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謎の生き物

背骨を折られたりしたその後なんやかんやで家を買い、その時に「改修あるんで1週間は立ち入り禁止ですね」と言われた俺はベッドの上でぐったりとしていた。


そばに座っているのはエリザベートと抱き着かないように縄で縛られながら寝ているアイリス。

「それで家は買えたの?」


「明日から1週間は改修工事だってよ」


「そう。じゃあ仕事の話だけど」

切り替え早くね?そんなに急ぎなの?というかそれって本当に俺じゃなきゃダメなのか?強いのが条件なら俺じゃなくてユウナの方でも良くないか。いい加減に休みたいぞ。今の俺ってそこら辺のブラック企業と同じくらい働いてると思うのよ。


「まずこれを見て」

そう言って紙束の中から2枚の紙を取り出しそのうちの1枚を渡された。


「これは・・・」

その紙には転写魔法で描かれた絵があった。それはライオンの頭とたてがみを持ちながらヤギのような角とコウモリみたいな羽を持つ謎の生き物だった。それがまっすぐにこちらを見つめている。


「1か月前、要塞周辺の偵察に出した部下20人がそいつに襲われて全滅した。その絵はそのうちの1人が死に際に自分の鎧に転写したものをさらに紙に転写したものよ」


改めてその絵を見る。この1匹に王国の騎士が20人やられたってことからまずわかるのはコイツは雑魚ではないということ。いくら強力とはいえちゃんとした装備の訓練された20人の騎士がそんな簡単に全滅するとは考えられない。それを倒せるだけ力が強いのか、もしくは何かしらの能力を持っていると考えた方がいいか。


「今まであの周辺にこんなモンスターはいなかったはずなの」


「それでこいつはどうなったんだ?」


「色々調査したんだけど足跡、血液、爪痕、何の手がかりもなし。こいつが何なのかもどこに行ったのかも不明、完全に手詰まり」

つまりこのわけわからんヤツは大量虐殺してそのまま消えたと。分からないことだらけの状況だがこの時点でエリザベートが言いたいことだけは理解した。つまりはそういうことであろうよ。俺にこいつを探して倒せと、そういうことか。だがこの件に関してはうまくやれる自信がない。コイツの情報があまりにも少なすぎる。


強さの上限も弱点も居場所も何もわからない。確かにエンシェントオーバーロードを倒しに行ったときも情報は皆無にも等しかったがそれでも過去に討伐されているということと居場所がわかっているという僅かな情報があった。だが今回は居場所分からず、討伐歴なし、さらについ最近実害があったという3つの最悪がある。


「給料出るんだろうな?」


「もちろんよ」


「わかった。引き受けよう。ただし報酬金額はこっちで決めさせてもらうぞ」


「わかったわ」

とはいえこいつをそのまま野放しにしておくわけにもいかない。

次の被害が出る前に誰かが仕留めなければいけないので結果的に俺が引き受けるしかない。もう一枚の紙を受け取るとそっちには襲われた現場での状況が事細かに書かれていた。


どうやら騎士の鎧には噛まれたような跡やひっかき傷、穴が空いていたりと悲惨な状態だったらしい。現場と騎士の剣にはそのモンスターの血液などはなかったことから相手はおそらく無傷で騎士を全滅させたようだ。


これだけ見ても全くわからん。情報が少なすぎる。

やっぱり現場に行ってこいつを捜さないと。


正直なところ嫌な予感しかしない。後の俺はこの時のことを

こう語るかもしれない。「この事件が後々想像もしないような大事になるとはその時の俺は思いもしなかった」と。

いや、ちょっと大袈裟か。


そんなことを考えながら俺のモンスター探しが幕を開こうとしていた。




3日後。

神の森を避けて来たせいで1日遅れて現場に到着したのだが

何もねぇわ。ここ。報告にも書いてあったが手がかりは何もなし、不自然なものも無ければモンスター1匹いないただの平原だった。


どうするんだこの状況を。目標のモンスターを探すにもどうにもできない。何より1ヶ月前のことなので手掛かり残っているはずもない。しかも絵を見る限りこいつには羽が生えているわけだから

ただの飾りじゃなければ空を飛んでいる可能性も高い。


探すのは困難だな。とりあえず辺りを歩いてみるか。

平原を真っ直ぐ歩き辺りを見回しながら何かないか探す。

異状なし、異状なし、異状なし、か。時々生えている木を調べてみても何かあるわけでもなし。


30分くらい歩いているが結局何もなし。平原だった場所が少しずつ木が増え、遠くの方に森が見え始めた。最初の位置からかなり進んだようだ。やれやれ未だに何にもなし。このままじゃ時間がいくらあっても進展はないな。近くにあった木の下に座り休憩する。


