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相容れぬ者

お、うん?ほぉ?おーっとっとこれは一体どういうことだ。明らかにアンバランスな編成だぞ。


「編成に悪意を感じるんだがどういうことなのか説明しろください!」


「あら、男尊女卑?」


「平等主義だよ‼だからこそこの編成に文句しか生まれないねぇ!」

たとえこの世が男尊女卑だったとしても俺の場合は男、女ときて一番下に俺がいるよね。そのくらい女性陣からの扱いがひどいと思うの。父親と母親では母親の方が強くて父親が勝てない原理と同じか。


「だいたい何を思ってこうなったの?」


「簡単に言うとあまり組ね」

この編成の正体は可愛そうな軍団であったか。ひどい話だな。一体何が起こったらこんな余り方をするのだろうか。いや、理由はなんとなくわかるような気がする。多分実力的に落ちこぼれの部類に入る連中なのか、

もしくは正確に難ありの問題児たちなのかもしれない。そうなると俺はただ単に面倒ごとを押し付けられたということになる。そうだとするとこれヤバいよー、メンバーが女、女、女、女、女、男だからね。


男が俺も含めてたったの二人しかいないという絶望のうえにこの男が問題児だったらもう救いがない。

それだったら落ちこぼれの方が何倍もいい。ヤンキーと仲良くやっていける自信なんてねえよ。


「ちなみにそのメンバー全員問題児だから」

はい、オワタ。ということはメンバーはギャル5とヤンキー1とチーター1の絶望的な6人ということだな。

帰らせてもらう、()()()()()()()()()()()。俺がボコボコにされるのが目に見えている。


「正確には問題児というか扱いが難しいというかちょっと特殊な奴らなのよね」

改めて資料を見ると確かにいろいろ書いてある。見る限りみんな騎士とか兵士とかとは違うようだった。

まず、皆共通してこの前の要塞奪還作戦には参加していない。作戦への参加数は数える程度、目立った功績はなし。所属部隊の名前は・・・。


「マジかよ」

エリザベートは珍しく頬をかきながらそっぽを向いていた。その顔はとても説明に困ったような顔だった。

こいつらの本来の所属は暗殺部隊。つまり何かしらの理由で王国から命令されて誰かを殺しているということになる。俺のいる平和な世界とかけ離れたその部隊にどう反応していいのかわからない。俺は誰かを殺すのはごめんだ。そんな勇気はないし俺の心は人を殺して平然としていられるほど鋼鉄ではない。それに対してこいつらは命令1つで人を殺す、そんな鋼のメンタルを持つ奴らである。


悪い言い方をすれば相手は命令とはいえ人殺しを続けても動じない怪物、そんな奴らの中に人類の敵であるキメラを殺すことにさえ抵抗を感じるようなビビりな俺がついていけるとは思えない。空っぽの心にはただただ不安という二文字しかない。俺は大げさに考えすぎなのだろうか、もしかしたら俺が思っているようなひどい奴らではないのかもしれない。


そう思いたい。例えそうでなくても俺はこの試練を乗り越えなければならない。これをやり切らないとこのキメラ事件は終わらない。転生者は当然普通の人間とは違う、力は強く、動きは速く、魔力量は何倍も大きい。そんな俺ですら1週間追い続け、そして狩りつくしたと思った時にはこちらがズタボロにされている。それほど強力なキメラどもを普通の人間が倒そうとすれば一体何人の人間が死ぬのか見当もつかない。


故に俺は戦わなければならず、逃げることは許されない。

「嫌なら変えるけど」


「いや、そのままでいい」

ビビっていたって話は進まない。例え地獄であろうが何だろうが俺は進まないといけない。皆を守るために、そして俺自身が生き残るために。


「なら早速で悪いけど一仕事してもらおうかしら」

そう言ってエリザベートが机の中から赤、もっと詳しく言うと血みたいな色の服を取り出して渡してきた。

広げてみるとそれは赤い布に金色の刺繍、肩から腕にかけて白いラインが入った制服だった。

いやーいいんですよ?かっこいいしね、俺も赤色は好きだしデザインも悪くないとは思うよ。

でもいくらなんでもこれはさ。


「派手すぎやしないか?」

これ、色的にはケチャップの汚れしか誤魔化せないぞ。どうせなら黒とかにすればカレーうどんを食べても安心なのに。(そもそもこの世界にカレーという概念はないが)でもまあ流れ的に着ないとダメなんでしょ?

