キミのために
神に勝てるわけないだろ!
彼女から体温が失われていく。
どうしてこうなった。
いつぞやの反乱軍との戦いを思い出す。
目の前から消える命。
もうたくさんだった。
だというのに。
「……クソが」
これが俗に言う神からの試練というやつか。
まさに今、相手取っている存在が神なのだとしたらその通りだ。
俺は、命を奪った。
そして今、命を奪われた。
因果応報、自業自得。
言い返すこともできやしない。
「あ」
そんなことをぼうっとしながら考えていたら、身体から勝手に力が抜けた。
今の今まで自分も死に体ということすら忘れていた。
もういい。神に勝てる通りなんざ最初からない。
このまま、もう……
(あきらめないで)
本当にかすかな声。
(いきて)
そういえばこいつはそんなヤツだった。
(むげん)
こんな、どうしようもなくゴミみたいな状況だってのに。
ほほえんでいた。
それを見た瞬間、どうしようもない衝動が体を、心を、魂を突き抜けた。
『終わらせない』
不可解な形に歪んだ体を強引に起こす。
『負けられない』
全力で剣を構える。全身に力を籠めすぎて奥歯やら指の骨やらが砕ける音が耳の中に響いた。
だが、立ち上がり、剣を構えることができた。
ならば後は。
『殺す』
「そこ」までたどり着いたとき。
「何か」を突破した感覚が確かにした。
『ふむ、これで目覚めるか』
神が、そうつぶやいたのが聞こえた気がした。
*
「んだよ、アレ」
辛うじて意識の在ったカイザは確かにそれを目撃した。
眼前で荒れ狂う魔力の暴風。
それはさながらハリケーンの如くはるか上空の雲を突き抜け、敵の残党を巻き上げ、徐々に勢いを増していた。
(馬鹿げてる魔力だ、しかもこれは)
発生地点から推測するに、確実にムゲンが発生させていることは分かる。
マクナはもうあの時点でほぼ死んでいるだろうし、こんな天災レベルの魔法を行使できるレベルの魔力は残っていなかった。
だが、
(魔力の、質が違う)
普段のムゲンとは違う、ザラつきにも似た何かがその魔力からは感じられた。
どれくらいそうしていただろう。
数秒か、数分か。
一瞬だけ、その激流の勢いが強まったかのように見えた、次の瞬間。
「!?」
一気にそれは「炸裂」した。
爆風と閃光が一瞬にして全てを飲み込んだ。
*
ミッドガル王国から南方に数百キロの荒れ地。
『おいおい、王国がただの荒野になるところだったぞ』
神はムゲンに語り掛ける。
どうやらムゲン邸から一気にここまで彼らごと転移してきたらしい。
それは何故か。
「なるほど、それが今のお前の『スピリッツ』か」
神の眼前にはムゲンがいた。
ただ、決定的に違っていた。
彼の体の至る所が『竜』の如き変化を起こしていた。
バカ野郎お前俺は勝つぞ!





