあ何が言いたいかというとですね。これからも彼は色々なことに巻き込まれていくだろう、そしてその困難をどう乗り越えていくのか見物だな。ってことです。
あーほらほら丁度状況が動き始めたようです。
「ぷはっ」
ようやく足が付くくらいの浅さになった。俺は水の中から顔を出し川から上がった。両脇にはちゃんとルネとレネを抱えている。
運が良いことに流されている途中で二人を見つけることができた。近くの岩場に腰を下ろす。俺も二人も当然全身びしょ濡れだ。二人の呼吸を確認、レネの方は大丈夫。ルネの方は・・・呼吸がない!!
落ち着け、落ち着け俺。こういうときは・・・人工呼吸か!
人工呼吸なんてやったことはない。学校の授業で教科書をちょこっと読んだくらいだ。大丈夫、大丈夫手順は覚えているはず。まずは気道を確保、鼻をつまんで息を吹き込む。息を吹き込むとルネの胸が少し上がる。口を話して自然に息が吐き出されるのを待つ。息が吐き出されると同時にルネが水を吐く。
えっと確か、この場合は顔を横にして、気道に入らないように。
頭の中は焦りでいっぱいだが体はそれに反して冷静に動いてくれた。それから人工呼吸と胸骨圧迫を繰り返してようやくルネの呼吸が戻った。どっと疲れた。
寒い。てかよくよく考えたらびしょ濡れの状態で暖を取らなかったら寒いに決まっている。燃えそうな木が近くにあればいいが。
「うー寒い寒い」
寒いなーと思いつつ頑張って枝を集めて来た。どういう奇跡なのか雨が降ったはずなのにちゃんと乾燥してる枝があったぞ。すごくない?火をおこしてようやく暖を取ることができるようになった。俺は濡れた衣服を脱いで乾かす。おかげで今はパンイチである。(そのパンツも濡れている)
そういえば二人も暖とらないと、そう思ったとき俺の脳内に電流が走った。今あの姉妹は気を失ってる。だが二人はびしょ濡れでこのままでは風邪をひいてしまう。服を乾かさないと。
つまりこれはイベントシーンなのでは?ギャルゲーとかにもある
ちょっとえっちなシーンなのではないだろうか。というか今なら合法的に脱がせることができるんじゃなかろうか。
・・・・・・・だがそれはいけないことなんだ。さすがに寝ている女の子の服を脱がすとかそんな変態行為できるわけ無いじゃん。それは俺の中でのルールを破っている事になるじゃないか。
薬と万引きと変態行為は駄目って昔から言われているだろうが。
だがそこで何故か俺の中の天使と悪魔が出てきた。わかってる俺は天使の言うことしか聞かない。悪魔側に走ったらいけないんだ。悪魔が俺に語りかける。
「おい、脱がしちまおうぜ。こんな状況だし仕方ないんだよ」
それに対して天使が言う。
「そうだよ仕方ないよ。このままじゃ二人は風邪ひいちゃうよ」
そうそう言ったれ言った、・・・・・ほわっつ!?
ちょっと待てどういうことだ天使と悪魔の意見が一致しているぞ。そんな奇妙な現象があるか!?本当にちょっと待ってくれどうなってんだ。いや、こいつらの意見は一致してるように見えるが実際は多分少し違う。
悪魔は下心ありで脱がそうと言っているが天使の方はただ二人が風をひかないように服を乾かしてあげようという優しさから来ているのだ。多分。
「「これは医療行為だよ」」
天使と悪魔が口を合わせて言う。な、なるほどこれは仕方ないことなのか。確かにこのままじゃ風ひくしな、やっぱり服を乾かしておくべきだよな。よーし。俺は震える手つきで服に手を伸ばす。だがその時頭の中で天使でも悪魔でもない別の声が聞こえた。
「いや本人達起こせばよくね?」
この声は俺の頭の中にある神器、『メーティアスの赤書』の声。
普段頭の中でラーメンの話ばっかりしてるくせにこういうときだけ割り込みおってからに。許さん。
「おーい起きろー」
二人の頬をペチペチ叩いて起こす。なんだかこの格好だと何をやっても誤解されそうで怖いな。
「ん」
先に妹のルネの方が目を覚ます。自分の隊の隊長がトランクス一枚だった時少女は果たしてどんな反応をするのだろうか。なんとなく口よりも先に手が出てきてビンタされそうな気がするが。
「隊長、その、私たちに変なこととかしてないですよね?」
あら、思ったよりも落ち着いているのね。正直なところビンタだけじゃなく下手したらその後に蹴りが入ってさらに魔法が飛んでくるものかと思っていたが冷静に「変なことしてないですよね?」と聞いてくれて助かった。おかげで平和的に解決できそうだ。
「してないよ。それよりもお前ら服びしょ濡れだから乾かした方がいい」
「脱げと?」
「まあそういうことになるな」
もう恥とか変態と呼ばれる恐怖は捨てるわ。だってどんな言い回しをしても「脱げ」って言ってるのに変わりはないからな。それなら最初から脱げっていう方が楽だ。わかってる、皆どうせ「コイツキモいなー」とか思っているんだろう。じゃあ言わせてもらいたい。少女の体調の心配をする変態と少女が風邪をひいても涼しい顔でいるイケメン、一体どちらの方が胸を張れるのかを。
