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新しく知ることも多いようで

朝目が覚めると目の前に燃え尽きて真っ黒になった薪があった。これ大丈夫か。俺の顔燃えてないよね?

あとちょっと火に近かったら終わってたぞ。寝ぼけて火に顔を突っ込むとか本当にごめんだからな。

一応顔をさすって大丈夫か確認する。どうやら顔に炭が思いっきりついてるっぽい。


朝早くだから起きているのは見張りくらいのはずだからさっさと洗ってしまおう。みんなに見られたら絶対笑われるに決まってる。近くに水たまりみたいのがあったっけ。そこでチャチャっと洗うとしよう。

周りの奴らを起こさないように抜き足差し足忍び足でテントやら焚き火の間を抜けていく。


一体なんでこんなことでいちいちドキドキせにゃならんのか。俺のがんばっている場面っていつもどうしようもない場面ばっかだな。もっとしっかりしてくれよ俺。まあ言い聞かせたところでどうにもならんけどな。

テントを曲がった時見張りの兵士が立って切るのが見えた。


テントの陰に隠れて様子を見る。こちらを向く様子はないな、さてどうするか。

気絶させて進むか?いや、そんなことしたら()()()とは言わないが後から怒られるのは目に見えている。

このまままっすぐ行けばすぐに水辺に行けるのだが仕方ない。ちょっと遠回りしていくしかないか。


回れ右して別のルートから進もうとしたその時


「あの冒険者正直どうかと思います」

話し声が聞こえて咄嗟にローリングしながら近くの茂みに隠れた。

茂みの中から様子を見ると話しているのは白百合騎士団のメンバーとルイズのようだ。こいつら起きるの早いな。

しかもこの冒険者って俺のことだよね。


水辺に行きたいところだが白百合騎士団での俺の評価が気になる。こんなことをしている場合ではないが

やはり女子からの評価というのは気になってしまう、それが男子高校生なんや。


「どうして?」


「何というか何か隠しているような気がします。サカシタ レイジなどという家系は全く聞いたこともありません。偽名の可能性もあります」

確かにこの世界ではみんな外国みたいに名前が先に来てるもんなしかもみんなカタカナ表記だし偽名を疑われても仕方ない。

でも俺らの世界では坂下なんて星の数ほどいるのよな。


「名字が先にくるのは珍しいけど三日月の国の人だって名字が先にくるわ。もしかしたらその近くの生まれなのかも」


「それはそうですけど他にも不審な点は色々あります。服装も、どこから出しているのか分からない剣も挙げればきりがありません。他国のスパイということもあり得ます」


「ニーナ、疑ったところでどうにもならないわ。今は彼の力ありがたく甘えましょう。それに何かあったときは私たちがいる」


「そうですが···誰だ!」

ニーナとかいう騎士が後ろを振り返ると同時に俺の隠れている茂みに短剣を投げた。


「どうかしたの!?」


「···いえ、気のせいだったみたいです」

二人は歩いて向こうに行ってしまった。

危ないところだった。盗み聞きがバレそうなのも危なかったが飛んできた短剣がすぐ目の前にあることが何より危なかった。

ギリギリで枝に引っかかってくれたらしい。

気のせいどころか君のせいで大惨事になるところだったよ。


この世界の女は鋭利な物を投げつけずにはいられないのだろうか。


よく見たら地面が少し赤くなってるんだけどこれ一体どういうことなんだろうね。誰かトマトケチャップかトマトジュースこぼしたのかな。はっはっは。


額に若干痛みを感じるがそれこそ気のせいだろう。

トマトジュースが流れているような気がするがきっと寝ている間に被ったんだろうな。今はただ···そう信じたい。ジュッという焼いたような音とともに傷口が塞がった。


どうにかこうにか水辺にたどり着いて顔を洗うことができた。もう黒い炭も謎のトマトジュースもついていない。長い道のりだったが何とかなってよかった。後は何もなかったようにすました顔で過ごしていれば大丈夫。




さっき寝ていた所まで戻ってきたわけだが今は何時なんだろうか。デジタル腕時計を見ると14時と出ている。いや間違った。

このデジタル時計は元の世界のものだからあっちの世界の時間が出てるんだった。


俺はポケットから懐中時計を出して時間を確認した。これはちゃんとこっちの世界で買ったものだ。今は5時か。元の世界とは9時間の時差があるのか、1ヶ月以上経つのに初めて知ったわ。


