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プロローグ

ここはどこだ?暗い。ただ何処までも真っ黒なが広がっている。


進むべきなのか、ここにいるべきなのかちょっと迷うな。まあ、止まっててもしょうがないしちょっと

歩くか。しばらく歩いていると遠くに小さく光が見えた。


あそこが出口なのか。そう思って光に向かって走った。走って走ってやっと光の中に入った。

今度はさっきとは真逆で真っ白な空間が広がっていた。振り向くとさっき自分がいた真っ黒な空間はすでになくなっている。


よく見ると後ろは真っ白な壁だった。白くてわかりづらいだけで実はそんなに広くないのかもしれない。

そしてさっきと違うのはそれだけじゃない。


前に誰かが椅子に座って机に向かっているのが見える。


ここが何処か知っているかもしれないしちょっと聞いてみるか。

近づくとその人は女だとわかった。彼女はペンを走らせて

「あーこうでもないし、それも違うし、大体何で私がこんなことを」とぶつぶつ呟いている。


「あのー、すいません」


「ひゃいっ!!何でもありません!!何も言ってません。ってあなた誰ですか!?」


「それはこっちのセリフだ。お前は誰でここはどこなんだ?」


「私は天使です。ここは簡単に言うなら霊界と現世の狭間みたいなところです」と適当に言うと「とりあえず死者の人はそっちの扉に行ってくださいね。私は今人を待ってるんで」と奥の看板のかかったドアを指さした。


「あ、うん」


聞く限り俺は死んでしまったということなのだろうか?なんか死んだっていうのに意外と落ち着いているもんだな。まあ、もうどうしようもないしさっさと扉に入るか。本当にこんな軽いノリでいいのか俺。


ドアの看板をよく見ると超ストレートに「あの世」とだけ書いてあった。これ自分から入りたいやつ絶対いないだろ。ドアノブをひねっ手ドアを開けようとしたとき


「そういえばここに来るまでに坂下って人に会いませんでした?」と天使が聞いてきた。


「坂下?坂下は俺だけど」


「え‼」天使はそう驚くと俺の顔と手元の紙を交互に見た。そして立ち上がると手もみしながら胡散臭い商人みたいな笑顔でゆっくりと近づいてきた。


「いやーまさかあなたが坂下レイジさんだったとは、先ほどはご無礼をいたしました」

ついさっきまでめっちゃ適当だったのに俺の名前が分かった瞬間態度が急変したな。

というか何で天使が俺なんかを探しているんだろうか。


天使は手もみをやめると真面目な顔つきで

「この度の件につきましてはこの世界の全神々と天使を代表しまして心よりお詫び申し上げます」

そう謝罪すると深々と頭を下げた。


と言われても一体何のことについての謝罪なのか全く見当がつかない。天使に謝られるのも訳がわからないが問題なのはそのスケール。天使ってだけでもかなりやばいのにこの世界の全神々と天使が謝罪するほどってお前ら一体俺に何をしたんだ。


「ごめん何のことか全然わかんないや」


「ええ、そうでしょうとも。すべてはあっという間に起きた出来事だったのです」


「?」


「簡潔に言うとあなたが死んだのは神々のせいなのです」

そして俺の死んだ理由を説明し始めた。



それからどれだけの時間が過ぎたのだろうか。簡単に説明すると言いながら説明が細かく、長い。

おまけに天使自身の愚痴も加わったおかげでさらに長くなってしまった。

説明の内容は・・・まあ、なんとなくわかった。


「まとめると神達が戦争していて、お互い敵に対して本気の一斉攻撃を叩き込もうとしたら攻撃を放った全員が攻撃を外して、それがたまたま歩いていた俺に当たったと?」

バカで信じられないような話だが俺がこうして天使と話している時点で事実なんだろうな。


「そういうことです」


「街に被害とかは?」


「いいえ、どういうわけか街どころか道にすら傷1つありませんでした」

と首を横に振った。


んーなんかおかしいな。神が放った本気の一撃がまさか地面に傷1つつけずに俺だけ殺したと?

なんか偶然当たっちゃった☆というより完全に狙ったって感じがするんだけど。


「じゃあ戦争はどうなった?まだ続いてるのか?」


「いえ、あなたに攻撃が当たったその瞬間に皆和解しました」


うーん何だ。なんか納得がいかないというか俺一人の犠牲で戦争が終わってよかったような複雑な気分だ。つかよくよく考えたら絶対わざと俺に当ててるよね。


「いや、まあ、うん。なんかもういいわ今更怒る気もしないし。それで俺はこれからどうなるんだ?」


「そう!それが本題なんです!」


天使はそう言うと机の中から数枚の紙を取り出して俺に渡した。

紙には大きな文字で『異世界転生について』と大きく描かれていた。その隣にはボールペンのインクがあるか確認したのであろう竜巻が書かれていた。


「俺、転生するの!?」


「神の一人がお詫びとして転生させてくれるみたいですよ」


天使はそう言うとまた愚痴り始めた。


「大体アイツら面倒くさいですよ。みんなで土下座でもして謝ればいいのにみんなの前で頭を下げるのはプライドがなんだかんだとか言うし」


「頼む、もうやめたげて」

この負のサイクルを止めようとしたがもはや止まらない。


「それなのに後からこそこそ私のところにきて『これをあの人間に』とか『これをあの坊やに渡しておいてくれるかしら』とか言って謝罪の手紙渡してくるし自分でやれよ畜生が!」