毎度おなじみキャロリーメイトの箱を開けていつもどおり食べながら次はどうしようかと考える。まず相手の習性だ。

移動を繰り返し獲物を狙うタイプなのか、それとも同じところに居座るタイプなのか。それだけでこちらがやることが変わる。


居座るタイプならもう少し探そうと思うが移動タイプなら

諦めるしかない。だが居座るタイプだったとしても最初の位置からはかなり離れているため捜索範囲は制限がなく絶望的に広い。


勝手に肉食だと考えているが本当に肉食なのか、もしかしたら草食だけど危機を感じて騎士を殺しただけなんじゃないか。


もしかたら地上ではなくモグラのように地面の下にいるのか。

そもそも目に見えるのか、普段は透明かもしれない。もっと言えば実在せず幻覚の一種で騎士達が錯乱していたのではないか。


考えれば考えるほど疑問が生まれてくる。絶対にありえないと思っていることも起きる可能性がある。それがこの世界の恐ろしいところだ。だからこそこの疑問という負の循環が止まらない。


俺はこの世界に関して無知すぎるのだ。

科学が中心の元の世界と魔法が中心のこの世界。この2つの世界の差から生じる常識の違い、知識の差。決して大きすぎるということはないだろうけど小さくはないそれらは俺に限らず転生者全員にとっての弱点だ。


起きないと思っているそれは科学的な考えであって魔法的な考えではない。転生者はその大きな間違いを正すことができない。

それは自分の産まれたときからの常識とは違うから、

そして俺がよくわからず魔法を使うように他の転生者も魔法を理解しようとは思わないからだ。


例えば転生して大賢者にでもなったとしよう。だがそうなっても

魔法を理解しようとはしない。なぜそうなるのか、原理は、そもそも魔法の起源は。そこまで突き詰めようとはしない。それは転生者は自分こそが最強だと思い込むからだ。


自分を最強だと疑わないからこそ突き詰める必要がない。故に自分の弱点、欠陥に気が付かない。その満身もまた大きな弱点なわけだ。


まあ偉そうに言ってるけど全部妄想だ。実際のところはどうなのかわからない。あくまでも俺が今まで()()()()()()()()()()()から思ったことだからな。実際はもっとちゃんとしているのかもしれない。だが知識の差とか常識の違いが弱点なのは事実。そこだけは気をつけなきゃいけない。


さてと休憩終わり。捜索を続けないと。

手掛かりはないがいるとしたら森の中の可能性が高いな。

まずは森の中を探すか。俺は森へと歩き出した。

自分が背にしていた木の反対側の変死体に気が付かずに。




何事もなく森の前まで来た。物事が面白いくらい進むのでせめてザコモンスターでもいいから襲ってきて欲しかった。そろそろなんかしらのイベントがないと俺がただ散歩してるだけの意味わからん状況だぞ。いいんだよ?なんかしら襲ってきて。今の俺は何でもウェルカムだぞ。


試しに少し待ってみるが虚しさを表すように風が吹くだけだ。

うん、まぁ誰もいないもんな。諦めて森の中へ入る。前にルイズと入った森とは比べ物にならないほど大きな木。この何十メートルあるのかもわからない木を1本切るだけでも超大仕事になるのは間違いないな。


そんなことを思いながら歩いていると前の方から物音が聞こえた。すぐに近くの木に隠れて様子を見る。例のライオンか?

どうやら茂みの向こう側にいるようだが相手からこちらに来る様子はない。少々危険だが行くしかない。


一応のために短剣だけ装備して茂みに近づく。気配を殺し茂みの向こうを見る。そこにいたのは弓を持った男女だった。

クエスト中の冒険者か?それにしてはパーティーの組み合わせが悪いような気がするが。


普通冒険者がパーティーを組む時は盾持ちなどの近距離の人、弓とかの中距離の人、そして一番後ろに魔法使いとかの支援系の人とバランスよく組むはずだ。中距離の人がいないことは珍しくないが盾持ちも支援もなしの弓矢オンリーというのは初めて見た。


弓矢は遠距離では重宝するが近距離では役には立たないため

いざというときに対処できない。だから弓矢オンリーをやる奴はいない。


「どうだ、何かわかったか?」


「ダメだ。これはヤツの足跡ではない」

茂みの隙間から2人が何を見ているのかを頑張って見てみる。

どうやら動物の足跡らしい。こいつらも俺と同じヤツを追ってるのか?そうだとすれば協力した方が良いだろうがあの2人、どうも怪しい。冒険者にしては準備不足すぎる。こいつらは冒険者ではない何かだ迂闊に声をかけるわけにはいかない。


今はここに隠れてあいつらが移動するのを待つしかない。

「クソっまたか!一体どうなっているんだ!」


「落ち着けヤツは普通の獣とは違う。頑張って探すしかない」

女が男をなだめる。向こうも苦労してる感じなのか。

「大体アイツは何なんだ!?」


「わからん。だが噂によれば新種のキメラらしい」


キメラ?キメラって確かライオンとヤギが合体してるモンスターだよな。RPGゲームとかに出てくるあのちょっと強いやつ。

あと例の蟻とか(わかる人にはわかるネタ)。キメラって多分自然の生き物じゃないよな。ということは誰かが作ってことか?


