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作戦開始!

味は悪くなかったが後味は最悪ということをつい30秒前に発見した俺はどうにもならない鼻に残った香りに苦戦していた。レベルで言えば餃子ぐらい面倒くさい。おいしいし食べてるときは臭いはそんなに気になんないけど後からするとそこそこ鼻に残る香りなんだよな。


口直しにチョコレート味のキャロリーメイトをかじる。もう何をするにもキャロリーメイト食ってんな。

朝飯の主食も副食もキャロリーメイト、口直しにキャロリーメイト、負傷兵にキャロリーメイト。

やることのほとんどに深くかかわってきてるな。このままだと俺の使う武器もそのうちキャロリーメイトと

コラボしたものになるかもしれない。


もしそうなったら俺はキャロリー戦隊マジアキターを名乗っていくことにしよう。無論そうならないように祈っているし努力するつもりだが。


さっきから立て続けにキャロリーメイトばっかりかじっているせいで周りから「あいつ朝からめっちゃクッキー食べるじゃん」みたいな目で俺を見ている。俺が重度のお菓子好きみたいになってんじゃねえか。


「あの、一個もらっていいですか?パン2つじゃ足りなくて」

そんな中キャロリーメイトをねだってきた奴がいた。メガネをかけたナヨナヨとしている百合騎士の1人だが

その正体は白百合騎士団の団長という圧倒的なギャップを持つ女。

ルイズだった。


俺も含めて周りの奴が「団長!?」とでも言いたげな顔でルイズを見ている。当の本人はお腹を抑えながら

「エへへ」と笑っている。


「腹は膨れないと思うけどどうぞ」

俺はキャロリーメイトを一箱取り出してルイズに渡した。本人は箱の開け方がわからずあちこちを見て指先で箱のいろんなところをカリカリしたりしながら頑張って箱を開けようとしている。やっと箱を開けたと思ったら今度は袋の開け方が分からず首をかしげながらも頑張っていた。


うわーこの光景面白いなー。なんていうか小さい子に初めてお菓子の袋を渡したみたいな反応してるな。この世界にはキャロリーメイトの外箱を作る技術も袋を作る技術も当然ないから珍しいんだろう。

長い死闘の末ようやくキャロリーメイトにありつくことができたルイズは「チョコあじ~」と満足そうに食べていた。


味は良いんだけどね。やっぱり腹が膨れないのが問題だな。お菓子食べてるようなもんだから当然といえば当然だけど。そこさえ解決できれば悪くないんだけど今のところ解決する手段としては何箱も開けるしかない。もっとパンみたいに食べ応えがあるものが必要なのかもしれない。


何かそういうの持ってないかな。そう思ったときコツンと頭に何かが落ちてきた。それは落ちてきて俺の頭にぶつかった後地面に落ちることなく俺の頭に乗っかった。頭の上に確かにある軽い感覚のそれを手に取ってみる。


・・・マジか。それは俺にとっては見慣れた品だった。ピンク色のカップに豚の絵。

そう、それは


「トン麺・・・だと・・・!」

それは子供たちが少ないお小遣いから勇気を振り絞ってようやく買うことのできる贅沢な駄菓子。

70円のミニカップラーメン、『トンメン』である。俺も昔よく食べてたわ(転生する2日前も食べた)。

誰だこんなものをプレゼントしてきた奴。キャロリーメイトをくれた神と兄弟か何かかな、もしくは親子。


食べ物くれるのは良いけど何でこんなにも微妙な食べ物ばかりなのだろう。キャロリーメイトとトン麺。

どちらもお菓子にもまともな飯にもなり切れず、微妙な立ち位置にいる品だ。一体どういう嫌がらせで

この微妙なラインの食品をお詫びにしようと思ったのかぜひ教えてほしいもんだ。今頃天国かどっかで

俺の困っているさまを見ているんだろうな。


こいつはあまり役に立ちそうにないな。お湯ないし、そもそもやかんも持ってないしな。そう思ったとき

カンッという金属音とともに何かが俺の頭にぶつかった。おいまさかと思うが冗談だよな。

地面に落ちたものを拾う。その丸っぽい形状に黒い取っ手が付いたそれはどこからどう見てもあれです。


やかんですね、はい。しかもよく見たらトンメンのロゴついてるし。トンメンのカップの後ろを見ると成分表の横に『シールを30枚集めて特性やかんを当てよう!』と書いてある。

当ててきたかぁ。というか神ってそんなにトンメン食ってんのか。これ沢山食べるくらいならちゃんとしたカップラーメン食べたほうが絶対いいと思うけどな。


ちなみに俺ん家にはトンメンのこのやかんと黄金やかんがありましたけどね。妹と俺がお互い知らずに送ったせいでどっちも当たってしまったよ。まぁ、当てたところで使ってたのは普通のやかんだったけどな。

(その後二つのやかんはどこかへ消えた)


