血風と邂逅
某ギル祭で忙しすぎる。助けて。
ムゲンとマクナが後衛に向かう中、タクウとガンバ、そしてアザイは最前線で敵の姿を視認していた。
視認していた、のだが。
「…普通、反乱軍って聞いたら白兵戦だと思うんだけどアザイさん」
「そうだな」
目の前にはたしかに敵兵が数多く存在していた。
ざっと数えてこちらとほぼ同じ人数であろう。
が、決定的な違いが一つ。
「城…か?」
敵陣の遥か奥、こちらの砦に負けず劣らずの巨大な鉄の城が空を覆いつくさん限りに聳え立っていた。
その異様に皆の足がすくむ。
(どうする…どうする…!)
ガンバ達が焦り切ったその時。
『総員!!!!!!!!突撃ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
天を衝くような咆哮、いや号令が聞こえた。
言うまでもなく、レオンの声だった。
『おっ、おおおおおおおおおおおおおおおおああおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!』
それに呼応するように、ヤケクソ気味に皆が声を上げて、まばらにではあるが敵陣に進み始めた。
──そして、前線と前線が正面衝突した刹那、混沌が巻き起こった。
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後衛、あのレオンの号令の直後。
(ムゲン、大丈夫?)
「耳がアホみてぇにキンッキンするけど、一応無事」
顔をしかめながらムゲンは無限の魔力に意識を集中する。
無限の魔力。時間経過と術者の感情に比例して増加する、こと「破壊」においては最強の魔力属性…だが。
「あと何時間待てばいいんだろーか」
魔力の増加ペースはムゲンの感情に左右されるところが大きく、実際今もムゲンがローテンション故に、ムゲンの拳は微かな光を放つのみだった。
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アザイは見極めたかった。
反乱軍と王国軍、どちらに正義があるのか。
「……さて」
王国軍の本拠地から少し離れた場所にて、彼女は事前に用意しておいた反乱軍の鎧に着替える。
……どうしても己が正義か、不安だった。
故にそれを証明すべく、未だ多くの情報が与えられていない反乱軍の中枢に独断で侵入することを決意したのだった。
そして、見てはいけないものを見てしまった。
いや、それは見ていけないものとは言ってもそれはアザイにとってはの話であった。
それをムゲン達が知るのはもう少し先の話である。
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「そこを退きなぁァァァァッッッッ!!!!!!」
眼前に迫る騎馬兵。
雄叫びとともに振り下ろされた槍を横に躱し、馬の脚に回し蹴りを浴びせる。
「フッッッッッ」
大きく体制を崩した馬の頭に軽々と飛び乗ると、
「エイッッッッッッッッ」
騎馬兵の顔面に拳をねじ込んだ。
「このガキが!!!!」
騎馬兵のリカバリーに入ろうとする棍を携えた筋肉質な男。
だがタクウは騎馬兵と対峙しながらも、彼の動きを完全に見切っていた。
「スゥゥゥゥゥ…」
倒れ逝く馬の頭部を蹴り、大きく上空へ跳躍する。
地上から迎撃する為に棍を振りかざす男。
そして周囲にはタクウの跳躍に釘付けになった一般兵が数名。
それすらもタクウは想定内。
体を大きく捻り、右脚を振り上げ、
「空牙脚!!!!」
しならせて振り抜く。
遠心力でタクウの体は一気に地上にぶっ飛ぶ。
「自分から突っ込んできてくださるとは有り難い!!!!!!!!」
残念。彼はこの場だけしか目に無かった。それが敗因だ。
「ぐぉっ!!!!!!!」
地上に激突する瞬間、タクウの体に多くの身体能力バフが掛けられた。
その結果、着陸の衝撃波で一気に今度は一般兵がフライ・トゥ・ザ・スカイ。
打ち上げた敵には無論
「っっセイ、ハァァァァァッッッッ!!!!!」
ガンバからの容赦ない打撃と斬撃。
地に足をつけずして彼らは血と肉の雨と化した。
「ナイスだぜガンバ!!」
地中から奇襲してきた魔術師を、かかと下ろしで脳天を破りながらタクウは弟に賞賛を送る。
「兄さんもね!!!」
タクウに返事を返しながら、背後に忍び寄っていた戦闘用に調教された合成獣を爆炎を呼び寄せ、滅する。
それはさながら修羅の如く。
血と拳と槍が、全てを巻き込み、屠っていく。
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砦付近、後衛魔術師部隊。
「『ブラスト』!!!」
マクナが放つは魔力によって生み出された爆風。
戦場を瞬きする間も無く焼き尽くす、どうしようもない終末。
(…ムゲンはまだ時間がかかりそうね)
黒金の城を睨みつけながらマクナは再び杖を構えた。
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それは、唐突に現れた。
「これはこれは…噂に名高いムゲン・シン」
「!?」
後衛の中でも更に後方、ムゲンの眼前に現れた痩せぎすで長身の男。
「おいおい、結界すり抜けてワープで不法侵入とかお前さては早漏だろ」
「何、自らの目的を最優先かつ最高効率で成し遂げようとしているだけですよ」
ムゲンは無限の魔力のチャージでまともに身動きが取れない。
しかも、相手に感づかれない為に警護の人員はほぼゼロに等しい。
「貴方の様な一撃必殺とも言える兵器を見逃す訳にはいかないのですよ…この『サギ・シーー」
男が名乗りを上げようとした瞬間、二筋の銀光がムゲンと男の間に駆け巡った。
「…ゴフッ!!!」
瞬く間に男は全身くまなく紅に染まり、息耐えた。
「怪我はないか。ムゲン・シン」
「…あぁ、どうも。ルスガ…さん」
銀髪、碧眼のムゲンと同じ年頃の少年。
名をルスガ。それ以外の情報、経歴は一切不明。
ただ一つ言えるのは、彼こそがこの戦争の鍵になると言うことのみである。
眠いので寝ますわ。おやすみ。





