クライマックス
理不尽&理不尽な回です。
「……」
誰もそのセリフに何も言わなかった。
言えなかった、とも言えるかもしれない。
まぁ、ともかく。
それでも口火を切ったのは主人公であった。
「ッ!」
毎度おなじみ無限鉱石の剣を変形させて、蛇のようにねじれ曲がらせた刃を自称:神に突っ込ませる。
『無駄』
が、刃が通らない。
弾かれたわけでも、躱されたわけでもなく、皮膚でピタリと止まっている。
「召喚獣!」
それに驚く様子もなく、巨龍を召喚して畳みかけようとするが。
『無理だね』
何も起こらなかった。召喚魔法を使うための大気中の魔力はムゲンの元へと何故か集まらない。
「……」
剣を構え直し、ゆっくりと息を吐くムゲン。
「ハッッ!!」
身体強化に加えて、ムゲンの持てる技術……つまり、剣の握り、体幹、踏み込み、呼吸、構えその他etcが本人も無意識のうちに注ぎ込まれた一太刀。
いや、注ぎ込まざるを得なかったと言うべきだ。
それほどまでに相手は、強大だったのだから。
『少しよかったね、今の』
「!?」
気づけばムゲンは血塗れになって地に伏していた。
僅かな猶予と共に襲いくる激痛は、腕と鳩尾と股間という急所も急所ばかりから。
「ああああああああッッッ!?」
思わず絶叫する。
涙を流して。
赦しを乞うように地を這いずりながら。
そして、ここまで僅かコンマ数秒。
仲間達は絶句していた。
「ムゲン!!」
手早く治癒魔法を行使するマクナ。と、同時に撤退の準備を仕込もうとする、が。
『はい、残念だけど逃がさないよ』
「何を…!?」
その発言に気を取られた刹那、ある変化に彼女は気付いた。
(結界!?)
それは「あって当然」と言わんばかりに構築されていた。凄まじい魔力量で構築された様々な様式の結界。
それが彼らを外界から半径数100mの位置で遮断させていた。
こと魔力の扱いに優れるマクナでさえ反応が追いついていない。その様を見て、各々の思考回路……かろうじて思考できる者に限る……が迸る。
(いつの間に発動させやがった…!)
(そもそもコレは結界なんて生優しいモノなの!?)
(マズイ、完全に相手が僕たちより「上」だ!)
何はともあれ、わずかな時間で彼らの至った結論は多少差はあれど総じて同じ。
(コイツには、勝てない)
である。
✳︎
「なんだコレは……」
ムゲン邸へと向かっていたルスガも流石に困惑を隠せなかった。
恐らくはムゲンの一撃が炸裂した後、突如として眼前に現れた凄まじい密度の結界。
(どうやって突破する)
脆い所を探して地道に解析魔法でも……という考えにルスガが至った刹那。
『君も歓迎しよう』
結界が僅かに輝き、ルスガの全身を照らす。
「ッ!」
咄嗟に身構える──いや、身構え終わる前に彼はムゲン達と同じく彼の邸宅の屋根へと転移させられていた。
そこには彼の想像を絶する光景が広がっていた。
✳︎
不気味な程静かであった。
嘔吐と痙攣を繰り返しながら立ち上がろうとするカイザ。
精神を確実に破壊されたであろうアザイはずっと薄ら笑いを浮かべたまま動かない。
ガンバは少しずつ自らの四肢を治癒しているが、時間はまだまだ掛かるであろう。
タクウは意識を取り戻してはいるらしいが、最早戦意喪失しているのが見て取れる。
マクナは五体満足ではあれ、多くの魔法を封じられている以上戦うことも逃げることも困難。
ムゲンは、自らが生み出した血の海で息をしているのかも怪しい。
『やぁ、ルスガ』
「キッ、貴様がコレらをやらかしてちまったのか」
声が裏返り、まともな文法で言語を紡ぐのも困難。
ルスガはそんな精神的な余裕が一切無い自分を客観的に見ていた。
「自分はここでまともに死ねるのだろうか」
という、自らが死に至ることを前提とした絶望的な願望を抱きながらではあったが。
✳︎
最早打てる手など無い。
相手は強大すぎる力を持ってして、こちらの全てを封じている。
だが。
だとしても。
きっと。
「全て」以上の何かを出せたとしたら。
そこに光は、あるのかもしれない。
死亡フラグはまだ建ってない!





