高難易度クエストに行こう ボス戦
ようやっと森を抜けた先には確かに遺跡があった。ただ完全に崩れてもはや原形はないが。馬から降りて遺跡跡を調べる。崩れたのはかなり前みたいだな。倒れている柱を見ると引っ掻いたような跡や魔法が当たった痕跡があることから戦闘の中で崩れたのかもしれない。出現場所は前と同じらしいからエンシェントオーバーロードと戦ったときに崩れたのか?
辺りにモンスターはいない。討伐対象はここにいるはずだが、もしかして移動したのか?前に倒されているとはいえ
未だにエンシェントオーバーロードの情報は皆無に等しい。
何が起こってもおかしくはない。わかっているのはデカイってことと強いってことだけらしい。
もうちょっと役に立ちそうな情報を残してほしいものだ。相手の攻撃手段とか弱点とかさ。なにかデカイものが移動したような跡はない。どうなってんだ?
「レイジこれを見て」
ユウナに呼ばれてそっちの方に行ってみる。そこにあったのは地下への階段。いるとしたらこの先だろうな。俺はランタンに火をつけて階段を下りた。階段を下りると真っ直ぐ狭い通路が続く。
壁には古代文字みたいなものやら何をしてんのかわからんような壁画がたくさん描かれていた。
「ここの壁画さっきからこの大きな骸骨みたいなのが描いてあるけど神様かなにかなのかしら」
ランタンで壁画を照らす。確かに壁画には巨大な骸骨にひれ伏している人間たちが描かれている。こんなのが神なのか?
俺に神器を渡してきた神?
「見ろこっちのやつは人間が骸骨に握り潰されてる。祈っているというより恐れられてるみたいだ。神、だとしてもいい神じゃなかったんだろうな」
更に奥に進むとまた階段があった。今度は螺旋階段だ。俺達は離れないようにしながら階段を下りていく。さっきよりも長いみたいだ。こうグルグル回るとちょっと目が回りそうになる。
「さっきから何にも出会わないわね」
「ん?ああ、それはこのランタンのおかげかも」
「どういうこと?」
「このランタンに火がついている間は下級のモンスターは近寄って来ないんだ」
神器『悪魔祓いの火』は火がついている間はゴブリンとかスライムとかのいわゆる雑魚モンスターを近寄らせない。このランタンの火は一見普通に見えるけど実は火の大妖精の炎と同じらしい。
大妖精がどのくらいすごいのか知らないからなんとも言えない。
便利だなこの神器。今までの中で一番使えるんじゃないか?
こういうのもっと欲しいな。
さっきからずっと階段をグルグルしているが全然到着する気配がない。長くね?こんな長い階段年寄りだったら膝がおかしくなるぞ。ニーブレイクだぞ。昔の人丈夫すぎやしないか。
まだまだ続く螺旋階段にそろそろ飽きてきた。これってつまりはそういうことだよな。完全にアレがあれでアレなパターンだよね。
「これ、ループしてるよね」
「ええ、多分ね」
デスヨネー。この壁画とかさっきから何回も見てるもんねー。
俺は銅貨を1枚取り出して階段を転がりながら落ちるように縦にして投げた。銅貨は転がりながら階段を下りていき、そして
俺らの後ろから帰ってきた。
どうやら本当にループしてるようだ。しかもこの感じだと上に行ったとしても意味がない。この無限地獄に完全に閉じ込められた。さあ困ったことになったぞ。
「何か方法はある?」
「眉につばをつけて、」
「相手は狐や狸じゃないのよ。それにもう遅いわ」
やっぱり駄目か。多分俺達はこの階段にかけられている魔法のせいでこんな目にあっているわけだ。もしくは幻を見せられているのか。とにかく魔法を解除しない限りはどうにもならない。
とは言っても俺は別に魔法に詳しいわけじゃないし。幻術の解き方なんてわかるはずもない。どうしたもんか。『奇跡を砕く碧銀の鎚』は魔力の生成と流れを一時的に遮断できるがそれは生き物だけの話であって意思のないものには使えない。
『星の本』になら何か載っているかもしれないな。俺は早速