最近新しい服になったのにも関わらずもう衣装変更か、多分服装がここまで早く変わる異世界主人公もなかなかいないんじゃないだろうか。


「じゃあちょっと着替えてくるわ」

そう言って俺は部屋を出てまっすぐトイレへと向かった。

やっぱり男子が着替える場所といえばトイレだよな。え?それはお前だけだって?いやいや学校の部活とかでは教室は女子に占拠され「男子はどっか適当なところで着替えて」と言われて追い出されて行き場を失った俺らは仕方ないから誰にも見られることのないトイレで着替えるわけだよ。


え?やっぱりお前だけだって?そんな馬鹿な。


と、いつの時代も俺が女に勝てないという話はおいてトイレに到着した。そこは果たして本当にトイレなのだろうか。俺の入ったそこには便座があるし確かにトイレだった。なのにその部屋はトイレとは思えないほど広く、綺麗で単に便座を飾っている部屋なんじゃないかとすら思えてくる豪華な部屋だった。


車椅子用のトイレだとかそういう次元の広さではない。普通の部屋よりも少し狭くはあるが頑張ればここで生活できるんじゃなかろうか。ここにテレビとゲーム機を置けば小さな楽園が作れるような気がする。住めば都、ではなく住む前から都なのがわかる。

ここをどんな都にするか考えながら着替える。


この世界にゲーム機はない。どうやったらこの無駄に広いトイレが都になるか、うーむよくよく考えるとこの世界って娯楽が少ないな。カードやボードゲームの類はあるがやっぱり誰かと遊ぶことを前提に作られてるわけだしな。一人で遊べる遊びを考案した方がいいな。・・・一人じゃんけんか?でもそれをやり始めたらきっと周囲の人間は俺をかわいそうな人として見ることになるんだろうな。


よく考えると一人で遊べる遊びってそんなにないよな。現代はゲームという素晴らしいものがあるけど

そういうものがないと室内というのは案外暇なものだ。要は外で遊べってことか。

俺は制服のボタンを留める。鏡で制服を着た自分を見る。やっぱり派手だよな、今までこの制服を着ている奴を見たことがないんだけどもしかして俺だけこの色ってわけじゃないよね。そうだとしたら生き地獄だ。


ポジティブにとらえれば俺だけの特別な制服だが悪く考えればただの晒しものである。

ドアを少し開けてそこから頭だけを出して周囲を確認する。よし誰もいないな。別にコソコソする必要は

ないのだがこの格好でみんなの前を歩くのはやっぱり少し恥ずかしい。


「サイズはぴったりだったようね」

一体いつからそこにいたのか、いつの間にかエリザベートが目の前に立っていた。

早くも隠密行動が意味をなさなくなったな。というかそこにいるということは出待ちしてやがったのかコイツ。


「それじゃあ行きましょうか」

そう言って太陽の光の入る明るい長い廊下を歩く。そして立ち止まったのはたくさんある部屋の1つ。エリザベートがドアを開ける。そこは広い部屋に長机、会議室という感じだった。


退屈そうに座っていた6人がこちらを見る。こいつらがあの暗殺部隊のメンバーか。服装は制服とかではなくそれ自由な私服、どこにいてもおかしくないような男女だ。事前に資料を見なければこの6人が暗殺部隊の人間だと気が付くものはいないだろう。

情報漏洩を警戒しているのか資料にも必要最低限のことしか書いていなかったし、当然似顔絵みたいなものもなかった。


俺にはこいつらが人を殺しているとは思えなかった。


「今回の件でしばらくの間はこの男がこの隊の部隊長になるわ」


「坂下レイジです。よろしく」

こんな地味な挨拶でいいのかちょっと心配だ。一応俺って部隊長なんだしもっと偉そうな感じでも良かったのかもしれないな。

でも仕事のことに関しては向こうのほうが先輩なわけだし、この場合俺はどう喋ればいいのだろうか。敬語にするべきか否か難しいところである。

「じゃ、あと頑張って」


エリザベートは俺の肩に手を置いてそう言うとさっさと出て行ってしまった。挨拶が微妙だったのか静まりかえった気まずい空気の中置き去りにされた俺はどうしたものかと思いつつ真ん中、

お誕生日席に座った。・・・・・何だこれは。俺がシンプルすぎる挨拶をしたのが悪いのか。一応シンプルイズベストということであの挨拶にしたのだがシンプルすぎるとベストはワーストになるようだ。


「はいはい堅苦しいのは無しにしようぜ。隊長ももっと気軽でいいんだぜ?俺はどうせ敬語とか使う気ないし」

そう切り出したのはメンバーの中で唯一の男であった。

神よ、よくやった。名前全然覚えてないけどよくやった男の人!!


