人外ならざる人外
色々とドタバタしてましたが、なんとか月一更新を継続できそうな自分に乾杯!!
「ムゲン!!」
煩いったらありゃしない。
どいつもこいつもくだらないことでうだうだと。
だから。
俺が。
今。
ここで。
*
ムゲン・シン。
常日頃から一見、気怠げな表情を浮かべた少年。
その認識は間違ってはおらず、様々な物語で、様々な形で使い古されたタイプの主人公である。
しかしながら、読者の方々はこのタイプの主人公に対して疑問を浮かべたことはないだろうか?
「何故、年端もいかない少年少女がこんなスレた性格をしているのか」と。
いや、理由自体は明確にされているだろう。
過去に事件に出くわした、とか。
あこがれの人物の影響、だとか。
もしくは────「そう生きるしかできなかった」とか。
無論、察しの通りムゲンは三つ目の理由が近い。
……前置きはこれくらいにして、本題に行こう。
詰まるところ、ムゲンは『生まれつき凄まじい力を持っているが故に、自分より圧倒的に無力な他人達に心の底から共感できない』がアンサーだ。
ここだけ聞くと「あぁ、よくあるヤツか」となるだろう。
だがそこで終わらせず、改めて考えてもみて欲しい。
彼らから見ればこの人間社会は、価値観も倫理観の次元が違う、エイリアンか、はたまた化け物ばかりの世界。
それなのにやたら弱く、小さな事でギャーギャー喚く。それはさながら赤子の様でもあり、蝿のようでもある。
そんな生物しかいない世界に放り込まれたとしたら。
果たして、正気でいられるのか。
何より、自分が正気であることを証明できるのだろうか。
✳︎
「く…ッ」
ムゲンから距離を取るアザイ。
しかし彼から追撃が飛んでくる気配はない。
「ムゲン…」
マクナがムゲンに声を掛けようとした刹那。
『総員!カイザ総大将を救出し、撤退せよ!!』
身体強化魔法を用いたのだろうか、空を裂く革命軍側の幹部らしき人物の声。
すると今までムゲン達の周囲で固まっていた革命軍の一般兵たちが慌ただしくカイザの方へと駆け寄る。
数百を超え、千に達さんとする兵士の大群が押し寄せる様は、さながら津波のようであった。
(まずい、このままだとカイザを取り逃がす…!)
「総員、連中を逃───」
ルスガが言い終わる前に、動いていたのはタクウ、ガンバ、アザイ、マクナ、他の熟練の兵士たち、そして。
「指示が遅い」
誰よりも早く、ぼやきながらカイザへと向かう革命軍を味方もろとも血祭りにあげたのはムゲンだった。
気付けば、ムゲンの手には先ほどより遥かに長く伸ばした血染めの剣。
「死ね」
ポツリと呟いたのが聞こえた時には、ムゲンは既に剣を振り終えていた。
ぶしゃあっという一周回って間抜けにも聴こえる音と共に、視界が血飛沫で紅一色に染め上げられる。
敵も味方も、若手も熟練も、少年兵やら魔術師やらなど様々な兵士たちの血が混ざりあいながら紅の雨を刹那、地上に降らした。
僅かに沈黙したあと一人、立ち尽くしていたムゲンは。
「雑魚は散らした、から、カイザを……おぇッ」
ビチャビチャと吐瀉物を撒き散らしながら、剣を引きずってカイザへと足を進めるムゲンの前に、立ちはだかったのは。
「『確保した方がいい』って、アザイちゃんが、言ってた、よ?」
先の一撃を喰らい、脇腹から血をどくどくと流す、マクナだった。
✳︎
意識が浮上する。
周囲は紅に染まり、一瞬自分が地獄にでも落ちたのかと錯覚する。
が、遠くから聞こえて来るような感じだった声が、元々聴いていた声に相応しい感覚に戻ったことで、自らがくたばり損なった事に気づく。
(痛ェな…畜生)
何故か自分は敵の女に庇われているらしいことは辛うじて分かった。
(まだ、終わったわけじゃねぇ、か)
微かに回復した魔力で、気付かれぬように少しずつ痛みと傷を癒す。
(今できるのは)
眼前で対峙する二人の行く末を見届ける事だけだと考えながら。
少し趣向を変えた文体を途中で入れてみましたが、多分あんな感じじゃないとムゲンの在り方のようなものについて触れられないと考えたので……構成力の無い自分が恨めしい……