『星の本』の目次を見た。えーと他には関係ありそうなページは
···あった。5629ページ。幻術について。この本そんなにページ数あったの!?確かにすごい量なのは知ってたけども。
俺はページを1枚めくる。目次だった。また1枚めくるとまた
目次。目次、目次、目次、目次。目次多くないか。
試しに5ページくらい一気にめくってもまだ目次だった。
この本怖すぎ!こんなに目次があるなんて知らなかった。
怖くなったので一気に5600ページ分めくった。
えーと。幻術のかけ方、かかり方、道具を用いたかけ方。
あったぞ。幻術からの脱出方法。
『幻術から脱出方法は様々だが簡単なのは2つ。
1つ目は解除するスイッチだ。幻の中には大体幻術を解くための何かがある。理由は幻術をかけようとした相手に術を跳ね返されて自分が幻術にかかってしまったときに脱出するためだ。
ただし上級の魔法使いの中にはそんなものがなくても脱出できる者もいるため必ずあるわけではないので注意。
2つ目は刺激だ。もしスイッチが見つけられないようなら自分の頬でもつねってみるのも手だ。痛みで幻から覚めるかもしれない』
なるほど。簡単なのはこの2つか。他はもう何を書いているんだかさっぱりわかんない。スイッチを探してみるか、でもさっきから見ているがそんなものはどこにもない。かけた奴にしかわかんないし、ない可能性もある。
「何かいい案は見つかった?」
「ああ、痛みで幻から覚めるかもって」
「そう」
次の瞬間結構強めにビンタされた。
「どう?何か変化ある?」
「ビンタするなら『する』って言ってからにしてよ!」
「ビンタするわね」
「遅いわ!」
くそう痛え。今俺の頬には紅葉形の赤い跡がくっきり残っているんだろうな。ひどい目にあったな。しかも変化ないし。だがどうする?痛みを感じても特に変化はないし、仕返しついでにユウナの頬でもつねってみるか。俺は何も言わずユウナの両頬をつねった。こいつ、美肌だ!わかってはいたけどつるつるの卵肌っていうか赤ちゃん肌っていうかとにかくつるつるもちもちの柔らかい頬だ。
しかも結構伸びる。あれ?人間の頬ってこんなに伸びるものだっけ?餅並みに伸びてるぞ。なんかつねってて怖くなってきたな。まあ、すでにつねられてる本人の目は怖いけどな。
「なんか変化あった?」
一応聞いておく。
「いえ、幻覚から覚めない代わりにあなたへの殺意が目覚めそう」
冗談きついぜ先輩。人間の目を覚ましちゃいけないもの3つ。殺意、サド、マゾの3つは目覚めさせたらいけないやつだから。特に殺意は一番ダメなヤツだから!
「困ったわね」
「ああ、困った」
痛みで覚めないとすると本来はスイッチ的なものを探さないといけないわけだがぐるぐる回っていた間もそんな感じのものは見ていない。やばいな。この空間に閉じ込められたまま人生を終えるのはごめんだ。
他の方法は何かないものか。俺はもう一度『星の本』を見た。
『もしダメなようなら頬をつねるのではなくも血が出るくらい痛みを感じる方法を試してくれ』
血が出るくらい痛い方法!?嘘だろ。俺はさらに読み進める。
ページをめくった次のページに二重線で囲われた文章がある。
『もしこれを読んでいる君がエンシェントオーバーロードに挑もうとしているならその幻術は生半可な方法では破ることはできない。破るには血で下の図のように血の魔法陣を描き、発動しなければならない』
これだ。血で魔法陣を描けってか。これ大きな魔法陣になりそうだけど大丈夫か?俺多分貧血になるぞ。
しかも結構細かい部分が多いな。だがこの状況を抜け出すにはそれしかないか。
ユウナに本を渡して俺は『支配者の短剣』を装備した。針で指を刺す程度の血では足りない。短剣で手を切るしかない。最悪だ。よりによって神器しかない。普通の短剣があれば傷をつけてもすぐ直せるが神器の場合はそうもいかない。針で自分の指を刺すのですら怖いのに短剣で自分の手のひらを切るとかもうだめかもしれない。
この短剣をこんなかたちで使うことになるとは。