「仮にも隊長です、多少は敬意を払うべきかと」

 助け舟を出してくれた男とは対照的に冷静、真面目そうな黒い長髪の女が静かに言う。

俺的にはそんなに敬意とか払わなくていいのよ?どうせそこまですごいことできないからな。丁寧にされたら逆にプレッシャーが掛かる。むしろちょっと雑なくらいがちょうどいいと思う。


「とりあえず自己紹介してもらってもいいっすか?」

ビビっているせいで口調がいつもよりも丁寧になっている。今の俺はヤンキーに目をつけられた一般生徒みたいなものだ。下手なことを言えばその瞬間にボコボコにされるかもしれないという恐怖を背負っているため

出来るだけ喋らないようにしてる。


「ならまずは私が」

そう言って立ち上がったのは一番右奥に座っていた白髪の女が立ち上がった。その姿は暗殺者というよりもエリザベートたちと同じ騎士側の人間の雰囲気に近かった。背は高く髪は手入れされているのがわかる。暗殺者とか騎士とか以前に本当はどこかの貴族なんじゃないだろうかとすら思ってしまうほどその容姿は整っていた。

「私はエルシア・ブリティッツだ。よろしく頼む」

そういえば資料を見た時そんな感じの名前の人いたな。実力的に優秀みたいなことを書かれていたような気がする。

エルシアが座ると今度はその向かいに座っていた黒い長髪の女が

立ち上がった。


「自分はアシリア・ハーベストです。よろしくお願いします」

この人は礼儀正しいらしい。確かに姿勢がピッと伸びているし

顔付きもキリッとしている。軍人みたいな人だな。


次に自己紹介してくれたのは見てから2番目に気になっていたこの2人だった。

「レネ・ケースティーです。そしてこっちは妹の」


「ルネです。よろしくお願いします」

コイツらひと目見たときからわかってはいたけどやっぱり双子ですやん。やっぱり双子って面白いくらい似てるよな。これ下手したらどっちがどっちかわかんなくなりそうだ。俺と妹が全く似てないのがちょっと不安になってきたぞ。


ハッ!!もしかして本当の兄妹ではないのだろうか。いや待て、まだ焦る時間じゃない。意外と中身まではそんなに似てないのかもしれない。姉が左と言ったら妹は右と言うかもしれない。


「・・・お前ら好きな物は最初と最後、どっちに食う?」


「「最初」」


やっぱり本当の兄妹ではないのかもしれない。顔も似てない性格も似てないとなるともう言い逃れはできない。まあ、そうだよな前からおかしいと思ってたんだよ。妹はすごいモテるのに何で俺はモテないんだろうと。確かに妹は超可愛い(兄バカ)、運動はダメだが頭も良い。でも1年で20回近く告白されるのはさすがにおかしくないか?


俺なんか人生で告白されたことなんかないからな。この時点で大きな違いがあるという悲しさ、そして運動以外のステータスでほとんど勝てないこの虚しさね。


ちなみに俺は好きなものは最後、妹は最初に食べるという正反対の性格である。


俺が1人心の中でいろいろとショックを受けている間にも自己紹介タイムは進んでいく。次に自己紹介してくれたのは俺が1番気になっていた人である。俺が入ってきたときからずっとボロボロフードを被っていて顔が見えない。そして何故かそのフードに三角形の猫耳がくっついている。ここ最近猫耳キャラによく会うような気がする。最近は猫耳をつけるのが流行なのか?


「カーリーだよ。よろしくね!」

フードをとるとそこには茶色い短髪に黒い瞳の可愛らしい顔があった。顔的にはみんなとは違い日本人顔だ。三日月の国の人は雰囲気的には日本人に近い感じだけどカーリーもその近くの国の人なのだろうか。ともあれ

似たような顔の種族がいるのはどこか安心する。


最後に自己紹介したのは俺にとっての希望の星、救いの手である唯一の男だった。


「俺はウェイブ、男同士仲良くしようや」

そう言うとウェイブは手を伸ばしてきた。どうやら暗殺部隊とはいえ別に悪い奴らではなさそうだ。俺の思い過ごしだったか、良かった。こいつらが人を殺している時点で良いと言っていいのかどうかわからないがひとまず良しとしよう。俺は手を伸ばしてウェイブと握手する。こちらこそよろしくってな。


次の瞬間、グイっとウェイブが手を引き俺を引き寄せる。


「は?」


そして俺の腹に短剣が深々と突き刺さった。


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