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8.いつから(1)

いつから(1)


「じゃ、用事があるから。ぐばーい」

送りの誘いをそう言って女は断り、その男に右手を上げて笑った。

「あいつ、結構しつこいわね」

したたかな女はどこにでもいるものだ。女は次の角で白いセダンの中に消えた。

「うまく別れろよ、ああ言ったタイプはストーカー予備軍だぜ」

「わかってる。でもちょっと変なのよねー、あのオジン」

CDのボリュームを下げて女は短髪の男に話し始めた。


男は公園に立っていた。サイトで「釣れた」いつものカモだ。しかし身なりはきちんとしている。嫌いなタイプではない。いつものことだが、好みのタイプでなければ女はそのまま帰る。サイトの写真は本人だが、19の時の写真でモザイクまでかけてあった。つまり、隣に座っても名乗らねばバレることはない。女は、いきなり男の手を取り、指を絡めた。

「初めまして、未唯(みい)ですぅ」

上目遣いの妹キャラに男はまったく形無しだ、男は完全に女に釣り上げられた。

いつからか、女はよく眠るようになった。それは男の「匂い」が原因だ。甘美なそれは女の脳にしみていった。


ある日男は都内のレストランを店ごと貸し切る、自分で料理するためだ。それは小さな魚、厨房の火力が強過ぎるのでそれはほとんど炭になった。ついでに言うと、男はその魚を1日かけてやっと釣ったのだった。満足感からか、ほとんどしゃべらない男もつい声を漏らした。

「美味い」

口の周りに炭をいっぱい付けて男は笑う。男はやはり「変人」に違いない。


そのレストランに女の「元カモ」がいた。その話を聞いて、女はその男がケタ外れの金持ちに違いないと思った。「金」はその女にとって何よりの原動力になった。それを聞くと女はすべてのボーイフレンドのアドレスをさっさと消した。一転して女はその男に夢中になっていった。面白いもので、何度か会うたびに女は男の全てを気に入り始めた。


なるほど、男は金持ちに違いない。使う事、使う事。女は「金持ち」程「渋ちん」なことは経験済み、その点でも男は「変人」だった。ある日真っ白の「リムジン」の中で女は男に聞いてみた。

「あなた、年幾つ?」

女は、男の年齢はもちろん、名前すら知らなかった。女がそんなことを聞くということは「結婚」いや、男を「逃がさない」決意の表れに決まっている。

「四十三かな?」

「かな?」

「正直、誕生日はわからない」

「ふうん」

「名前は?」

「コタロウ」


女はこの男が大金持ちの養子になり、受け継いだ会社を更に大きくし、つい最近まで働き詰めだったことを聞き出した。「四十三」というのは少し怪しいが、大金も自由にできる立場にいるのは間違いないだろう。

「よーし、このオジン。いただきます」

女は「エルメス」のバッグを覗き、用意してきた「モノ」を確認すると、早速男の腕に甘えた。

「未唯おなか、すいた〜」

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