二人目の転生者
「まさか12話にしてもう出会うことになるとは思わなかったぜ」
「何を言ってるのかわからないけど私も転生してきて早々に同類と出会うとは思わなかったわ」
妙な空気が立ち込める。会話の内容からして目の前の女はこっちの世界に来てからの日が浅いのか?
「しかもあなたみたいな有名人に会えるとは思わぬ偶然」
「有名人?俺が?」
「ええ、空ノ星学園女子で最初で最後、唯一の男子生徒。坂下といえばA区や姉妹校では有名よ」
俺の入学ってそんな広がってたの!?確かに近所ではちょっとした話題になってたけど区やら姉妹校とかにまで広がってたなんて知らなかった。
「本名こそ特定されてなかったけどネットですごい叩かれてたわ」
「知りたくなかった!!」
俺の知らないところで俺がめっちゃ叩かれてたか。
今その情報いらないんじゃないかな?わざわざ言わなくてもいいんじゃないかな!?
なんてやつだ俺の精神を徐々に削りにきてやがる。自分自身の話題に無関心な俺も悪いけど。
「つーかお前誰だ!」
「あら、自分で言うのもなんだけど私自身もそこそこの有名人だと思ってたけど」
「いや知らんし」
「そういえば前にもあなたを見たことがあるけどそっちは私に目もくれなかったわね」
前にも俺と会ったことがあるってか?・・・全然覚えがないんだけど。今までの人生で白髪で赤目の女になんてあったことはない。付け加えれば士官軍帽を被る独特なファッションをしている奴にもあったことはない。
とりあえずそれは後で考えるとして今大事なのは
「このままおとなしく帰ってくれるかな?」
「ええとも~!と言うはずだったけどせっかく同じ転生者に会えたんだから試したくなるわよね」
こんな時に申し訳ないけど今いい感じに一句で来たぞ。
最悪だ ホント最悪 厄日かな
今のこの状況を表すにピッタリの一句だと思うんだがどうだろうか。点数的には85点くらいか。
え?5点の間違いだろって?んな馬鹿な。ってそんなこと言ってる場合じゃねえよ。
「皆下がってろ死にたくなかったらな」
兵士たちを後ろに下がらせて俺は一歩前に出る。
これから始まるのは正真正銘常識外れの怪物同士の戦い。俺たちはもちろん特に周りの人たちの命の保証はない。相手の能力が分からない以上近くにいるだけで死ぬ可能性だってある。
俺が負ける可能性も、そして最悪死ぬ可能性も。
だが諸君!この坂下レイジが負ける?死ぬ?ありえないことだ。どのくらいありえないかというと
そうだな、カニが縦移動をするくらいありえない出来事だな。
※本人は馬鹿なので知りませんが縦に歩くカニもいます。
だいたい主人公がそんな速攻で負けるわけないじゃん。ましてや死ぬことも多分ない。
俺は大剣をしまって神器でも何でもない普通の剣を拾う。なかなかの舐めプだがこれで十分だと思う。
向こうはどうだか知らないが俺は出来ることなら不殺で終わらせたいからな。神器を使って殺してしまったらシャレにならん。
ついに始まる転生者同士の戦い。ゴングはすでに鳴っている。
先に仕掛けるべきか相手の出方を見るべきか。今まで以上に慎重な場の読み合い。
先に仕掛けたのは相手の方だった。速っ!俺との距離を一気に詰めてくる。そして俺の顔面目掛けてまっすぐ向かってくる右ストレートを間一髪でかわす。
すぐ横で聞こえた風を切る音、その表現が正しいのかわからない。切るというより風を破壊した。と言ったほうが正しいのかもしれないと思うほどの爆発に近い音。かわしたはずなのに頬に小さく傷ができている。
直撃すれば顔面陥没は間違いなし、顔の目の前で寸止めされても風圧で怪我するかもしれない。
顔のかすり傷がふさがる。俺の体は『天使の涙』と同じで神器や魔剣で切られない限りはバカみたいに強い攻撃でできた傷以外すぐにふさがる。全身に力を入れればその辺の武器では傷がつけられないほどのものだ。
ということはコイツの武器は神器じゃない。だがそれに負けないくらいの何かを持っているということか。
だが俺もこの接近を無駄にしてはいない。右ストレートと同時に相手の太ももに小さな切り傷をつけておいた。見たところ傷はふさがっていない。俺みたいな高い自然治癒力はないのか。
「へぇやるじゃない」
「お互い様だ」
今度は俺から距離を詰める。剣は大振りにはしない。突き刺すように剣を前に出す。直接刺しはせず手や足をかすめるように狙う。そうすればどこかでダウンするはずだ。
最初に距離を詰められたときはあまりの速さに驚いたが正直「やべぇ!めっちゃ速いんですけど!」と絶望するほどではない。見ていれば十分に避けることは可能だ。
まず右腕に一か所、次に足に一か所そして左肩に一か所。
いい感じだこのまま地道に傷をつけていくとしよう。次は右足だ!
