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なんて日だ!

支払いを済ませて久しぶりに町の中を歩く。やっぱり帰ってきた感あるな。しばらくお城のなかにずっといたから町を見るのも来るのも本当に久しぶり、1年ぶりくらいの間が空いていたんじゃないかとすら思えるほど長かったな。これで今度こそ王宮の人たちともおさらばできるだろう。寂しいような気もするが辛かった思い出の方が多いような気もする。


これでよかったんだ。ようやくお姫様たちから解放され楽になれる。代わりに所持金が蒸発するという悲惨な目に合い、さらに新しく同じ異世界転生者であるお嬢様レベルで自由なやつと関わりを持ってしまったけどな。


一難去ってまた一難とはまさにこのことか。我ながら運は良いほうだと思っていたがこっちの世界では

運が悪いのか?


明日からまた頑張って稼ぎに行かないとな。それに異世界チート主人公みたいなこともしていない。

冒険したり、金持ちになったり、ハーレムしたりもっとイチャイチャした感じのことも当然してない。

俺の場合、冒険?そんな暇ねえよ。金持ち?何年後の話ですか。ハーレム?確かに周りには女はいるけど

俺への好感度はそんなに高くないんだよねぇ。異世界チート主人公ってなんであんなにモテるんだろうか。


やっぱりイケメンだからだろうか。俺、評価基準はよくわかんないけど顔は多分普通レベルだからもしそうならどうにもできんぞ。それともやることがかっこいいのだろうか。でも俺の場合そんなかっこつける場面がない。やることといえばモンスター倒してやりたい放題やった挙句に罰が当たったり、森で迷って怒られたりとかそんなくだらないことばかりだ。


これだけ見ると俺ってただのアホみたいだな。一応言っておくがちゃんと自慢できることもやってるぞ。

例えば・・・要塞のモンスターをバッタバッタと倒したり、異世界転生者と戦って勝ったりしている。


「レーイージー!」

思い悩んでいると背中に誰かが飛び込んできた。誰だ俺の名前を叫びながら思いっきり飛び込んできた奴は!

いやまあ声からして大体誰なのかわかるけどよ!それでも飛び込んでくるんじゃない。人違いだったらどうするの!?いやそれ以前に知ってる人だからって背中に飛び込んじゃダメ!


目立つし何より俺の背骨が折れちゃう!


「ナナか。久しぶりだな」


「久しぶりだねー‼」

冒険者仲間のナナが背中に張り付いたまま無邪気な笑顔を向けてくる。いいんだよ?俺は。

俺には顔も性格も全然似てない妹がいる。だからナナみたいな子に抱き着かれても耐性があるためこの程度のことでいちいちドキドキしたりはしない。けれどもだ、妹でもない冒険者仲間の女の子に抱き着かれていてそれを町の人たちにまじまじと見られているこの状況はとてもよろしくない。


もし人がそんなにいなければ頭の一つでも撫でて「久しぶりだなー」と和んでいただろう。

だが今この状況でそんなことをすれば何が起きるだろうか。もし俺以外の人ならここで頭を撫でても流されるだろう。だが俺の場合は何か良くないことが起きるような気しかしない。気のせいなのか?

どっかの姫様のせいで何をしてもお叱りが飛んでくるような気がしてる。


レイジはどうする?

・頭を撫でる


・ナナを引き剥がす


・・・・・・・・いや俺は考えすぎだな。もうアイツらとは関わることもないだろうしアイツらは今ここにいない。帰ってくるとしても少なくとも三日はかかるはずだ。たまには妹と接している感覚で仲間と過ごしても罰は当たらないよな。俺はちゃんと仕事してきたし。


「元気にしてたかー?」

俺は頭を撫でる。ナナは目を細めている。猫みたいだなコイツ。

猫っぽい反応を見せるのは良いんだがそろそろ離れような、このまま抱きついてるとマジで大変なことになっちゃうぞ。

そんなことを思ったその時


「へぇーあんたロリコンなんだー」


ユウナの存在完全に忘れてたー!


