嵐の新天地
ムゲン達は地図を頼りにミッドガル王国東部の関所からあたり一面の荒野へと踏み出していた。
だだっ広い荒野にたった四人ぼっちの少年少女。しかし、14歳という思春期真っ只中の年齢の成せる技(?)なのか話題に尽きることはなく、それなりに賑やかな一行だった。
「なんか関所がサイバーチックになってたね…」
出国手続きの様子を盗み見していたガンバがぼやく。何やら謎の魔導端末も利用していた。
「新時代の到来って感じだな!スゲェぜ!!」
「アレも堕天使(天使)討伐後に跡地から見つかったテクノロジーの一つなんだって。多分これから十数年は今まで堕天使(天使)に何十年もの間発展を堰き止められてた分、一気に技術が発達すると思うよ」
「堕天使(天使)ってなんだよ。いや間違ってはねーけど」
歩きと転移魔法を繰り返し続けること数日、ムゲン達は小さな村に辿り着いた。
ミッドガルド大陸北東部。険しい灰色の山脈と柔らかな白い雪、そして。
「おー!」
「わぁ…!」
「これは壮観だね…」
「うっお…こりゃすげぇな…」
空を覆う鉛色の雲。
唸りを上げる疾風。
そして、鳴り止まぬ雷の轟き。
其処は雷と強風が止むこと無い、天災の地だった。
昔から、雷を見るのが好きだ。
「…」
何故かと聞かれても困る。ただ好きだから。そうとしか答えられない。
昔は嵐の日に外に出ては親に叱られた。
(…もういい)
思考を切り替える。
廃墟の村を…かつての故郷を歩きながら、目的地の方向を睨みつける。
(感傷に浸っている暇なんて、ない)
それは分かっている。分かりきっていたというのに。
(この行為はーーただの自己満足だ)
改めて自分に言い聞かせる。
その言葉は清水の様に彼女の心の奥に染み込んでいく。
ややあって、一陣の疾風の後、転移魔法によって彼女の姿は掻き消えた。
目的地、即ち。かつての故郷を滅した『メツ盗賊団』の本拠地である洞窟に向かったが故に。
「ここ…だよね」
ムゲン、マクナ、タクウ、ガンバ達もまたアザイが追っているメツ盗賊団の本拠地の洞窟の入り口に立っていた。
「盗賊団が本拠地にしている洞窟かぁ…嫌な予感しかしないなぁ…」
「嫌な予感しかしなくても、ここまで関わっちまった以上行くっきゃねーじゃん?つーかこのままだとミッドガルに帰れねーし」
決戦か迫っているというのにげんなりとした表情の二人。
「男なら覚悟決めろ!」
そんな二人の背中ににマクナが蹴りを入れる。小さな悲鳴を上げ、よろめきながら洞窟に踏み出す形になった二人…の眼前に。
ドォン!!
『…』
思わず沈黙と共に固まる一行。
ガンバとムゲンの鼻先数センチ前にあったのは…巨大な岩石だった。
「…やっぱり帰ってもーー」
「ダメ」
…のっけから不穏な雰囲気をひしひしと感じながら一行は岩石を迂回して暗黒の洞窟の中へと足を踏み出したのだった。