「調子に乗んな‼」
自分に向かってくる剣先に対して右ストレートで対抗してきた。ミシミシという剣にひびが入る音が静かに響き剣が砕ける。嘘だろ!剣先に右ストレート当ててきやがった。向こうの拳は少し出血しているがそれでもほとんどダメージがないように見える。
どうなってんだコイツの拳は。転生してきたってことは多分俺みたいに何か能力があるはずだ。
だがどんな能力か全くわからん。最初は体の一部を硬化する能力とかかとも思ったが拳に傷がつくことからそれはない。
俺は砕けた剣の欠片をいくつか相手に向かって蹴り飛ばす。確実に直撃コースだが今すぐ動きを止めるにはそれしかない。欠片はまっすぐ女の腹や腕に飛んでいき刺さるものと思った。だが次の瞬間その欠片が全て落下した。
あまりにも不自然な現象だった。相手が叩き落したわけじゃない。まったく何の前触れもなく突然落下した。
マジでどうなってんだ。コイツの能力が余計にわからなくなった。
相手はそのままこっちに突っ込んでくると俺の脇腹を狙って思い切り蹴る。また間一髪のところで防ぐが衝撃を殺しきれない。
どう見ても普通の蹴りなのにその一撃は異常なほどに重い。
まるで鉄塊が豪速球で飛んでくるような感覚だ。
魔改造した手甲が今の一撃で少し変形している。
最初の右ストレートもそうだが一体どこからあんな破壊力が生まれているんだ。分からないことだらけだ。今は耐えながら冷静に分析するしかない。
まず飛び道具は効かないか。飛ばしたところでまた不自然に落下するだけだ。異常に速く重たいパンチとキックこれはもろに食らったらただでは済まない。魔改造手甲が凹むレベルの威力。
俺はもう一度地面に落ちている欠片を相手に蹴り飛ばした。
刺さるかどうかの位置で今度は落下するのではなく右に逸れて落ちた。風?それにしては不自然か。それに地面に生えている草は風に吹かれた時みたいに揺れていない。
俺はここで1つの結論に至った。まだそれが正しいという確信はない。だから確かめるしかない。この予想がハズレたら流石にお手上げだ。俺はそばにある小石を手にとった。
そして俺は適当に神器を装備して相手に斬りかかった。するとどうだ、剣が当たらない。磁石の同じ極を無理矢理くっつけようとするときみたいに剣が反発している。
俺は拾った小石を地面に転がしたすると小石はひとりでにコロコロと転がりだした。よく見ると俺の靴の靴紐も何かに引っ張られるように伸びている
やっぱりそうだ。次で確信に変えてやる。
俺はそのままもう1本剣を装備すると剣の側面で相手を叩くこうとする。すると今度は2本とも上方向に弾かれた。俺は神器を手放して素早く相手の顔面に右ストレートを決めに行こうとするが
顔面に真っ直ぐ向かっていた拳と俺の体が俺の意図とは関係なく右に少しずれた。
バカめ、ずらす方向を間違えたな。心の中でそう思った。俺はそのまま右手を相手の右うなじの方にまわし、左手を脇の下からまわして自分の右手を掴む。
そのまま足をかけると一緒に倒れた。状況的には俺が倒れながら肘のあたりでコイツの首を絞めている。
暴れて拘束を逃れようとしているが無駄だこうなったらもう俺の勝ちだ。
「無駄だ。お前の能力は見破った。もう勝ち目はない」
「へえ、言ってみなよ」
「多分お前の能力は重力を操ることじゃないか?」
「···いつ気がついたの?」
「剣の欠片を飛ばした時にあまりにも不自然に落下した時に3つの仮定が生まれた。1つは風。でもそんな強い風は吹いていなかったから除外。2つ目はそもそも飛び道具があたらない。そして3つ目に重力。飛び道具を逸らせる能力なんてこのくらいしか思いつかなかった。そんで確かめようと剣で斬りかかろうとしたときにダンベルを持つ感覚にすごい似てると思ってな。それに石が勝手に転がりだしたこともあったし。まあ確信に変わったのは最後の右ストレートの時に手が右方向に重たくなる感覚だったけどな」