足りないようならこのやかんでお湯を沸かしてトンメンを食えってことね。キャロリーメイトまみれになるよりは味に飽きずに済むからいいのかな。何で異世界に来てキャロリーメイトとトンメンを食べているんだろうか。普通もっといい肉とか珍しいものを食べるのが異世界生活なのではないだろうか。


全世界、全次元を探してもこんなに近代的なものを食べている異世界転生者はきっと多分おそらくいないのではないだろうか。いるなら名乗り出てほしいな、一緒にトンメンでも食べながら語ろうじゃないか。


俺はやかんをしまって食べたそうにトンメンを見てるルイズに「まだ食べる気!?」と言いたい気持ちをグッと抑えながらトンメンをしまった。そんな目で俺を見ないでくれ、お湯がないから作れないしそもそもお前は食べすぎだ。


今俺には「さっきのやつも食べてみたかった」という悲しみの視線と「アイツどこからあんなに道具を出したんだ?」という疑問と不審の視線と「これ以上問題起こしたら本当に怒るわよ」というマジおこの視線が向けられている。一体どうすればいいのか馬鹿な俺に誰か教えてくれ。何をしても状況が悪化するんだが、きっとこういうのを八方塞がりというんだろうな。


人生で使う場面が少ないはずの八方塞がりを使うってことは今の俺の置かれている状況は軍師官兵衛でも

諸葛孔明でも解決できないほど大きな問題という認識でいいのかな。完全にオワタ。


そんなオワタな感じの雰囲気の中俺は耐えた。耐えながら歩いた。団長の空腹発言をスルーし、騎士団からの疑いの目を跳ねのけ、エリザベートからの怒りに満ちた視線に身を小さくしながらもどうにかこうにか

目的地である作戦基地に到着した。


要塞からは1キロほど離れた場所にある。


「おーいるねー」


「ええかなりの数だわ」


「姫様どうします?押し切れるかどうか」


俺は双眼鏡で、エリザベートとサディスとその他もろもろの兵士たちは海賊とかが使ってそうな望遠鏡で

遠くの要塞を見ている。


俺が使っているのは軍とかで使ってそうな高性能な双眼鏡だ。1倍から90倍まで倍率があるという時点で驚きだが倍率を高くしても暗くならないうえに暗視機能やらサーモグラフィーとかの機能までついているナイトビジョンゴーグルとかにもなる万能双眼鏡らしい。


一応神器だがなんか違うような気がするんだよな。俺だけなのかな。神がくれるんだからもっとファンタジーなものをくれるのかなって思ってたけどそれ以上にけっこう現代に寄せてくるじゃん。

おかしいだろ?おかしいよな。だってどこぞ水の天使だって「天使の前では化学なんて紙屑同然だからね」

みたいなことを言っていたのにけっこうお気に入りじゃん。


現代のもの絶対好きだよね神様たち。


『ガラクタ押し付けられただけなんじゃないか説』が俺の中で浮上してきているけど違うよな?

神器ガラクタだけはやめてくれ。俺は青い狸になりたいわけじゃない。この異世界生活を楽しみたいだけなんだ。この先の展開に期待するしかないということか。


投げやりな俺を置いてみんなは作戦会議を始めていた。

敵の多さから見て正面から突っ込むのは無理だと判断したらしい。

俺も参加したいところだが頭が悪いからそういうものの役には立てない。無茶な作戦が決行されないことを祈るしかない。


数十分後ようやく作戦が決まったらしい。さてさてどんな作戦になったのかな・・・あれ?なんでみんなこっちに来るの?いや待て単純にみんなの生きたい方向がこっちなのか。俺がスススーと横に移動すると

皆も俺のほうに歩いてくる。・・・知ってた。


「これからあなたにやってほしいことがあるわ」


「何させる気だ?」


「あなた鳥は好き?鳥が飛んでる姿とか」


「?別に嫌いじゃないけど」


「じゃあ跳躍運動は好き?」


「嫌いじゃないけど」


さっきから質問の意図が全く読めない。そんなことを聞いてどうするんだ。

エリザベートは部下たちにいろいろ指示を送っている。またしばらく放置され、やることもなくぼんやりしていると兵士たちが投石機を運んできた。そんなもの持ってきてたのか。そういえば荷台にそれっぽい部品が積んであったっけ。


「ついてきて作戦を説明するわ」

どうやらすでに進軍の準備はできているらしい。

「作戦はこうよ。まずそこに投石機があるわ。これは普通とは違って改造を加えた上に魔力的に大幅強化してある特別物よ」


「それで岩を飛ばすと」


「いいえ、飛ばすのは岩じゃないわ」

ちょっと待って嫌な予感がする。


「じゃ、じゃあ何を飛ばすんだよ」


「あなたよ」

そう言ってエリザベートは俺を押した。思わず後ろに数歩下がる。そしてそのまま投石機の岩をセットするところに乗ってしまった。血の気が一気に引いた。


「先に行って奴らを蹴散らしてきて。そのあと私たちも行くわ」

無茶苦茶か!