「キメラってお前そりゃ」


「キメラを作ることは全世界どの種族も神の法で禁じられている。だがこうしてそれらしきものがそ存在しているということは誰かが神の教えを破ったということだ」


神の法というのは全世界共通のルールみたいなものだ。

人を殺すな、とか盗みをするな、とかそういう悪いことすんなっていう事が書いてある神からのありがたーい文章らしい。


それを破ってキメラを作った奴がいるのか。

なかなかのチャレンジャーだな。盗みとかなら毎日起きてるだろうけどわざわざキメラ作るときたか。なんというかお疲れ様ですと言いたくなる。


「まったく面倒なことしやがる」

それな。おかげで仕事が増えて疲れるわ。


「進もう。ここにいても仕方がない」

だが女は進もうとせず素早く俺のいる茂みの方に弓矢を向けて迷わず矢を放った。バレたか!?躱すこともできず矢が肩に刺さる。衝撃と鋭い痛みのあとに熱した金属でも押し付けられたような熱が広がる。


痛みを我慢し声を抑える。見たところ男の方は気がついていないし、女の方も僅かに気配を感じただけでおそらくわかってはいない。このまま黙っていれば大丈夫なはずだ。


「どうかしたのか?」


「・・・気のせいだったようだ。行こう」

2人が去ったのを確認して肩の矢を抜く。また痛みが走るがすぐに消えた。あーらら服に穴空いちゃったよ。今日も鎧忘れてきたんだもんな。何やってんだよ俺。


傷はすぐに塞がるが服は直らないのがつらい。


「キメラ、か」

どうやら面倒なことになってきたようだ。今回はいつもと違う神の法を破る本当にヤベー奴が相手らしい。元凶に辿り着く前にまずは目の前の問題を解決しないといけないな。


さっき男女が見ていた足跡を見る。確かにそれっぽいが絵のキメラの足と見比べてみる。ちゃんとした足跡の絵があるわけではないが見ただけで違うとわかった。本物は爪が長いため地面に跡がつくはずだがこれにはない。


ハズレか。森の奥に進む。しかし不思議なものだ。相手は人間みたいに手を使って上品に物を食べるわけじゃないし、獲物を仕留めるのだって道具を使うわけじゃない。なのに何の痕跡もない。

普通は獲物を仕留めるときも食べるときも血痕くらい残るだ。


どうやって獲物を仕留めているんだ?

進んでいくと偶然変な木を見つけた。何かに割かれたように表面が削れ、幹が見えている。これ、落雷の跡か?前にテレビで見たことあるけど本物は初めてだ。


よく見ると少し離れたところの木にも小さく落雷の跡がある。

更に離れたところにも。この周辺の木に落雷の跡が目立つ。

落雷ってこんな集中して落ちるものなのか?

もしかしたらキメラに関係しているのかもしれない。


もしそうなら相手は電気系の技が使えるということになる。

危険だ。この世界、特にこの魔法大国であるハイデン王国では

電気についての知識など皆無に等しいはずだ。何よりこの土の上なら電気が通る。この世界の人達の靴底は俺と違ってゴムじゃない。


遭遇すればまず間違いなく感電、そのままやられるに決まってる。王国騎士がやられるわけだ。あいつらの鎧は金属、電気の通りは良いはずだ。


そうなるとさっきの2人が危ない。早く追いかけないと!そう思い走り出した時地面から閃光が走った。バチバチと音をたてるそれは電気の罠だった。


瞬時に後ろに飛び罠を回避する。

危ねえ、靴底が大丈夫でもそれ以外はまったく大丈夫じゃない。

電気のトラバサミか。こいつで獲物を動けなくして狩る。

なかなか頭のいいやつじゃねえか。


感電を避けるため短剣をしまう。

「ここでお出ましかよ」


運が良いのか悪いのか木の影から出てきたのはあの絵に描かれていたキメラ。絵の通りライオンの頭とたてがみ、ヤギみたいな角にコウモリみたいな羽。絵ではよくわからなかったが体は前がライオン(?)で後ろはよくわからんがビリビリしてそうな見た目の動物だった。


ガアアアァァァオオオオオという獣らしい鳴き声とともに

キメラと転生者の戦いが始まった。


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