「あーあ、あそこで油断しなきゃ勝てたのにな。あの時左かもっと重たくするか奥の方に重力の向きを変えてればなぁ」
「そうだな。でも実はこの戦いは必ずお前が負けるようにできてんだよ」
「どういうこと?」
「お前に粉々にされたあの剣な毒ついてんだよ」
最初に使っていた剣、実は誰のでもない。俺のでもなければ兵士やら騎士達のものでもない。あれは俺が無双パーティーしていたときに倒したゴブリンが持っていた剣を俺が拾ってそのまま使っていただけだった。
手加減のつもりで拾ったんだが
拾ったときに変な臭いするなーこれ絶対毒塗ってあるわー。
毒の強さがどんなもんかわかんないけどま、転生者ならダイジョブっしょと思いそのまま使っていた。
今思えばめっちゃ無責任だな俺。お気楽三四郎か?お気楽三四郎だな(意味不明)。
「なるほど、どうりでちょっと痺れて来たわけだ」
女はハハッと笑った。
「でもそんな面倒な事しなくても殺す気でくればもっと簡単に勝てたじゃん」
「器用だけど加減するのは苦手なもんでね」
俺は神様印の解毒剤を飲ませて立ち上がって女の手を取ってを起こした。
「つーかお前結局誰なんだよ」
「そういえばまだ言ってなかったか」
女は士官軍帽を被り直すとコホンと咳払いをして言った。
「私はアドミラル・風見・ユウナ」
「はあ、提督すごい名前だな」
「一応ハーフだから」
「ふーん。そんでアドミラルちゃんよ」
「アドミラルは苗字よ。名前はユウナの方」
あ、そっち苗字かと思ってたわ。アドミラルってすごい名前つけられてるなと思ったらアドミラルの方が
苗字なのね。普通に考えればそうか。
「じゃあユーちゃんこれからどうするの?」
「ユ、ユーちゃん!?えっと特にどうするでもないけど」
「じゃあ今から全力で走ってどっちが先に王都に着くか勝負しようぜ。そいでそのまま飯食いに行こう。
良い店を知ってんだ」
ユウナは最初ポカンとしていたが直してまたすぐにズレてしまった軍帽の位置を治すとキリっとした目で言った。
「いいわ。その勝負受けて立つ!あと負けた方が奢りね」
俺たちは門のところに立つと走り始める姿勢に入った。
「おい!誰か合図を頼む!」
俺がそう言うと聞きなれた声の騎士が大きな声で言った。
「よーいドン」
その言葉とともに俺たちは地面を思い切り蹴って王都のある方向へと全力で走った。
「ちょ、ちょっと!」
エリザベートの声が聞こえたような気がしたが風の音にかき消されあっという間に聞こえなくなった。
まあいいだろう。どうせもう俺のやることなんてないし速く帰れるならそれでいい。あとで怒られるような気しかしないが走り始めてしまったなら止まるわけにはいかない。
だって負けた方が奢りなんだもん。人に奢った飯はそんなにおいしくないが誰かの奢りで食べる飯は
最高においしいからな。
とても不思議な体験だった。ついさっきまで殺し合いにも等しい戦いをしていたのにあの男はまるでなかったかのように振舞っている。どうしてだろうか、あれほどのことがありながらどうしてそんなに余裕なのだろうか。
私はまだ少し震えているというのに。これが治りかけの毒によるものなのか恐怖からくるものなのかはわからない。
でも震えている。あの時、私は殺気を隠せなかった。でもアイツからは殺気も何も感じなかった。
隠していたのかそもそも殺す気が全くなかったのかはわからない。そんな状態のアイツに負けたという事実が少し怖かった。アイツが本当に殺意をむき出しにして本気で戦ったとき一体何が起きるのか想像もつかない。
私は最後まで遊ばれていただけだ。手の内を晒して倒し方を教えただけ。今思えばおかしいと思うべきだった。アイツは一度も本気で距離を詰めようとはしなかった。すべて目で追えるレベルの
速度。完全に舐められていた。
それにあの治癒力の高さも異常だ。あんな速さで傷が塞がるなら
普通の攻撃では無意味。ダメージにならない。
坂下レイジ恐ろしい男だ、転生前も後も。だがこの競走ではどちらが上なのか思い知らせてやる。