「大丈夫?」
「全然大丈夫じゃねえよ。普通に怖いわ」
俺は深呼吸して短剣を左手のひらに当てた。心臓が破裂するんじゃないかと思うくらい速くなっている。落ち着け俺。怖いのはこの瞬間だけだ。切ってしまえばあとは痛いだけ。
こんな言い聞かせじゃ全く落ち着けないな。
だがそのまま一気に短剣を引いた。手に鋭い痛みが走る。そこから血がどくどく出ている。俺は本に書いてある魔法陣を見ながら壁に同じものを描く。そしてそこに魔力を流し込むと、ぐにゃりと空間が歪んだ。
これで解けたのか?俺はまた銅貨を転がした。すると今度は上から帰ってこない。どうやらうまくいったみたいだ。良かった。
「やったー」
元気のないやったーとともに俺はその場に座り込んだ。精神的にすごい疲れた。ようやっとこの先に進めるのか。手の傷は自然に治るのを待つしかない。本当に怖かったし痛かった。エンシェントオーバーロードめ。このツケは高くつくぞ。
絶対にぶっ飛ばしてやる。
「大丈夫なの?すごい量の血が出てるけど」
「神器でつけた傷だから塞がるのが遅いんだ。でも浅いから1時間くらいで良くなるはずだ」
血が止まらずに俺の手は血まみれになっている。
本当なら止血しなきゃいけないんだけど包帯とかは持ってない。
仕方なく右手で左手のひらの傷口を押さえる。おかげで両手とも血まみれだ。ボス戦の前にすでに大惨事。
だが進まにゃならんのよ。血だらけで手もみしてるみたいになってるけどそれでも行かねえと。こんなところに1時間もいられるかっての。螺旋階段を下りていくとあったのは大きな広間。
そしてその奥に光る赤い何かが見える。
暗すぎて先の様子が見えない。狭ければどこから攻撃が来るのかわかるがこんな暗く広い空間で奇襲を受けようものなら不利になるのは明白、不意打ちし放題だ。
部屋の灯りが少しずつ付き始めて部屋の全体が明らかになる。
バカ広い部屋の中央にいるそれが何なのか俺もユウナもすぐにわかった。こいつだ、こいつこそが俺達の目的、倒さなきゃいけない敵。
「見つけたぞ。エンシェントオーバーロード」
それは巨大な骸骨だった。だが腕と下半身はなく手と体は浮いている。目は赤くひかり、肋骨の内側には目と同じ色の水晶みたいなのがある。壁画に描かれていたあの骸骨と同じだ。
この遺跡はエンシェントオーバーロードを崇めるためのものだったのか。
「弱点はあの水晶かしら」
「多分な。問題はあいつの攻撃手段だが」
エンシェントオーバーロードについてはわかっていないことのほうが多い。攻撃手段も同様、近距離タイプなのか、遠距離タイプなのかどっちだ。迂闊に仕掛ければこっちがやられる。
どうだ、どう出る。その時エンシェントオーバーロードの周りから無数に何かが出てきた。
「スケルトン!?」
「なるほどあいつは魔法使いというわけね」
これが使い魔召喚ってやつか?
「私が行くわ。そこにいて」
ユウナが歩いてスケルトン達に近づいていく。スケルトン達も走ってユウナに接近していく。そしてスケルトンの剣が届く距離にまで近づいたとき近い者から一斉に潰れていった。
重力操作でスケルトンをぺしゃんこにしているのか。
やっぱりあいつの能力のほうがチートじゃないか?
近づいたが最後重力でぺしゃんこにするとか強すぎだろ。
スケルトン達はあっという間に向かって来たやつ全員がバキバキと音を立てながら潰れていった。
ユウナがエンシェントオーバーロードに向かって走り出した。
相手は次々にスケルトンを召喚しているが例外なくすべてぺしゃんこにされている。見る限り相手は本当に魔法使いと戦い方が似ている。どっちかというとネクロマンサーかもしれないが。
そして完全にユウナが攻撃圏内に入った。ユウナはジャンプするとそのまま顔を殴ろうと振りかぶる。あの一撃はキマる。そう思ったときオーバーロードの浮いている手がユウナを弾き飛ばした。速い!
アイツ魔法だけじゃない、近距離の戦闘もできるのか!