「これはな、ちゃうねん。妹扱うみたいなもんなんや!」


「へーそんな童顔ロリ体型の少女に抱き着かれている挙句、頭を撫でているのに?」

俺の心に正論という名の無数の棘が刺さる。クソっ反論できねぇ。だがこんな状況でも1つ心の声を大にして言わせてもらおう。


男はみんなロリコンだ!!(暴論)


どんな男だって結婚するなら男より女、おばさんよりロリ。

だからみんなロリコンなんだ。一部例外はあるけど男なんて大体こんなもんだろ。男の俺が言うんだから間違いない。


「出会って早々私をロリ扱いするとは失礼だな。私のどこがロリなんだ!」

ロリと言われて不満に思ったのかナナが言った。


「「え?顔とか体とか」」

あと性格も結構子供っぽいぞ。

「あれっ!?二人して!?」


「だって、ねぇ?」


「まあそうだよな」


どこか幼さを残す顔に小さい身長。さらに主に何処とは言わないがどう見たってお子様体型である。これがロリっ子属性でなければなんだというのだろうか。本当の上限は12歳らしいが俺の感覚では中学生まではロリだから15歳のお前もギリギリ非合法ロリだと思うぞ。


「私そんなに子供っぽいかな」

自覚なかったのかお前。鏡の前に立ってご覧なさいきっと周りより若く見えることに気づくから。


「そんなに気にすることじゃないわ。誰かさんには需要はあるようだし、若く見えるのは良い事だわ」

ユウナはナナの肩に手を置いて言った。あれ?これってそんなに深刻な話なの?


「サラッと俺をロリコン認定するのやめてくれます?需要とかそんなんじゃないから。一人の仲間としてしか見てないから」


「ムッツリロリコンチートクソ野郎が何か言ってるけど放っておいて。大丈夫よ、まだ若いんだしそのうち育つわよ」


何だその悪口てんこ盛りのニックネームは。それを今咄嗟に考えついたんなら才能だぞ。全然使い道のない才能のだけど。というかこの先一生使ってほしくないが。


「そうだよね今成長期なんだし!」


「おう、毎日牛乳飲んどけ」


「うん!ちょっと牛乳買ってくる。また今度クエスト行こうね!」

ナナはそう言うと回れ右して走って行ってしまった。勢いで牛乳飲んどけとは言ったけど15歳だったら女子の場合はもう成長期は終わってるかもうすぐ終わるんじゃないだろうか。

あのアホの子が何かやらかさないことを祈ろう。


「さ、私達も行きましょう」


「どこに?」


「どこって私の私物を買いに」


「家もないのに?」


「あんたバカァ?」

うわ、なんか懐かしい言い方だな。

ユウナは大きなため息をつくと俺を指差して言った。

「あなたの部屋に住むからに決まってるでしょう」

あーそっかお前俺の部屋に住むことになるのか。それならしょうがないな。·····ってなるわけねぇだろうが!!おかしいだろ。


「何しれっと住もうとしてんだよ!」


「私、王都を拠点に動くことにしたから宿にずっと泊まっているのは経済的に良くないわ。それなら狭くても住めるあなたの部屋に行くべきだと思うの」


「思うの。じゃねぇ!今から稼ぎに行けよチート転生者らしく!」


「正直もう疲れたから働きたくないのだけど」


「いや知らんし」


「じゃあコイントスで勝負しましょう。それなら公平よ。私が勝ったらあなたの部屋に住む、あなたが勝ったら諦めるし、近いうちに奢ってもらった金額返してもいいわ。」


お前なにかあるごとに勝負で決めようとするな。


しかもイカサマのニオイがすごいし。だがいくらイカサマをされようが勝てばいいのだ。俺はチート野郎なんだからそれくらい出来るだろう。むしろそんな勝負で負けるとは思えない。

金が返ってくるというのだから良い条件だ。


「いいだろう。表だ」


「OKじゃあいくわよ」

ユウナはポケットから金貨を取り出すと親指で真上に弾きとばした。落下する金貨を見つめる。金貨が顔のところに来たとき体に違和感を感じた。よく見ると金貨の回転の仕方がおかしい。


