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インフィニティ・ワールド  作者: Yamato
God Breaker
66/79

今再び守るため

そう、奴は生きていたのです

それは、闇。


心も体も闇に染まる。


何も見えない聞こえない。


でも、あぁ。


これはこれで──


『まだ死するにはいささか早いぞ、我が主』


引きずり上げられる。


暗く冷たい夢から、重く痛い現へと。



「……ムゲン・シン」

「……カイザァ!」


再び相まみえた両雄。

重苦しい沈黙。


それを打ち破ったのは、路肩のバラック小屋の屋根から躍りかかってきた、獅子のなりそこないのような魔獣であった。


「フッ!」


ムゲンが剣を鞭に変換して縛り上げ、それをモーニングスターよろしくカイザに叩きつける。


それを彼は大剣で弾き飛ばし、身を翻して両断する。


こと切れた魔獣を一瞥もせず、カイザが口を開く。


「俺に構ってる場合か、テメェ」


それにムゲンは一言。


「違ぇだろうな」


と返し、剣を収める。


(確かにコイツのことは後回しでいい)


特に妨害をする気配もないし、何よりもまるでムゲンに対して殺気のようなものを向けていない。

殺意を隠しているという可能性もないわけではないが、ここまで殺気を消しているなら少なくとも、今すぐ殺すというわけでもないのかもしれない……という推測と勘によって、ムゲンは剣を収めた。


「で?なんでこんなとろ……ところにいるんだよ」

「噛んでんじゃねェよ」


カイザは軽くツッコんだ後、ぽつりと。


「弱者を見捨てたくねぇからな」


というと、スラム街の奥地へと駆け出した。


「一度コテンパンにブチのめされてまだ言うか、それ」


呆れ気味にごちると、ムゲンも彼の背を追いかけだした。



「各地で蜂起している民衆もいるようです!」

「多くは元革命軍所属の模様!」

「彼らに優先的に援護を回せ!スラム街以外の王城付近の市街地を優先しろ!」


慌ただしく指示と報告が飛び交う中、ルスガは。


(革命軍、か)


思わずその単語になんとも言えない感情を覚える。

感傷、かもしれないが。


(いや、今は目の前のことに)


「そ、総司令!」

「どうした」


血相を変えて司令部の青年がルスガに報じる。


「スラム街の民間人の多くが地下シェルターに避難を開始している模様!どんどん増えています!」


その報告に各員が様々な反応を示す。


「あの地域で救援活動してる連中がいるってのか!?」

「魔力探知機でパターン照合!ムゲン・シンと、えっと、もう一人は、カイザ・クーダです!」


その名前でさらにざわつく。


(……)


ルスガの脳内は真っ白になった。

確実に葬ったであろう敵にして友。

それがこうして、スラム街の救援に、それもあのムゲンとともにいる。


(落ち着け、ならば我々がすべきは)


「……スラム街周辺の民間人の救助は彼らに全て委ねる」

「え、や、しかし!!」

「実力は本物だ。私が保証する」


ルスガの指示にさらに司令部は混乱する。

その時。


「それは、ルスガ個人としてか、総司令としてか」

「レオン軍部長……」


険しい顔つきで、そこに立ってい「両方です」


ルスガ、即答である。


「そうか……そーうーかァ!!」


その答えを聞き遂げたレオンは。


「聞け、諸君!今からルスガ総司令に変わりこの私、レオン・ソルガが指揮を執る!!」

「!!」


司令室に獅子の咆哮のごとく響き渡る、宣言に思わずみな背を正す。


「ルスガ総司令は前線にて死力を尽くせ!!」


そう言い、レオンはルスガにニッと笑いかけると、ルスガ以上に手早く指示を飛ばし始めた。


ふと目をやると、そこにすでにルスガの姿は影も形もない。


(ったく、あの小僧っ子がそんなこと言えるようになってくれるたぁな)


かつて、この世のすべてを諦めたような目つきをしていた少年は、今は一軍の長として、もしかすれば此度はこの世界を守るものの頂点として戦場を駆けている。


(このジジイの後は任せたぜ、ルスガ!)



「じゃあ、転移させるぜ?3!2!1!」


魔力光で満たされた後、地下シェルターへと乞食は転移されていった。


「これでここらの連中は全員転移完了したか…」

「そうだナ。おつかれサン」


キリューを人々の探知と転移で酷使したかいもあり、多くのスラム街の住民は避難が完了していた。


「で、どうするんだよお前」

「あぁ?」

「こんな魑魅魍魎まみれの王都だ。やりたい放題できるんじゃねぇの?」

「俺一人でンなことしても意味ねぇっていうか、速攻で野垂死ぬのがオチだろ」


呆れ顔でため息をつくカイザに、思わず、


「じゃあ、俺と一緒にアザイたちと合流するか?」


何故あえてアザイの名前を出したのか。

何故そんな誘いをしてしまったのか。


言った後になって疑問符が頭の中を飛び交う。


「……仲良しごっこでもしろと?」

「ごっこどころか仲良しだったんじゃねぇの?お前ら」

「あぁ、だが今は」


そう言いかけた時、爆音が鳴り響いた。


(俺の家の方か!!)


咄嗟に転移魔法を使おうとするが、


「転移はやめとけ、索敵もできてねぇのに突っ込んだら狩られて終わる」


カイザが制した。


「……なら!キリュー!!」

「ヨシ来タ!」


次の刹那、光が満ちる。


『往くぞ、ムゲン』


そこにはキリュー……もとい、あの巨竜の姿があった。


手早く飛び乗り、


「頼む!……おいコラ!」


カイザを拘束魔法で縛り上げて、引き上げる。


「おいテメェ!」

「いつまでもまどろっこしいことしてるテメーらが悪いに決まってんだろォ!」

「あぁ?童貞の分際で人間関係について語ってんじゃねぇぞクサレメンヘラ男が」

「誰がメンヘラだ!!!」


ついこの前まで殺しあっていた間柄とは思えないほど、ぎゃーすか騒ぎながら彼らは巨竜にまたがり、上空へと飛翔した。








カイザは何を思い、この戦いに身を投じるのか?

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