俺はふっ飛ばされてきたユウナを受け止める。ドッジボールの豪速球を受け止めるような感覚にも近い衝撃。あの一撃をまとも食らったら無事じゃすまないだろうな。
「1人じゃ無理だ。2人でやらないと」
「わかってるわ。まずはやつの手から潰しましょう。次は頭、最後はあのコアの順に。私は相手の左手をやるわ」
「了解!じゃあ行くとしますかね!」
俺は『奇跡を砕く碧銀の鎚』を装備して相手の右手に向かって、ユウナは篭手の存在を思い出し装備すると相手の左手に向かって走り出した。
行く手を阻むスケルトンを砕き、潰しながら距離を縮める。
その右手、いただく!俺は大きく振りかぶってハンマーを巨大な手に叩きつけた。パキパキと骨にひびの入る音が聞こえる。ハンマー攻撃が効いてるがまだ相手は元気そうだ。素早い薙ぎ払いが来る。リンボーダンスレベルで背中を反らして薙ぎ払いを躱す。
顔のすぐ目の前を巨大な骨の塊が通過する。遊園地のアトラクションよりも怖い。丸腰で当たれば普通なら当然即死、
俺ら転生者なら骨折するくらいの威力はあるだろう。やっぱり防具をつけてくるべきだったな。皆は高難易度に関係なくクエストに行くときは必ず防具をつけよう。
敵のターゲットが俺に向いた。速い連続のパンチ。防具がないため受け流すことができずにひたすら後ろに下がり躱しつつ、そして俺にだけ注意が向くように時々魔法攻撃を撃つ。
このパンチ、完全に見きった!俺はラッシュ攻撃を掻い潜り距離を詰める。コアに届かなくても肋骨1本は折ってやる!
俺はハンマーを振るがギリギリのところで後ろに逃げられた。
でもいい。これははっきり言っておまけ。本命の攻撃は俺じゃない。本命は後ろにまわっていたユウナの一撃。だから俺は相手を後ろに下げるだけ、ただそれだけで良かった。
「はぁぁあっ!!」
ユウナの蹴りがオーバーロードの後頭部に直撃した。ミシミシと骨の軋む音とともにオーバーロードが横に吹っ飛んで壁に激突し粉塵が舞った。
やっぱりあいつの方がチートだわ。あの蹴りの強さはどう考えてもチート以外の何者でもないです。俺は多分あそこまでの事はできないんじゃないだろうか。
「ナイス!」
仲間のチートを確信し意識がぼんやりしていた俺は集中集中と心の中で言い聞かせた。
「そっちもタゲ取りご苦労さま」
オーバーロードの吹っ飛んでいった方を見る。さすがにこの程度でやられるほど弱くはないだろう。俺達はゆっくりと粉塵に近づいていく。粉塵を払い赤目の髑髏がこちらを睨む。
向こうもちょっと激おこかな。
「オォォォオオオオ!!」叫び声を上げる。俺もユウナも思わず耳を塞ぐ。なるほど完全に激おこだ。でも、こんな状況でも俺はどうしても1つ言いたいことがある。すごく、すごく疑問に思ったんだが、
お前、今どこから咆哮を発した!?お前って言っちゃえばデカイだけでただの骨だよな。一体どこから声出してんの?声帯ないよね?
骨を振動させてそれっぽくしてるのか。でも振動させたところで
お前関節とかないから音ならないよな。
どうしよう変なところですごい気になってきたぞ。誰かスケルトンは喋れるのかどうか教えてくれ。
「来る!」
俺のお気楽思考をよそに再び戦闘が始まろうとしていた。
オーバーロードは頭にも少しだけひびが入っている。確実に少しずつ弱ってきているはずだ。俺はハンマーをしまった。
さっきの戦いでわかったがハンマーは当たれば強い。でも相手が空中に浮いているのと地味に速いことからハンマーはこの戦闘に向いていない。
もっと速く、打撃系の攻撃であり、使いやすい武器。
そうだねいつも通りの拳だね。坂下家では拳を極めた者こそが最強。拳を極め、体術を極めた奴こそが真の強者であり、武器にばかり頼る奴は弱者だと言われる。真の強者に武器はいらない。
俺の脳筋はおそらくここから来ているんだろうな。
俺は適当に銀と金色のメカメカしい見た目のガントレットを装備する。付け心地は悪くないな。空中に浮いている相手を殴ったことはないから上手くやれるといいんだが。
そして俺とユウナとオーバーロードという3体の怪物が一気に距離を詰め合う。俺は右に、ユウナは左にそれぞれ分かれる。オーバーロードは大量の使い魔と自分の手を飛ばしてそれぞれ対応する。スケルトンをパンチで粉砕しつつ少しずつ近づいていく。敵が多すぎる。倒しても倒しても無限に出てくる。こんなに雑魚を召喚しているのだから魔力消費だってバカにならないはずだが。このモンスターの魔力に底というものはないのだろうか。
