忘却
忘れたいことばかりですね、人間って。
「ルスガ」
レオンがルスガの自室に訪れたのは、ほとんどの王国軍が撤収した後だった。
「総隊長」
「よかったのか、これで」
「当然です」
苦虫を嚙み潰したような顔のレオンを意に介さず、無表情で即答するルスガ。
「あのまま革命軍がグランドゲートに到達しようものなら、王家に多大な損害を──」
「そうじゃない。ルスガ、お前個人の感情はどうなんだと聞いているんだ!!」
感情。
そう問われたときに脳裏に過ったものは、遥か彼方の記憶だった。
*
村が蹂躙されるあの夜の前、俺はどんなに幸せだったのだろうか。
「アザイ!ルスガ!あと○○○!!」
やめろ、もう過ぎたことだ思い出すな。
「カイザ!またサボり?」
「うるせぇな」
「でも族長が心配してたよ」
「○○○だもんね、カイザ」
もういいだろう。
「私、族長が話してるところ見ちゃったの……」
十分だ。
「ふざけんなよ、ルスガ」
知らない。
「カイザ!」
「アザイと○○○は!?」
「化け物が○○○に!!」
見捨てたんじゃない。
「逃げて、みんな」
*
「坊主、すまねぇ」
「救出できたのは君だけだったんだ……」
こんな辛い思いをしたのは誰のせいだ。
「僕が、弱かったせいで、みんなが」
「……坊主は悪かねぇさ」
ひたすら、剣を振るった。
強くなるために。
強くあるために。
*
「革命軍の首魁は、カイザを名乗る大剣使いの黒髪赤目の青年である模様……ルスガさん?」
その時の何もかもが崩れていくような感覚は、今でも体と心の奥に沁みついている。
「そう、か」
どうすればいいのだろう。
いや、今となっては、
どうすれば、
昔のように皆で笑いあえたのだろう。
現在。
眼前のレオンに意識を向ける。
「……今更、どうにもならない」
吐き捨てるように、そう呟くのが精いっぱいだった。
あと少しでこの章も完結でございます!!





