大好きだった・・・
消えゆくものは美しいそういった
理想的であり幻想的な最後
死にゆく者こそ愛おしい
そんな事を伝えたいそう言う思いで作った話です
「僕は死んじゃうの?」
沢山の管に繋がれた少年が震えた声で尋ねる
「君は死なないよ 私が治してあげる」
嘘をついた 決して叶わない 残酷な嘘
「嘘つき・・・僕は自分の事くらい分かってるよ」
少年は自分に言い聞かすように言った
「私は君の事を君より知ってる 君は助かる」
そんな事は無かった この子はもうすぐ旅立ってしまう
「ねぇなんで電気を消したの?真っ暗で何も見えないよ」
電気は消えていない 少年の目が見えなくなっただけだ
「電気を消したのは君が良く休めるようにだよ」
少年の目が見えなくなった事を悟らせない
「僕の目見えなくなったんでしょ?」
少年は自分の状況を分かっていた
「そんな事あるわけないじゃない」
そう言って少年を抱きしめる
「先生どうしたの・・・?」
少年は微笑んだ
「私どうしたんだろ・・・ごめんね・・・あと少しだけこうしてて良いかな・・・?」
私は少年を抱きしめながら
涙を流した
「先生泣いてるの?しょうがないなぁ・・・」
そう言って少年は私の頭を撫でる
すごく嬉しくて すごく苦しかった
(私はこんなにも優しいこの子に何もしてあげられないのかっ・・・)
つい少年を抱きしめ力が強くなる
「先生苦しいよ・・・」
少年は微笑み背中をポンポンと叩く
「ごめんね・・・」
少年から離れようとするが
「まって先生・・・僕このままがいいよ」
少年は私の胸の中に倒れ込む
「先生温かい・・・僕眠くなってきちゃった・・・」
少年の目はうつらうつらとしていた
止めたかったっ眠ってはいけないと思い切り抱きしめたかった・・・けどそれはいけない事だ
「そう・・・じゃあ私が子守唄を歌ってあげるね」
そう言って少年の頭を撫で子守唄を歌う
「先生ありがとうおやすみなさい」
「えぇ・・・おやすみなさい」
私は少年のおでこにキスをした
「僕・・・先生に・・・会えて良かった・・・大好きだよ・・・」
「ありがとう私も君の事を大好きだったよ・・・」
それを聞くと少年はニコッと笑い
私の胸の中で眠るように息を引き取った・・・
「っ・・・」
私は胸の中で眠るように息を引き取った
彼を抱きしめ 泣き続けた 声が枯れるまで泣き続けた