名もなき戦士達
モブキャラに焦点を当てることが増えていくと思うので、その試金石のようなお話です。
「各員、報告ご苦労だった。これよりこの『侵攻』に対しての防衛を本格的に開始する!」
ルスガは指令室にて、軍の各部隊への指示を出す、が。
「えーっとこの設備の使い方は……」
「馬鹿。マニュアル読めよ」
「マニュアルってどこですか!?」
「ぎゃッ!何もしてないのに動かなくなった!!!」
このザマである。
(さすがに訓練もまともにしてない現状の軍部で指示を出すのは厳しいか)
そう。この軍本部は使い始めてからまだ日が浅く、最新技術を多用した弊害で各種機器の操作も複雑になっていた。
今回に関してはシンプルに『間が悪かった』としか言いようがない。
無論、そんなことを言ってる場合ではないのだが。
「市街地への被害、依然として拡大中!!」
「サンプルパターンが存在しない敵生体出現の報告多数!!」
「第3部隊、壊滅!!」
聞こえる報告は絶望的なものばかり。
だが。
「魔力探知機のセットアップ完了しました!マクナ、タクウ、ガンバ、アザイさんが戦闘を開始した模様!!」
希望が一筋、確かに。
「!!!」
その報告で明らかに多数のメンバーの顔色が変わった。
無論、名もなき彼らとて何も知らずにあの堕天使の、もしくは革命軍との戦いといった、数々の苦難を超えてきたわけではない。
途方もない魔法の才を宿した少女が。
途轍もなく武芸に秀でた熱血漢の兄。
そして、槍を自らの四肢のごとく扱い、熱血漢を支えるその心優しき弟が。
更に、数々の地獄を乗り越え、剣に雷を纏わせ、疾駆している玉鋼のような銀髪の戦乙女が。
確かにいるのだと。
我々と同じ場所で戦っているのだと。
知っていた。
そのことが何よりも誇らしく、奮い立たせた。
「年下に負けてられっかぁ!」
一人の女性隊員が、声を張り上げた。
それにつられるかのように、各々が諦観を止め、忙しく動き出した。
(……強いのだな、彼らも)
ルスガが何も助言することなく、彼らは奮起した。
ならば、自分にできることは何があるのだろうか。
「総隊長!指示を!!」
「……あぁ」
いや、細かく考えても意味はない。
やるべきことを。
なすべきことを。
責務を。
義務を。
「市民の救助、回復を最優先!各地の防衛はそのあとでいい!!人員、設備、戦力を惜しむな!!」
「惨劇を、食い止める!」
*
町中を疾走する。
それも右から飛び出してきた魔獣を蹴り飛ばし、左から降ってきた魔弾の爆撃を反射しながら。
「クソみてぇに数が多いな!!」
ムゲンはわざわざ徒歩でマクナ達のいるであろう、自宅に向かっていた。
と、いうのも。
「大丈夫かぁ!?」
ムゲンは救助が遅れている、スラム街に向かうためでもあった。
(他のところはルスガやらがやってくれてるだろ)
しかし、ここは違う。
いつから「こう」なったのかは分からないが、気づけばスラム街と化していた此処は、誰もが見て見ぬ振りするミッドガルの闇である。
(だからこそ、向き合ってやりたい)
それはおこがましいにもほどがある、思い上がり。
しかし、何かが違えば自らもここの住民であったことを、かつての血まみれと化した自らの手を思い出して──
「!」
足を止める。
呼吸を整える。
剣を構えなおす。
「なんでテメェがここにいるんだ」
それは決してあり得ぬ、再会であった。
ムゲンが出会った相手とは?





