真なる強者
生活リズムが昼夜逆転してます。助けて
「マク…ナ…ッ!」
剣を振り上げるムゲン。
しかし、それを振り下ろすことはかなわない。
「……クソッ」
マクナは、彼女こそは、ムゲンの唯一の。
「全く、聞いて呆れるわ」
どこからともなく響く、聞きなれぬ声。
と、次の刹那。
爆音と熱風、閃光が周囲を蹂躙した。
✳︎
「何が起きたァ!?」
「分からない、けど!!」
真っ先に行動したのは、これまた先のムゲンの攻撃に巻き込まれたタクウとガンバだった。
砂埃立ち込める爆発の中心部に迷いなく飛び込み、
「破ァ!」
「『旋風魔法』!」
それを吹き飛ばす。
その眼前に映ったものは。
「ふむ、流石に庇ったか」
天を貫くが如き角。
如何なる愚者であろうど知性を感じざるを得ぬ瞳。
穢れを一切知らぬ白き鱗。
天を抱えるが如き両翼。
そして、体長は僅か10m程だと言うのに、この世界すべてを見下ろさんが如き威圧感。
「ワ、ワイバーン……!?」
「今こいつ人の言葉で話したぞ……?」
威風堂々。
大胆不敵。
それら言葉すらも霞むが如き『圧倒的な強者』
「──ここまでこの大バカ者について来た敬意を評し、我に名は無いが、せめて『我が在り方』を名乗ろう」
そう呟くと、大きく息を吸い込む。
「オイオイオイ!」
「ちょっ……!?」
『我こそは』
再び暴風、否、巨龍が発した音圧波が周囲の雑兵を吹き飛ばす。
『ムゲン・シンが召喚獣、即ち──』
「ぐぎぎぎぎぎ」
「うぉぉぉぉぉ」
「ッッ!!」
必死に耐えるムゲン達、及びその周囲の一部の猛者達を脇目もふらず、咆哮する。
『始祖の巨龍である!』
✳︎
ムゲンの前に仁王立ちする始祖の巨龍、もとい召喚獣。
「召喚獣、です、って?」
それを見据え、息も絶え絶えにマクナが呟く。
召喚獣。召喚魔法を行使する事で現れる使い魔とは一線を画す高位の存在。
各地に召喚獣に関するさまざまな伝説、伝承があるが、それらには共通する点がある。
曰く『それを呼び出した者は世界の変革者である』と。
しかし。
「……ふざけんな」
一言呟いたと同時にムゲンは巨龍、己が召喚獣に斬りかかる、が。
『戯け』
巨龍の背後から暴風が吹き荒れ、即座に地に叩きつけられる。
『貴様如きが我に敵うと思うたか?』
「黙れ!」
「ムゲン落ち着いて!アレは君の」
ガンバの言葉すら無視して再び巨龍に飛びかかる。
『他愛もない』
今度は巨龍の拳が一瞬にしてムゲンを遥かに彼方へ殴り飛ばした。
ムゲンは転移魔法で再び巨龍の眼前に。
それを再びねじ伏せる巨龍。
ムゲンが絶叫しながら襲いかかる。
それを巨龍がいなす。
斬ろうとする。
蹴り飛ばす。
爆破しようとする。
ブレスで吹き飛ばす。
殴りかかろうとする。
尻尾で滅多打ちにされる。
その様はまさに、児戯に等しかった。
「あ…っ、アァッ」
瞬く間に蹂躙されたムゲンの声はかすれ、もはや無様な吐息を漏らすのみ。
それに対して巨龍は心底つまらなさそうに、溜息混じりにムゲンを見下ろす。
『全く、お前とその仲間達の今までの旅は何だったのだ』
愚痴のようにこぼす巨龍を、睨むことしかできないムゲン。
「テメェにムゲンの何が分かるってんだ!」
皆ムゲンと巨龍の間に入らなかったにも関わらず、空気を読まずに外野から飛んだタクウの言葉と鉄拳。
『分からない、わけではない。何故なら』
その言葉と共に巨体は消え、タクウの拳は宙を切る。
そして、全員が呆気に取られた。
「ショウカンジュウってオレのことだからナ」
先程まで巨龍がいた場所には一匹の珍妙な生物……キリューがおり、とんでもねぇ事を口走りやがったからだ。
ドラゴンってやっぱいいよね……