「おい、そんな急に」


「もし作戦がうまくいったらキスしてあげてもいいわ」


「よし行ってくる」

切り替え早いな俺。本当に呆れるわ。というかただの女たらしみたいになってるな。でも美少女からのキッスは男のロマンの一つなんや。


そして俺は大空へ旅立った。ものすごい風が吹いているがちゃんと目を開けていられる。

あっという間に要塞のの外壁を超えて門の内側の広場に落下した。うまく足から着地できてよかった。


靴底がなくなってないかちょっと心配だがそれは後で心配しような俺。

着地の勢いを止めずそのまま走りながら両手に剣を装備して周りにいる奴らを一気に蹴散らす。

流石に上から落ちてくるとは思っていなかったようで状況が呑み込めていない。今のうちだ。


向かってくるオークを切り裂き、弓を使うスケルトンの矢を叩き落とし、魔法で倒す。

走って走って目にもとまらぬ速さで敵を倒す。


だいぶ数も減ってきたんじゃないか?そう思ったとき建物の中からグアァァァオオーという咆哮とともに何かが足音を鳴らして出てきた。大きな体と灰色っぽい肌、そして大きな一つ目。サイクロプスだ。

早速サイクロプスの薙ぎ払いが来る。ジャンプしてかわす。他のモンスターたちもお構いなしに巻き込んでいる。


頭は良くないようだ。やったね俺たち頭悪い仲間じゃん。何にもうれしくないけどな‼

また薙ぎ払いがくる。かわして足から順番に攻撃を入れようとするが周りの雑魚が邪魔で面倒くさい。

しかもサイクロプスの攻撃も来る。


だが甘いぜ!前の俺ならもっとゴリ押ししてただろうけどこの長い訓練で学んだのだよ。魔法もガンガン使えと。まあカットされてるから何があったかはわかんないだろうけどな。とにかく学んだんだよ。


ではお見せしよう俺の新しい技を‼


「バインド‼」

俺がそう唱えるとサイクロプスを囲むように空中に無数の魔法陣が出現した。

そしてその魔法陣から紫色の鎖がサイクロプス向かって発射された。鎖はサイクロプスの手足、胴体、首に巻きついて動きを封じる。


ちょっとじっとしててくれよな。その間に周りの雑魚を減らしておこう。ゴブリンに、ケルベロスに、ゴーレム。お馴染みの敵から初めて出会う敵までいろんな種類がいるな。

まあ結局は蹴散らすから関係ないけどな。


さてと雑魚は大体減ったし、あとはこのサイクロプスをやるか。両手の武器をしまって別の剣を装備する。


それは 剣というにはあまりにも大きすぎた 大きく 分厚く 重く そして大雑把過ぎた

それは 正に鉄塊だった。と言いたくなるほどデカい大剣だ。


巨人殺しの大剣(デス·オブ·ギガス)』その名の通り巨人を殺すためだけに作られた大剣神器。切れ味も威力も他と比べ物にならないほど強力な大剣。これがあれば簡単に倒せるだろう。


「そいやぁぁぁーーー‼」


本気の力で大剣を横に思いっきり振った。感触はなかったが確かにサイクロプスを切った。

力が入りすぎたせいでサイクロプスどころか後ろの建物に大きな穴が開いてしまった。

これ後から損害賠償とか請求されないよな。モンスターが壊したことにしておくか。多分バレねぇだろ。そろそろ皆も来るだろうから門を開けておこう。


ゆっくりと門を押して開いていく。ちょうどその時「せーのっ!」と兵士たちが門を突き破ろうと

破城槌(門を開ける丸太みたいなやつ)で突っ込もうとしていた。


「あぶなっ!」

危うく串刺し(?)になるところだった。


「ある程度減らしておいたぜ」


「お疲れさま。全軍突撃‼」

エリザベートの命令で兵士たちが一気に流れ込む。さて、もう一仕事するとしよう。




「エリザベート様。外のモンスターたちは片づけました。あとは中だけです」


「よし、外の奴らを中に入れろ仕上げだ!」

兵士が建物の中に入っていく。外に敵はいないみたいだし俺も中に入るとするか。

その時、変化が起きた。


「弱いわね~王国の騎士は。戦い方がまるでなってないわ」


その言葉とともに騎士が吹っ飛んできた。こんなちゃんとした鎧をつけた騎士を吹っ飛ばすなんて

相手は本当に人間か?その疑問はすぐに解けた。


建物から出てきたのは黒いハイヒールブーツを履き、黒いホットパンツに白いTシャツ、その上にまた黒い

ライダースジャケットを着ている。赤い瞳に白い髪、頭には士官軍帽を被るという独特なファッションをした女だった。


あの女からは俺と同じものを感じる。何故かは分からないが同じ境遇にいる。そんな感じがする。

それが何を示しているのか。


「へぇ、本当にいたんだ」


俺にチャンスがあるなら他の奴にもチャンスはある。もしかしたらと考えなかったわけではなかった。

いつか出会うかもと、そんな気がしていた。アイツは俺と同じだ。途中過程は違うが結果は同じ。アイツは


「私と同じやつ」

女がクスリと笑う。


俺と同じ、転生者だ。












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