幕開け
ルスガとムゲンは何を思っているのか。
「時空安定値、依然として低下中!」
「既に王国内部に多数の魔導生命体が出現とのこと!」
ミッドガル軍司令部本部に飛び交う報告と警告音。
「結界術式は!」
「ダメです!まるで効果がありません!」
「じゃあマニュアルに従って……」
軍本部の創設早々にして波乱の予感である。
*
同時刻、ムゲン邸。
「なんじゃありゃあ……」
「っ……」
ベランダから身を乗り出して王国を見渡すタクウとガンバ、そしてマクナ。
そこから見える風景は、凄まじいものであった。
空を飛び回る夥しい数の飛龍、巨鳥、巨獣の群れ。
物陰から溢れ出る形容しがたき、あやかしともののけ。
家屋を破壊して回る巨人やスライム。
そして何よりも。
「何か途轍もないことが起ころうとしてるのかもね……」
マクナが睨みつけた上空には。
「久しいな、人間」
あの(堕)天使と、他の天使たちが数多降臨していたのだった。
*
再び場所はミッドガル軍本部、最上階。
「ムゲン!どこに行く」
「あぁ?決まってんだろ、あいつら蹴散らしに行くんだよ」
さも当然と言わんばかりに即答すると、ムゲンはその場からワープしようとした、が。
僅かな閃光とともに、魔力が集まらずに霧散した。
「無駄だ。この部屋は私以外魔法を行使できない」
「……じゃあ、またあのエレベーターで」
ピシャリ。エレベーターの扉が閉まると操作盤はどこかに格納されてしまった。
「……」
「……」
沈黙。
が、それも僅かで終わり、
「何がしたいんだてめぇ」
ガンを飛ばしながら田舎のヤンキーのようにルスガに詰め寄る。
「お前は人類の切り札だと言ったはずだ」
「じゃあ暫くは犠牲が出てもお構いなしってか?」
「あぁ。その犠牲に比べれば──」
次の瞬間、ムゲンの蹴りがルスガの股間を捉えた。
「ッ!?」
飛びずさり、壁を背にしたルスガにさらに飛び掛かって距離を詰め、ショルダータックルが炸裂した。
「な、にを」
鳩尾を抑えながら地に伏すルスガにムゲンは剣を向ける。
「また俺を大量殺人者にしたいのか、テメェ」
心底呆れた目つきで見下ろすムゲン。
「お前は、」
何か言おうとしたルスガは拳骨を入れられ、再び地に伏した。
「俺は暫く他人を殺したい気分じゃねぇんだよ、見殺しも含めて」
「……」
うつ伏せから仰向けになり、ルスガはムゲンを見上げる。
(ムゲン・シンは、こういう人間なのか)
それは「やはり」とも思ったが、意外でもあった。
(人の心を知ったのか、それとも、知ってるように振舞っているだけなのか)
いや、そんなことはどうでもいい。いまするべき決断は
「まぁ、つまり、アレだ。人以外なら話は別だしな」
「勝手にしろ」
そこまで言ったタイミングで、ルスガはそう答えて立ち上がる。
ムゲンに、信頼のような、申し訳なさそうな視線を投げかけながら。
「冷徹なだけじゃねぇんだな、お前って」
「お互い様だろう」
そんなことを言いながら、ムゲンとルスガは最高指揮官室を後にした。
メンタル的に死にかけてるので投稿ぺ-ス遅れ気味です。許せ……





