同時に二つのことをするのは苦手です。
暗い森。
二つの影が火花を散らして激突していた。
(ふーん)
ムゲンは相手──盗賊兄弟 (爪使い)の攻撃をいなし続けながら考えている。
噂では盗賊兄弟は二人だそうなので、これ以上の新手は考えなくてもいいだろう。
(最初から二人で襲ってこないって事は、)
突き出してきた両腕を蹴り上げてひるんだ隙に、鳩尾に肘付きを叩き込む。
(何か策があるって事か?)
急所に攻撃を受け、若干怯んだのか、距離を取り様子をうかがう盗賊。
が、ムゲンはそんなことはさせないと言わんばかりに距離を僅か0.5秒程度で詰めると再び鳩尾に、今度はヤクザキックを叩き込む。
「グハッ!」
見事にムゲンの蹴りが命中!
と、思いきや・・・
「!」
蹴りを受けて上半身をやや後ろにのけぞらせた状態からのバク転&蹴り!
「ヒュー♪」
ムゲンは踊るかのようにひらりと避わした……完全にムゲンは楽しんでいるようだ。
しかし、相手は違う。
一日にどれくらいの獲物から自分たちのためになるものをぶんどるか。
この一回一回の戦いに彼らは自分たちの一日を賭けているのだ。
「オラァ!!」
裂帛の気合いと共に再び殴りかかってくる盗賊。
両手に恐らく鉄製の爪をはめているため、普通の人間が一撃でもまともに食らったら大ダメージは免れない!
しかし、この状況下で、明らかに{普通}の人間ではない、
「ハッ!」
『化け物じみた』人間は嗤った。