ユウナの方は周りの雑魚を楽にぺしゃんこにできるとしても俺にそんな能力はない。雑魚は自分の手で倒していかないといけないから時間がかかる。俺はスケルトンな頭を掴んでオーバーロードに投げつけた。
無慈悲にも投げられたスケルトンは容易く砕かれてしまった。
オーバーロードの攻撃を後ろに下がって躱す。後ろにいたユウナとぶつかり背中合わせになる。
スケルトンどもに囲まれた。ぱっと見これはピンチなんじゃないだろうか。俺らの周りスケルトンでいっぱいだぞ。多すぎだろ。
「何か必殺技とか持ってないのか?」
「あるわよ」
「あんのかい!」
あるなら惜しみなく使ってほしいんだが。というかお前には必殺技というものがあるのか。
何でそんなロマン溢れるものがあるの?俺なんて2ヶ月くらいこの世界にいるけど未だにそんなすごい技ないよ?使える魔法なんて敵を縛ってくれる『バインド』と適当な魔法弾くらいだよ?羨ましいんだけど。
「じゃあお願いします!」
「仕方ないわね。じゃあ少しの間だけ耐えて」
ユウナは深呼吸すると軍帽を被り直しながら静かに言った。
「重力圧殺」
すると体が一気に2、3倍重くなった。足が少し地面に埋まる。気を抜いたらこの重力に潰される。
重たすぎる!しかもどんどん重たくなっている。体がさらに沈み、石の地面がバキリと音を立てる。
重たくなった頭を何とか上げると周りのスケルトンはすでに圧殺、オーバーロードの方は頑張って耐えているがそれでも余裕はなさそうだ。
「もう一段階力を上げるわ」
さらに体が重たくなる。あまりの重さに膝をつく。耐えられるか?そんなことすらわからない。一体今俺の体にはどれだけのGがかかっているのだろうか。手を挙げることはもちろん頭を挙げることですら辛い。
オーバーロードはどうなったのだろうか。
痛いのを我慢して頭を上げる。
オーバーロードもまだ耐えているが両手はすでに地面に押し付けられていた。
体の方が押し付けられるのも体力の問題だ。
「なかなかしぶといわね。レイジ、まだ耐えられる?」
「いけなくも、ないけど、速くし、て」
「もう一段階だけ力を上げるわ。このままアイツの手を潰す」
体がさらに重たくなる。どうにか耐えているがもう頭が上がらない。倒れそうだが倒れたが最後おそらくぺしゃんこである。ドスンと大きなものが倒れる音がした。オーバーロードが重力に耐えきれずに倒れた音だ。パキパキという骨にひびの入る音が聞こえる。あと少しか。ユウナはこのとんでもなく重たい空間の中を平然と歩く。
ヒールのコツコツという音が空間の中に響く。ユウナはオーバーロードの方に近づくと次の瞬間バキリと骨の割れる音がした。恐らくオーバーロード手を砕いたのだろう。よしっこれで少なくとも片手を潰した。
だがその時、体が少し軽くなった。まだもう片方の手を潰してないのに何で。
頭を少し上げると見えた。アイツなんで膝をついているんだ!?だがその疑問はすぐに吹き飛んだ。前にアイツは言っていたじゃないか。「長時間能力を使ったあとは極度にお腹が減るのよ」って。つまり今のアイツは能力を使いすぎて体力がなくなってきているのか!まずい、このまま能力が解除されたらユウナはオーバーロードのいい餌食だ。俺は無理矢理重たい体を立たせてユウナのほうに歩く。オーバーロードの方も能力が弱まったことでゆっくりだが起き上がろうとしている。
早くしないとやべえな。どうにかユウナのところにたどり着いた俺はそのままユウナをずるずると引きずりながら後ろに下がる。
「バインド!」
オーバーロードの周りの宙に浮かぶ魔法陣から魔法で作られた無数の鎖が発射され動きを封じる。少なくてもこの瞬間だけは時間稼ぎになるはずだ。
ある程度距離をとったところで俺は膝をついた。
「おい、もう、いいぞ」
俺がそう言うと重力が元に戻った。体がティッシュにでもなったみたいに軽く感じる。それと同時にバインドがうち破られオーバーロードも完全に復活した。
「さて、じゃあ次は俺が見せる番だな」
必殺技はまだないが強力な技なら持っている。はっきり言って今の今まで存在を忘れていた。
俺が城での訓練で使った魔法を覚えているだろうか。あの時は超がつくほどの弱気で撃っていたがそれでも的が吹っ飛ぶほどの威力があった。じゃあそれなりの力で撃ったらどうなるのか。
俺は手で拳銃の形を作ってオーバーロードに向けた。
「シュート!」
指先から放たれた手のひらサイズの丸い魔力の塊はまっすぐオーバーロードに向かっていきそして
着弾とともに大爆発を起こした。