予想通りこの野郎イカサマしてきやがった。重力で回転の仕方を変えてきたか。だが甘いぜ。こうなると思って俺もすでにイカサマ準備済みだ。



魔法には大きく2つ種類がある。それは攻撃魔法と支援魔法だ。攻撃魔法は文字通り相手を攻撃するためにあって支援魔法は自分や他者の能力を上げるためにある。


その支援魔法の中に『ソニック』という魔法がある。これは自分もしくは他者の素早さを上げてくれるという魔法だ。この魔法だけでも素早さが上がるがこれを何個も重ねて使うとさらに効果があり、より強力になる。


自分で自分を何回も強化するのはほんの少しばかり難しいが仲間にやってもらえば十分な効果が得られる。


とかなんとかお城にいたとき魔法の座学と実技で習った。

今まで存在を忘れていたが今がまさに使う場面である。

そしてすでに6回くらい重ねて自分に使わせてもらった。


この勝負、もらった。そう確信した。

そして人差し指と中指の指先で金貨を挟むと表向きになるように地面に叩きつけた。この瞬間の出来事はおそらく向こうには速すぎて見えていないはずだ。これもう絶対勝ちましたわ。


コインは石畳の地面にまっすぐ落ちていき金属音が響いた。と思ったらズドーンと煙を立てて落ちた。

おかしいな。いくら叩きつけたとはいえこのコインってそんなズドーンとかいうレベルの重さだったっけ。いや、どう考えてもどこかの誰かが咄嗟に重力操ってますね分かります。


煙が晴れてコインの落ちた場所を見るとコインは表でも裏でもなく縦になった状態で石畳の地面に刺さっていた。嘘だろ。金って柔らかい金属だったような気がするけどこんな石とかに綺麗に刺さるもんなのか。

銀とか混ぜると固くなるとかなんとか。地面に刺さった金貨のことについては正直考えてもアホな俺にはよくわからんので放っておこう。


「お前やってくれたな」


「よく言うわそっちだって目で追えないくらいの速さでイカサマしてたくせに」

バレてるー!なんでわかったの。見えてないはずなのに。俺の疑問を感じ取ったのかユウナはため息をつくと帽子の位置が気に入らなかったのか直しながら言った。

「あなたねぇ見えないほどの速さといっても私はあなたとほとんど同じなのよ?あなたの腕の形が少しブレて見えるくらいには目で追えるわ」


あらやだどうやらけっこう見えてたっぽい。さすが同じ転生者だな。6回『ソニック』を重ねがけした程度じゃ足りなかったか。俺の魔力的にきつくても無理してでもあと2回は使っておくべきだったか。


「どうするんだこの場合」


「・・・じゃんけんで」


「じゃけぽいっ!うわー!」


よく学校とかにいなかっただろうか。「じゃあじゃんけんな」と言った途端に奇襲を仕掛けてきて勝とうとする嫌な奴。奇襲を仕掛けてくる奴は大体パーを出し、やられた方はグーを出す。

俺はそれをやられても瞬間的にチョキを出す癖がついているから負けることはない。

実は俺自身奇襲をしたことはない。なので今初めてその奇襲というものを試してみたわけだが結果は

俺の叫び声からお察しの通り見事にパーとチョキで負けた。


「何故だー!」


「甘いわね。私は相手からの奇襲の時はチョキを出すタイプなのよ」


お前もかー!ここにも俺と同じ奇襲耐性持っている奴がいやがった。これでこいつは今晩俺のあの狭苦しい

部屋に泊まることになるのか。でもおかしいよな!?なんでこんなことになってんの!?こいつが頑張ればいいだけじゃん。何でただでさえエリアスが人型になったせいで余計狭くなっているであろう狭い部屋でこいつを住まわせてやらんといけないんだ。


「さ、行きましょう」

ユウナはそう言って悪魔の笑みを見せた。




私物を買うと言っていたが俺自身部屋にごちゃごちゃ置かれても嫌なので寝袋以外は買わせなかった。

俺とユウナはドアの前に立つ。ミーシャによれば留守の間も掃除はしておいてくれたらしいので汚くはないと思う。少しドキドキしながらドアノブに手をかけて久しぶりに自分の部屋に入る。


「あ、おかえりー」

ボリボリ、パリパリ。部屋に入って最初に目に入ったのはベッドの上でお菓子のポッチーとポテチを食べながら週刊少年漫画雑誌『週刊少年シャンプー』を読んでいる元スライムの相棒(自称)の一応天使。

『働いたら負け』というバカTシャツを着たエリアスだった。


「お前俺のベッド汚すな!しかもこの週刊少年シャンプーどこから持ってきた!」

俺はお菓子と漫画を取り上げる。しかもこれよく見たらこのシャンプーって最新刊じゃね?