とりあえず軽く筋トレしとこ。いつもどおり腕立てやら腹筋やら一通り筋トレした。あの俺今めっちゃ···暇なんじゃが。

筋トレがあっという間に終わり普段なら本でも読んで過ごしているところだが今はそういう物は持っていない。


出発は6時だからまだ1時間くらいあるしな。···寝るか。うん、それがいい。やることがないなら寝る、これ常識。横になって目を閉じる。30分寝られればいいかな。


「起きなさい」

足でつつかれた。この声と雑な感じの扱い、こんな奴は俺は一人しか知らない。そうどう考えてもヤツである。

「あの、俺まだ目閉じて10秒しか経ってないんですが」


「10秒も経ったんでしょう?十分じゃない」

ほぉー君は無茶苦茶言うねー!?目を閉じて10秒で何ができる?俺はダルいなー、久しぶりに柿ピー食べたい。あとオレンジジュースも欲しい、と思うことしかできませんけどね!!


「何か用っすか?ないなら寝たいんですけど。おやすみ」


「どっちにしろ寝る気じゃない!」

バレたか。

「聞いてるから言ってみそ」


「・・・暇なのよ」


「寝ろ」


「即答!?じゃなくて何か相手しなさいよ!」


なんて面倒くさい奴なんだ。そんなことのために俺の睡眠を妨げようとしているのか。

確かに俺も暇だったからいいんだけどよ。俺は起き上がって「座りたまえ」とエリザベートに促した。

エリザベートは俺の隣に座るとわずかに燃える火を見ながら言った。


「ニホンの話でも聞かせてくれないかしら」


いや、そんな悲しそうな表情で言われても困るな。焚き火見ながら悲しそうな表情されたらすごい深い意味があるみたいな感じになってんだろうが。この話そういう重い内容はないからな!?

さて何を話したもんか。前回は風呂場で・・・ラーメンについて熱く語っていたような気がする。

だしの醤油かあっさり塩かコクの味噌か、どれが正義なのだろうか。


『いや待て、とんこつを忘れるな‼』


『つけ麺も忘れないで!』


頭の中で誰かが叫んだ。誰だお前ら。俺の頭の中に知らない人たちがいるような気がするんだが気のせいだろうか。ラーメン好きさにいつの間にか人格が分かれたなんて言ったら医者も呆れるぞ多分。


『はぁ?つけ麺はラーメンじゃねぇだろうが!』


『何言ってんの!?つけ麺はラーメンでしょ‼あなた食べたことないの!?』

知らない人たちがケンカし始めたぞ。頼むから俺の知らない人が俺の頭の中で勝手にケンカしないでくれ。俺の頭の中もうカオスを超えてきてるな。一体どうすればこのカオスよりも黒いこの頭を治せるのだろうか。誰か教えてくれ。


「どうかしたの?」


「いや、何でもない。話すネタがないんだが何か聞きたいことあるか?」

危ねぇ。あとちょっとでギャグアニメみたいな感じになるところだった。


「そうね。ニホンの事というかあなたのことを教えてくれないかしら」


「何?告白?『あなたのことを思っと知りたいの!』的な?」


「そんなわけ無いでしょう。ただ、強くなるヒントがあるかもと思っただけよ」

うんまあ知ってました。全然期待してなかったですね本当に。


強くなるヒントか・・・ないな。だってあの頃やってたことといえば学校行って、授業受けて、帰ってきてゲームして寝る。みたいなことしかやってないし。強いて言うなら強くなった点はお嬢様学校に通ったことで精神面が多少強くなったことと刺繍とダンスがちょっとだけできるようになったことぐらいだな。


ちなみにどっちも使うことはなかった。


「強くなるかは分からないけど手先は器用にしておいた方がいいかもな。いろんなことに応用できるし。あとは健康第一かな、生活リズムを乱さないようにするのは大事だぞ」

珍しくけっこうまともなことを言っているような気がする。


「そう、案外普通のこと言うのね」


何だお前その「多少面白いこと言うかと思ったらけっこうつまんないな」みたいな反応。

変なこと言うと「馬鹿じゃないの」みたいな反応する癖につまんないとその反応なのか!?