コイツ本当に天使なんだろうか?口は悪いし、愚痴ばっかりこぼすしコイツは愚痴の神に仕える愚痴の天使なのか。愚痴まみれだな。


「そんなわけでこれどうぞ」


天使はどこからか出した白い腕輪を俺の腕にはめた。すると徐々に小さくなっていき俺の腕を締め付け始めた。締め付けられてるだけでも痛いのにさらにジューと肉を焼くような音が鳴り始めた。


「いてててて‼‼」


腕からは肉が焼かれ煙が出ている。あまりの痛みに嫌な汗が止まらない。気を失いそうだ。

俺は膝をついてうずくまった。


数分して痛みは引いていった。腕を見るとそこにははめられた腕輪はなく代わりに手首のところに

入れ墨でも入れたような模様のようなものが書かれていた。


「いやー、すごいですね。普通ならあんな激痛を食らったら失神するか死んじゃいますよ」

その後「もう死んでますけどね」と付け加えて笑った。

内容がシャレにならねえよ。


「一体何をしただ?」


あまりの痛さに言葉が少しおかしくなっている。


「あの腕輪の中には神、その他もろもろの人たちからのお詫びの品が入っていて、さらに紛失防止のためにそれをあなたの体の中に入れました」

紛失防止のために何でこんな死ぬほど痛い思いをしなきゃいけないんだ。


コイツもう天使とかじゃない天使の皮をかぶった悪魔や!


「ちなみにお詫びの品って?」


「うーん、まあ、主に武器だったんじゃないですかね。150までは数えてたんですけど、そこから先はわからないですね」


150以上のいろいろなものが俺の腕の中に入っているってことか。

さすがに150を超える武器とか道具を持って転生した人はいないんじゃないか?(案外いそう)


手首にわずかに残る痛みを感じてずっとさすっていると天使がまた何か渡してきた。

手に持っているのは糸?天使からそれを受け取って何か分かった。この特有の硬さからして


「髪の毛?」

天使の顔を見るとめっちゃごつい顔で


「食え」


「は?」


「その髪の毛を食え」


「お前、俺を何にしたいの?もしかしてヒーr」


「バカ野郎!異世界ものの話なんだからチート能力がなきゃつまらんだろうが!」

天使が野太い声で遮った。


「それを食えば天使の力の一部を使えるようになるんだ。お前がチート能力使えるように髪を2本も抜いたんだぞ!乙女は髪が命なんだぞ!」


「わかった、わかったからその声と顔やめろ‼」

だがいくら力が手に入るとはいえ髪の毛を食べなきゃいけないのか。


「・・・髪の毛食う以外に方法はないのか?」


「じゃあ私の指でも食べます?得られる力も髪の毛より大きいはずですけど」


「いえ、髪の毛でいいです」


俺は差し出されたお茶と髪の毛をじっと見つめた。


その後、何が起こったのかはあえて語らない。ただ、この後絶対にお見せできない場面が広がった、とでも言っておこうか。


で、そんなお見せできない場面から数分後。


「そんなに嫌がんなくてもいいじゃないですか、毎日しっかり洗ってるから汚くないし。ちょっと傷つきますよ?」


「あのね、お前は食ったないからわからんだろうけどあの独特の硬さは本当にアレでアレだから」


思い出すだけで不快な気分になる。大体髪の毛を食えと言われて食いたい奴いないよ。天使の力の一部が使えるって言ってたが体に変化はない。むしろちょっと悪くなったかもしれない。


「ふーんあんまり変化ないですね。うう、もう数本必要かもしれないですね」


「嘘やろ。嘘だと言ってよ天使さん」


「さすがに私も自分の髪の毛何本も抜きたくないですしこれを使いましょう」

そう言って手渡してきたのは黒い飴玉みたいな何か


「なにこれ?」


「飴です。これを食べれば多分いい感じのチート能力になるはずです。多分」


「そんなものがあるなら早めに出してくれよ」


俺はそう言って飴を受け取ってそれを口に入れた。


そして再びお見せできない光景が広がった。もしこれがテレビだったら今頃お花畑の画面が表示されて


真ん中に『しばらくお待ちください』という文字が表示されているに違いない。



「さっきから人間の食べる物じゃないんだけど!?」


天使は俺の手に触れながら

「不味いのはしょうがないですよ。でもちゃんと身体が強化されてますよ。予定より30倍も強く」

と楽しそうに言った。そしてそのまま俺の手を引いてドアの前に連れて行くと


「とりあえず尺がおしているのでもう異世界行きましょうか」


「尺!?尺って何!?ちょっどういうこと」


ドアを開けると「いってらっしゃい」とでも言っているように優しく俺の背中を押して送り出した。

そうして俺の異世界生活は始まった。



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