「今いいところなのに!」


「いいから片付けろ!メンバーが一人増えるんだよ」


「おーそっちの転生者?おうおうおうなんでい!」


「・・・何この子?」

「うわ、なんだこいつ」みたいな顔をしながらエリアスを指さす。

こいつに関しては考えるな、感覚でどうにかしろ。としか言いようがない。はっきり言ってネタの塊みたいなやつなので真面目に考えたところでしょうがない。


「悪魔殺しの水の天使エリアスたぁー私のことだ!」


今日テンション高いな。しかも何でそんなに江戸っ子みたいな喋り方してんだコイツは。

しかもお前悪魔殺しとかいう異名を持ってたのね。


「まあそれは置いておくとして、まさか本物の悪魔側の転生者に出会うとは思ってなかったよ」


「悪魔側?」


「うん。この異世界転生キャンペーンをやってるのは天使だけじゃないんだ。悪魔も真似してやってるんだ。まあアイツらの目的は善意で転生させるというより自分達の利益のためだけどね」


「どういうこと?」


「私達天使はレイジみたいに何かの間違いで死んだ人とか死ぬにはちょっと早い転生する資格がある人に人生のチャンスを与えるために転生させたりするんだけどアイツらは転生させる代わりに人間の体の一部を取ろうとするんだよね。アイツらの間では人間ってかなり価値のあるものだから。あなた転生する時どこか取られたりとかしなかった?」


「確か目を貰うって言ってたけど目が赤くなった事以外は別になんとも」


「やっぱりね。この赤い目はね悪魔の目なんだよ。多分転生や能力と引き換えに人間の目を取られて代わりに悪魔の目か何かを入れられたんだよ。まあ実害はないから安心してよ」


「聞きたくなかったわ」

悪魔側リスクたっけぇな。実害がないから良かったものの転生する代償として体の一部を差し出さなきゃいけないのか。そう考えれば俺のあの髪の毛食ったり何なのかわかんないあの激マズの飴を食っていたあれはまだマシな方だったのかもしれない。

あれでもマシな方だとは思いたくはないが事実リスクはない。

俺の場合はお見せできない光景が広がってしまったけどな。


「あのー話変わるんですけど」

俺はここで話を切り替えた。

「何?」


「今日どこで寝るんでしょうか?どう見たって3人は無理だと思うんですけど」

そんな転生の話とかぶっちゃけどうでもいい。俺にとって大事なのは今日という日をどう乗り切っていくかだ。起きてしまった過去より何が起こるかわからない未来である。


この物置レベルの広さしかない一部屋にどうやって3人の寝床を確保するか。場所は床かベッドくらいしかない。

ユウナは顎に手を当てて考えると何か思いついたように顔を上げた。

「あなたそこのタンスの上に座って寝なさいよ」


「俺はフランス人形か。もしくは球体関節人形。俺の場合かなりホラーだぞ?」

大体首と背中痛くなりそうだし。

「俺としてはお前らがベッドで寝て俺が寝袋がいいんだけど」


「私寝るときは30cmは人と離れたいのだけど」


なんてわがままなやつなんだ。修学旅行の時どうやって寝たんだろうか。布団少し離して寝てたりしてたのか?修学旅行の最大の楽しみはクラスメイトとの夜ふかしだというのに!そこで好きな子の話ししたり、ちょっとエロい話ししたりトランプやったりするじゃん!そして先生が見廻りに来たら寝たふりとかして楽しむもんでしょうが!