俺は普段どんな感じで接すればいいんですかね!?


「基礎的なことを完璧にしてなんぼのもんだよ」


「確かにそれもそうね。糸通しでもやってみるわ」


あんまり効果があるとは思えないが役には立つだろう。糸通しがスムーズにできるってけっこう自慢できると思うんだけどそう思っているのは俺だけだろうか。あと俺の最短記録は4秒だ。

これでも早いほうだと思っていたが妹にあっさり2秒をたたき出されたときは軽く絶望したのを覚えている。


「ふと思ったんだけどどうして冒険者に?あなたの実力なら王宮騎士どころかもっと上の立場にすらなれるのに」


「俺一攫千金狙ってるところあるからさ」

というか他の道が思い浮かばなかった。でも冒険者っていいよね。自由だし、危険ではあるけど大金を稼げたり、いい景色とかも見れるし何より気楽だ。その代わり収入は結構不安定なのが問題なんだけどな。

俺の場合は居候と店の賄いを食うというダメダメな生活なのでそんなに金を使わないため一応貯金はある。


「馬鹿ねそんなギャンブルなことしなくても騎士なんて偉い人についていくだけで安定した給料がもらえる上に寝床と食事つきよ」

マジか。めっちゃいいじゃん。サディスとルイズはそんなにいい暮らしをしているのか。こっちなんか飯屋の上の余ったベッドとタンスと花瓶だけの部屋に(元)スライムと仲良く暮らしてんだぞ。

居候だからあんまり文句言えねえけどよ。


遠いクエストに行くと道に迷って帰ってこれなくなるからなかなか一攫千金狙えないしな。俺ももう騎士とか兵士とかに転職したほうがいいのかもしれないな。面倒くさいから多分しないけど。


「冒険者って確かに安定してない仕事だけど楽しいからそれでいいかな」


「雇ってほしくなったら言いなさいその時は雇ってあげるわ」

珍しくあの冷たくて俺に対しての扱いが雑な()()エリザベートが優しい言葉をかけてくれている。それは友好度に多少は変化があるということだろう。それは素直にうれしい。うれしいけどその優しさが怖い。


後から思ったが絶対「強い奴を引き入れるのは当然」とかそんな理由だよな。

でも俺は優しさだと思うことにしよう。


気が付けばこんなしょうもない会話をしている間にあっという間に時間になっているじゃないか。

もうちょっとまともな会話ができるように頑張らないとだめだな。何気に俺ってやらなきゃいけないこと多いな。それも基本的なことが。


皆を起こしてさっさとテントをたたみ火を消して素早く出発。あれ?朝飯は?と思ったらパンを一つポイっと渡された。まさかこれをかじりながら歩けと?そんなんでいざという時に戦えんのかな、腹が減っては何とやらだぞ。ジャムもバターも何もついていないパンをかじってみるがやっぱり何か味のあるものと一緒に食べたいものだ。白百合騎士団の奴らもパンをかじっているがみんな真顔でかじってた。


この味なしパンをかじり慣れているのか。せめて塩があれば塩パンにしてまだ食べることができるんだけどな。俺にあるのは水と無駄に全16種類そろっているキャロリーメイトという役に立たない食材しかない。キャロリーメイトのチョコ味かサーロインステーキ味をパンにはさんで食べるという手もあるがそれは最終手段だ。それをやったら口の中がパッサパサになるのは必然、そしてパンの柔らかさに対してキャロリーメイトの硬さが合わない。


さあ、どうする。使えるものは何もない、だがこのもっさりパンを味わい続けるのは苦痛だ。

水で流し込みのも一つの手だけどそれはちょっと、いや俺的には普通にヤダ。なんかベチャッしたパンを味わうのは嫌かなって思う。


むむむ、一体どうすれば。


この後しばらく悩んだが結局どうすることもできずキャロリーメイトのモーニングセット味とかいうわけのわからん味をパンにはさめて食べる羽目になってしまった。無論お口の中はパッサパサになった。

このモーニングセット味スクランブルエッグとソーセージとレタスの味がする。これ一つで朝飯が豪華になったような気分になれる。


このキャロリーメイトもしかして最強か?




























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