私は先程の戦いの反省と今の勝負に全力で挑むことを決めた。
数十分後
俺はようやく王都の外門のところに着いた。ユウナは既に壁に寄りかかって俺を待っていた。
「どうやら私の勝ちみたいね」
「ぐぬぬ」
アイツ速すぎだろ!!重力操作で重力の向き変えて空飛んだりしてんだもん。勝てるわけ無いじゃん。飛ぶだけじゃなくて馬鹿みたいに速いし。こっちなんか神の森に入らないようにわざわざ森の上を頑張って飛んで走ってきたんだぞ!木の先端が細いもんだから危うく踏み外すとこだったしな。
それに戦いの中で防いだはずの脇腹への攻撃がどうやらかなり強力だったらしく治癒が追いついてない。おかげですごい痛いからめっちゃ走りにくい。確実に青タンになっているに違いない。これはそういう痛さだ。全治3、4日はあるな。
「さあ奢ってもらうわよ」
「わーってるよ行こう」
帰ってきて早々奢ることになるとは。
良い店を知っていると言ったが結局行くのは黄金の鹿だ。
マイホームだしなんやかんやであそこが一番美味しかったりする。流石は貴族も太鼓判を押す店である。
というわけで到着。久しぶりに帰ってきたぞー!!
ドアを開けると懐かしい光景が広がっていた。少し古びたテーブルとカウンターテーブルに石畳の床、店の中に広がる料理の香り。やっと帰ってこれたんだと実感する。
「いらっしゃいませ、ってレイジじゃん!!帰ってきたの!?」
そこにいたのはピンクの髪の毛の掃除大好きモップ大好き楽しいこと大好きの元気っ子女店員。モップ娘ことミーシャだった。
「やっとこな」
「おお、みんな!!レイジが帰ってきたよー!!」
ミーシャがそう言うと残りのメンバーが次々に顔を出した。
最初に厨房から顔を出したのは二人の男シェフだった。
「おう!やっと帰ってきたか」
この熱い人は黄金の鹿の厨房責任者、熱い性格のシェフで豪快に火を使った料理が得意。料理の腕は店長仕込みの超一流。火力兄貴ことロキ。たまにコショウを入れすぎる香辛料兄貴でもある。
「レイジ君お帰り〜任務お疲れ様」
同じく黄金の鹿のシェフ。スパイス兄貴とは違いおっとりとした性格で豪快に火を使う料理よりケーキとかスイーツ作りが得意なモテそうなお兄さん。
スイーツ兄さんことリュウ。話によると三日月の国の出身らしく珍しがられるとのこと。
「レイジ君お帰り」
次に2階から降りてきたのは接客のプロ、歌うの大好き、音楽大好き、踊るの大好きの大人の魅力あふれる色気担当。みんなの頼れるお姉さん。踊り子姉さんことレディー。絶対本名じゃないが聞いてみると毎回適当に誤魔化してくる。本人曰く「女に秘密は付き物」とのこと。
「レイジさんお久しぶりです」
そして倉庫から出てきたのは優しく明るい人気者、みんなの癒やしであり店長の実の娘でありこの店の看板娘。シルフィーだ。最近町を歩いていた時に不良に絡まれたらしいが顔の怖い知らないおじさん達に助けられたらしい。あとなかなかのドジっ子。だがそれがいい。ちなみに本人は気にしている様子。
最後に顔を出してきたのはこの黄金の鹿の創設者にしてこのあたりで最高の腕を持つシェフであり、この店の用心棒であり、ゴツくてオネエな感じだが誰からも信頼される最強の存在。
店長、ガッツだ。
他にもあと二人ほどメンバーがいるが今日は非番のようだ。
俺たちは席についてメニューを見る。
「何頼んでもいいのよね?」
「ああ、いいぞ。え?魚定食?OK」
俺は問答無用で怪しいくらいに安い90ルドの魚定食を2つ頼もうとする。手を挙げて店員を呼ぼうとしたその時ガシッと腕をつかまれた。ユウナの顔は笑っているが背中から黒いオーラみたいなのが出てる。
「ははっ殺気・・・もれてるケド大丈夫?」
「ごめんなさいね隠すのが下手なの。あとその手には乗らないわ」
そう言うとメニューを見ながら店員を呼んだ。
「肉定食とサラダとジャイアントピッグの骨付き肉、あと野菜スープとチーズフォンデュセットとグラタン。全部大盛りで」