ちなみに高校の最初の旅行で俺は一人部屋だったからなんにもすることなくてつまらないアンド本当に寂しかった。


「じゃあレイジは私と寝る?」


「誰かさんの理性が保つならそれでいいいいんじゃない?」

ユウナがチラッと俺を見る。


「キャーレイジに襲われるー!」

エリアスが楽しそうに言う。誰が襲うか。むしろ俺はお前に襲われないか心配だよ。朝起きたらとんでもない姿になってたりすんのは嫌だからな。そういうのって悪くなくても男が悪者にされるんだから。


「人が寝てる横でなんて恥ずかしい。あ、でもレイジがいいならそれでも···あと、そのレイジは人間で私は天使で種族は違うけどその、天使と人間の間にできたって例もあるし、気をつけて」

その頬を赤らめて指合わせてモジモジするの辞めなさい。


「襲わねえよ!それより別の方法を考えないと」

俺という主人公がいる限り俺の貞操だけは絶対に守られるから安心しろ。他の人たちに関してはちょっと保障できないので頑張って。さて、どうしたものか。この狭い空間を一体どう使うか。一番手っ取り早い方法は、

その時ユウナがスッと握り拳を出してきた。どうやらこいつも最終手段をとることにしたらしい。顔は帽子で隠れて見えないがおそらく微妙な顔をしているだろう。


エリアスも絵文字みたいな顔をしながらグーの手を出してきた。お前いろんな顔できるのな。

そして俺も拳を出す。負けたやつが出ていく。それが一番手っ取り早いのだ。


そして勝負開始が宣言される。


「「「じゃんけんぽいっ!」」」




「なーんでなーん!?」

俺は牛乳の入ったコップを片手に店のカウンターテーブルに頭突きしていた。じゃんけんの結果はまたまたお察しの通りグー2人に対してチョキという惨敗だった。そもそもおかしくないか?あそこは俺の部屋だぞ。

何で俺が出ていかなきゃ行かなきゃいけないんだ!?よりによって何でニート天使と喧嘩吹っ掛けられた挙句に飯まで奢った相手に部屋を乗っ取られなければならないのだろうか。


「俺としては女に囲まれるなんて羨ましい限りだけどな」

カウンターの反対側からロキが顔を出した。

「いいわけないよ。今日残りの時間をどうやって過ごせばいいんだ」


「宿にでも止まればいいだろ」


「今の俺の所持金300ルドなのよ?どこにも行けないんじゃが」


「あーそれは確かに災難だな」


今夜は野宿か、徹夜で冒険にでも出かけてみようかな。食い物は現地調達でもいいか。

現地調達といえば昔、まだ高校に行ってた頃に同じ部活の立花って奴が言ってたな。

『レイジ知ってるにゃー?実はタンポポって食べれるんだにゃ』


『マジで!?』


『マジにゃ。お浸しにしたり、あえものにしたりして食べられたりするらしいにゃ』


『知らんかったわ』


『他にも道に生えてるやつだったらツクシはもちろんドクダミ、ナズナ、ヨモギ。学校の庭の端っこに

ちょこっと生えてる桑の葉だって食べようと思えば食べられるにゃ。ただしちゃんと煮たりしないと大変なことになるにゃ』


みたいな会話をしたような記憶がある。タンポポって食べられるんだもんなぁ。それを知った時は本当に衝撃的だった。今までただの雑草だと思ってたのに食べられるってんだから見る目が変わったよね。

もし今日の野宿でキャロリーメイトとトンメンに飽きたら何かしら野草を探してみるのもいいかもしれないな。森の中で一人黙々とモンスター狩って野草食ってまた狩ってを繰り返すとか想像するだけ苦痛でしかない。


ツクシとたんぽぽの味は正直なところ気になるがそれはまた余裕のある時に試そう。


それにしてもかつてここまで理不尽な目に合っている主人公がいただろうか?部屋を追い出され、今晩を過ごす場所もなく、金もほとんどない。最終的には食べられる野草は何だっただろうかと考える始末だ。


