もう一つの嘘
あなたは知らなかったみたいだけど、私はずっとあなたを見ていたのよ? 一目惚れなんて初めてだったわ。
保安課も忘年会に参加するって聞いて、私は飛び上がって喜んだ。早起きして綺麗に髪を巻いて。もっとも、仕事が終わる頃には殆どとれちゃってたけど。さりげなくあなたの隣の席もキープ出来た。
『あ、初めまして』
って平静を装って言ってみたけど、内心はドキドキだった。
あなた凄く酔っ払って、『ホテルに行こう』って言ったの。酔った勢い。相手が私じゃなくても誘ってたんでしょうね。でも私はあなたが好きだったから、ホテルについて行ったわ。避妊してない事もわかってたけど……敢えて受け入れたの。
騙したみたいでごめんなさいね。
でも今はとっても幸せな家庭を築いてる───違う?
だからこの事は、私一人の胸に留めておくわ。
あなたには死んでも言わない。だから…………
私は一生、嘘をついて生きて行く。
―Fin―