「ちょ、ちょっと~それ女子が食べる量じゃないと思うんだけどーそこんとこどうなの~?」
驚きと呆れのせいでちょっとギャルっぽくなってしまった。
ていうか~マジであーしの数倍食ってるし~。マジヤバくね。
今どき私のことをあーしっていう人いるのかな。もはやギャル語として合っているのか分からないな。
でもこの喋り方ちょっとツボになりそう。
「長時間能力を使ったあとは極度にお腹が減るのよ。これくらい食べないと保たないわ」
「うわっ燃費悪」
こいつ食費だけで所持金全部使い切るんじゃないだろうか。
もしこいつを養う奴がいたならそいつはかなりの金持ちかただのアホだぞ。普通に考えて破産するわ。お前が今頼んだ金額で多分俺の一日分の報酬がなくなるぞ。
料理が運ばれてくるとユウナはあっという間に次々と料理を平らげていった。速すぎる。そのうえ食べ方めっちゃ上品だし。せめてきたねぇ食い方でも目に焼き付けてやろうと思っていたが超きれいなんですけど。一体どんな食べ方をすれば口を汚さずに骨付き肉をそんなキレイに食べられるんですかねぇ。
「ふう、締めはジョッキで一杯ね」
「未成年の飲酒はやめてくださーい!」
「ふふ冗談よ。でも締めにデザートでも食べるとしましょう。
チーズケーキ2つもらうわ」
店員を呼んでスイーツを頼んでしまう。貴様、払うのは俺なんやで?たださえ恐ろしい金額になってきているような気しかしないのにさらにチーズケーキ2つも頼まないでくれるかな!?
チーズケーキはすぐに運ばれてきた。作り置きとかしてあんのかな。厨房入ったことないからよくわかんない。
「はい、これは私の奢り」
そう言って1つを俺にくれた。
「いいのか?」
「ええ私に勝った景品」
あれ?おかしいな俺は競走で負けただけでこんなに奢らされたのに壮絶なバトルに勝った俺にはチーズケーキ1個だけ?お?おぉ?なんか納得いかないんだけど。チーズケーキを一口パクリ。
流石はスイーツ兄さん、作り方を熟知してやがる。うめぇ。
「それでお前はこれからどうするんだ?」
「そうね、どうしましょう。強い相手を探してあの要塞に入り込んだけどこうもあっさり負けたわけだししばらくやることもないわね。行くところもないし。紅茶をもらえるかしら」
「かしこまりー」
さりげなく近くにいたミーシャを呼んで紅茶頼まないでくれるかな。お前絶対腹膨れてないよね?若干足りてないよね!?
「あなたはどうするの?」
「明日から誰かのせいで吹っ飛んだ所持金を稼ぎに行きますけど何か?」
「···それなら私も行くわ。私達が組めば最強よ一攫千金も夢じゃない」
「確かに」
転生者なら一人でも十分だが二人になればもう無敵だ。怖いもの無し勝ち確定の完全攻略状態のパーティーモードになる。異世界攻略しました。本当にありがとうございました。
「じゃあ明日一緒に行くか。お前今日どこに泊まるんだ?明日迎えに行くが」
「宿を借りる気はないわ。そんなことに使えるほど余裕がないもの」紅茶を飲む。
「じゃあどうすんだよ」
「あなたの家、もしくは宿は?」
「上だけど」
俺は人差し指を立てて天井を指す。
「じゃあそこに泊めなさい」
「お前よく躊躇なく頼めるな」
「泊まることに関して気まずさや不安はないわ」
「あ、そうっすか」
俺は別に部屋に女がいようと寝れば関係ないと思っているから問題はない。とはいえしばらくぶりの自分の部屋がどうなっているかわからないな。後で様子見に行かないとな。
「とりあえず私は暇だしその辺ぶらついてるから」
ユウナはそう言って立ち上がって店を出た。
自由なやつだなぁ。(人のこと言えない)
俺もちょっと散歩でもしてくるかそう思って立ち上がった時
「レイジお会計」
うわ、忘れてた地獄の時間だ。
「いくら?」
「合計で58970ルド」
「···冗談だろ」
あとから知ったがここ最近はジャイアントピッグの討伐数があまり良くなかったらしい。ミーシャ曰く「この時期はいつも数が減るんだ」とのこと。
最悪だ。