捨てる神あれば拾う神ありというが俺の場合は捨てられたら捨てられっぱなしのポイ捨て状態か。

誰か拾ってくれないかな。誰か拾ってくれっていうのも変な話だな。例えるなら捨て猫が自分の入ってる段ボールに自分で「拾ってください」って書いてるようなものだ。


どうしたもんか。まだ夜まで時間はある。時間はあるが解決策がない。今すぐ稼ぎに行けってか?脇腹の青たんまだ治ってないんだぞ。この一撃がどれだけ強力だったか。こんな状態で行きたくないよ。さすがに俺もちょっと休みたいぞ。


牛乳を飲み干す。その時


「ここが黄金の鹿。レイジが暮らしてるところね」

俺の名前が出てきたので声の主の方を見る。そこにいる人物を見間違えることはない。すべての事の始まりであり、最近ちょっと出番がなかった少女。俺をいろいろな面倒ごとに巻き込んでくれたエリザベートの実の妹であり、この国の第四王女。推定12歳、なのに求婚してくる惚れっぽい奴。


そうでアイリスである。あとお付きの人。

アイリスは普段と違い正体を隠すためか庶民の服を着て頭には麦わら帽子を乗せている。


俺は何も見なかったことにしてその場を去ることにした。

もうこれ以上俺に面倒ごとを押し付けないでくれ神よ。

一体俺が何をしたと言うんだ。こっそりひっそり少しづつ知らない人のフリをしながら、顔を見せないようにしつつ出口を目指す。


よーしいい感じだぞ。向こうは気がついてないみたいだしそのままそのまま


「レイジ何してるの?そんな変な動きして」

モップをかけていたミーシャに目をつけられた。今日は本当に運が悪いな。何事においてもうまくいってないぞ。


「レイジー!本当に帰ってきてたんだー!」

アイリスの声とともに背中へのダイレクトアタックが炸裂。

ナナもそうだったがお前も俺の背中を壊しにきてるのか。


「おう、久しぶり」


バレてしまったからにはもうしょうがない。いいぜとことん付き合ってやるよ。今日という名の地獄に!

「本当に帰ってきてたんだって言ったけど何で帰ってきたの知ってるんだ?」


「さっきエリザベートお姉様から伝書ドラゴンで手紙が来てね」

アイリスはポケットから手紙を出した。

「伝書ドラゴン!?」

ハトとかの鳥ならともかくドラゴンって。どんなことにドラゴンを使ってるんだ。てか今回の遠征にドラゴンいたか?アイツ何をペットにしてんだよ。


アイリス宛の手紙を読む。

『アイリス、私も騎士団も全員無事よ明後日には帰れると思うから心配しないでって皆にも伝えておいて。あとこの手紙を読んだら黄金の鹿というお店に行きなさい。そこがレイジの家だから行けば会えると思うわ。アイツ今頃帰ってるだろうからこの手紙を見せなさい。


レイジ、勝手な行動ばかりとらないで。皆が笑って済ませても私は違うわ。帰ったら覚悟なさい。』


サーッと血の気が引いたのがわかる。これはもしかしたら俺の余命は今日を含めてあと3日とちょっとかもしれない。

しばらくの間姿をくらましてやりたいがそれをやったが最後

俺はこの世から姿をくらますことになるだろうし、仕方ないが明後日の貴方を殺す愛の鞭(モータル·レクチャー)という名の拷問に近いお説教に備えておくとしよう。


また1つ問題が増えてしまったか。やれやれ、本当にひどい1日だ。まあお説教に関しては今は放っておくとして問題である寝床は確保できていない。···ん?待てよ部屋に空きがあって俺を受け入れてくれている場所が1つあるじゃないか。それも目の前に快くOKしてくれそうな人もいるし。


「アイリスさん」


「何?」

俺はゆっくりと頭を下げていき膝を折って地面に手をつける。

ようは土下座である。

「今晩、物置でもいいんで泊めてください」


「どうしよっかなー確かにレイジの使ってた部屋は空いてるけど。どうしよっかなー」

こいつ、こういう時だけいじわるしやがって。

「おねしゃす!」


「ここ何日か誰もいなくて退屈だなー遊んでくれる人がいればなー」


「喜んで!」


「じゃあいいよー」

ようやく勝利を掴んだ。出来ることならもうあまり関わりたくはなかった奴らに助けを求めることになるとはな。拾う神はいなかったが拾ってくれる姫様はいたようだ。





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