そんな心の冷たいイケメンになるくらいなら俺は心の温かい変態になりたい。ただそれだけのことだ。
「隊長、キモいです」
グサリと俺の心に言葉の棘、もといグングニルが刺さる。言われるとは思ったけどそのマジなトーンで言われると思ったよりもダメージが大きい。たまに「我々の業界ではご褒美です」とか言ってる奴がいるけど
実際に美少女に「キモい」って言われたらそんなこと言ってる余裕が心にないと思うんだ。現に俺はもう
天に召される一歩手前くらいまでライフが削られている。あと一回何か言われたらもう立ち直れないかもしれない。
「わかってる。でも俺自身が変態と罵られるよりもお前らに風邪をひかれる方が困るんだ」
とりあえず真剣だということが伝わればいいのだが。
「・・・あっち向いててください」
俺の熱意(悪意のないキモさ)が伝わってくれたようでよかった。俺は当然黙ってルネに背を向ける。
ガサ、ゴソ、モソ、バサッ。すぐ後ろで着替えている音が聞こえる。特にやましい気持ちがあるとかそういうわけではないのだがこうも近くで着替える音がするとビビりな俺としてはとてもドキドキする。俺は全然関係ないのに何故かすっごい恥ずかしい。これは俺がいつまで経っても非モテだからなのか!?
「とりあえずこれ着てくれ。」
そう言って俺は首を動かさずに深緑色のボロボロのフード付きのマントと黒いボロボロのマントを渡した。両方ともどう見ても旅人が使い古したであろうボロさだがこれは元からこういうデザインの神器なのだ。そんなボロマントだが2枚とも性能はなかなか魅力的である。マント系の神器はたくさんあるのでこのマントの名前が何だったか忘れたが深緑色の方は簡単に言うと透明マントだ。フードを被ると姿が見えなくなる。
黒い方は残像を発生させるマントだ。正直使い道はない。せいぜい思いつくのは装備して「残念だったなそれは残像だ」ごっこをするくらいか。
「姉さん起きて」
「んん」
頬を優しくぺちぺち叩いてレネを起こす。これで全員が目を覚ました。ようやく話が進みそうだな。
「よし、じゃあ今後のことについて話しておこう」
姉妹は仲良くくっついて俺の話を聞いている。ここまで仲が良いと微笑ましいな。今一瞬心の中で「ぐふふ何かごちそう様」と言いかけたがここでそんなことを言ったら全世界の人間に本気で嫌われそうなので心の中であっても言わないようにしよう。
「まず俺たちの現在位置だが正直に言うとわからん。わからんがこのぐしょ濡れで半分ドロドロになったもう絶対に使い物にならないであろう地図を見る限り、きっと多分恐らく目的地より遥か南の方だと思う」
「確信のある部分が一つもないんですが・・・」
それを言われてしまうともうどうしようもない。だってさっきも言った通り地図は水に濡れてドロドロになってしまったため一体どこに何があるのかほとんどわからない状態になっている。今の位置は山の位置や川の形から大体この辺かな~というふわっとした推測でしかない。本当はもっと近くかもしれないしもっと遠くかもしれない。
しかも今何時だ?俺は濡れた制服のポケットから懐中時計を取り出して時間を見た。が一体どのタイミングでぶつけたのだろうか時計は割れていて時計の針は動いていなかった。当然か、あれほどの激流だったのだからどこかにぶつけていてもおかしくはなかったしこの時計は防水じゃないんだから。だが運のいいことに俺が昔からつけていたデジタル腕時計は無事だった。流石はチープカシマ耐久性が違う。
時々「チープwwwカシマとかwあんなの使ってるとかwwwwww」とかほざいてる奴がいるがそんな馬鹿野郎に一言言っておきたい。
お前チープカシマなめんなよ!1000円いかないくせして時計に必要な機能全部ついてるからな!?壊れづらいしちゃんと防水機能までついてるしデザインも悪くないし良いところしかないよ!俺はこの時計考えた人を褒め称えたいよ。まあ俺のカシマへの情熱は置いておくとしてこういう時に時計があるのはありがたい。
時差は確か9時間くらいだっただろうか。ということはただいまの時刻は5時くらいか。今日はこのままここで一晩過ごした方がいいな。枯れ木の森は見通しはいい方だがそれでもここにキメラがいる時点で暗闇を歩くのは得策ではない。
「ここで一晩明かす、準備しろ」
「「了解」」
だが動こうとするものは1人もいない。当然である。まだ誰も服が乾いていないのだから。
姉妹は羽織るものがあるからまだそれっぽくなっているが俺はパンツ一枚だ。こんな格好で野営の準備とか滑稽でしかない。せめてズボンだけでも早く乾いてくれないだろうか。




