古傷
日常描写は楽しいなぁ。
朝食を終えたなら、各々好きなように行動する。
タクウとガンバは汗を流すべく、風呂へ。
「オイお前ら今日こそは全裸で風呂から出てくんじゃねぇぞ」
「いや僕はちゃんと服着てるんだけど」
「連帯責任に決まってんだろ兄弟なんだし」
「忘れないように頑張るぜ!!」
一通り野生児兄弟に喚き散らしたあと、ムゲンはそそくさと出掛ける支度を始める。
「今日も行くの?」
「まぁ、な」
ムゲンは最近王国軍本部、ミッドガルタワーに向かう事が多くなった。
どうやらそれとなく雑務の手伝いをしてるらしい。
「そっか……じゃあルスガ君によろしくね」
ルスガの名を聞くと少し動きを止めて、
「分かった」
そう返すと、その場から転移魔法で出かけていった。
手伝いに行くとはいえ、先の戦争の後のやりとりによる確執が無いわけでもなく。
というか、ムゲンのメンタル状態は良好という訳でもない。
マクナここ最近ムゲンが剣を抜いた所を見ていない。鍛錬含めて、である。
それにムゲンの雑務の内容も殆どが戦争の後始末、後処理に関するものが殆どだという。
「頑張らないとなぁ……」
その呟きは、誰に、何に向けたものだろうか。
✳︎
「よっアザイ」
「あぁ、ムゲン」
軍本部前。朝食を終えるなりすぐに軍本部に向かっていたアザイと合流した。
「今日のお前の仕事って」
「ゴブリンと大陸北西部の農村が小競り合いをしていてな。そこの仲裁だ」
本作品の序盤でほんのわずかに触れたが、この世界には多くの異種族が存在している。
エルフ、ドワーフ、ゴブリン、魚人種……恐らくまだ未確認の種族もいるだろう。
基本的にそれらは人類含め一部を除いて、互いに無干渉を貫いている。
まぁ、「基本的に」かつ「一部を除いて」という二つの単語が入っている時点で、定期的にこういう事態が発生しているのは目に見えているだろうが。
「その仕事一日で終わんの?」
「終わらせるさ」
実際、彼女は出来ないことはやらない主義のようなので断言した以上成し遂げるのだろう。
と、そんなことをなんとなく思案した後、ふと視線を廊下の奥に向けた。
「ムゲン」
「……なんだよ」
ムゲンのメンタル的な不調の原因、ルスガその人であった。
*
「まぁ、入ってくれ」
そこはタワーの最上階、軍の最高権力者の部屋である。
「へぇ、お前が今度からトップなのか?」
あえて厭味ったらしく、吐き捨てる。
「……どうしても、お前の力が必要なんだ」
「俺の力じゃなくて、『強い力』なら何でもいいんだろ軍部は」
僅かな沈黙。
ここで、ルスガが初めて表情を僅かに変えた。
「それは……あぁ。否定できない」
その表情は自嘲のようにも取れなくはなかった。
「へぇ?」
始めて彼が見せた表情に、思わず嫌味ではなくシンプルな疑問の声が出た。
「……この国にはかつて神懸かり的な脅威が訪れた」
(堕)天使によるミッドガル王国の制圧。もはや過去のことのように語られているが、先日の革命軍の騒ぎも(堕)天使による被害、それに対して各地の行政からまともな対応がとられていないことへ対しての不満が蜂起した理由の一端を占めているのも事実である。
「まだアレで終わりだとは思えないってことか?」
「あぁ。そもそもあれは天使だった、つまり次来るのだとしたら──」
突如鳴り響いた警報がルスガとムゲンの会話を強引に断った。
「なんだよ?」
疑問符を受かべたムゲンに対し、
「警報パターンは赤の7か」
先ほどの感傷に満ちた表情から打って変わって普段通りの冷静さで手元の軍用コンソールを弄りだすルスガ。
「もっと分かり易く言うと?」
「……大陸規模の非常事態だ」
日常描写エリアもう終わるんか……





