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インフィニティ・ワールド  作者: Yamato
疾駆する銀光と鳴り響く剣戟〜雷の彼方に〜
33/79

雪山の攻防

「っとぉ!?」

いきなり切り掛かってくる少女。

「キリュー!戻ってろ!!!」

「了解ィ〜」

ポヒュンと音と共にムゲンの精神内に戻るキリュー。この辺の解説はまたいつか。

「ハアッ!!!」

気迫と共に火炎を纏わせた細身の剣を振るう少女。

「ッッ!!」

それを紙一重で躱す。だが、いつか限界が来るのは目に見えていた。

それでもなお、ムゲンは剣を抜けてすらいなかった。何故なら。

(剣、さっきの雪崩でどこかに落としたーー☆)

なのでムゲンは内心でヤケクソ気味にテヘペロ☆するしかなかった。うん、真っ先に気付けよ。

「っとぉ!?」

何度目かもわからない紙一重の回避。

だがーー

「ハァッ!!!!」

「!!!」

…斬撃からの体制で至近距離での火炎魔法。

加えて、ムゲンの背後には回避出来るだけのスペースは無く、切り立った崖のみが存在していた。

(は、ははは…マジか…)

どう見ても詰みだ。ワープを使い過ぎたせいで魔力もほぼ無い。

「…この程度か」

唐突に、ポツリと少女が呟いた。

ただ、その声音はムゲンを嘲笑うものではなく、純粋に、ただただ純粋に『失望した』というような呟きだった。

しかしーー

「は?」

ーーそれが、ムゲンの琴線に触れた。

何故ならば。

「おう、武器持ってない相手に何イキってんだテメェーー!武器さえありゃあテメェなんざ、ワンパンしてやるわボケがッッ!!!武器さえありゃあな!!!!!!」

ムゲンが単純にガキだったからである。

…というか、よくこの程度の煽り(いや、彼女は決して煽ったわけではないんだけど)にブチ切れる奴がこの作品の主人公を務められるなぁ。


話を戻そう。

ムゲンは田舎のヤンキーレベルのキレ芸を見せると、火炎魔法を発動させた少女に真正面から突っ込んだ。

「…幼稚な」

当然、少女は紅蓮の炎をガラ空きのムゲンの顔面に撃ち込むべく、手を上に掲げる。

「『インフィニティ』ーー」

が、ムゲンはスカスカの魔力でヤケクソ気味に「無限の魔力」を発動させーー

「『ブラスト』!!!!」

拳を介し、魔力をジェット噴射した。

「!!」

ムゲンの怒りの感情によってブーストされた無限の魔力。

そのエネルギー量は火炎魔法とーーほぼ互角。

だがここで「無限の魔力」の特性の一つ。「エネルギーを常に爆発的に増加させることが出来る」

であれば、次に起こる展開など予想が付く。

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ!!!!!!」

紅蓮の炎と無限の魔力の奔流がぶつかり合った、次の瞬間。

「何?!」

紅蓮の炎は一瞬にして閃光の前に消し飛び、そのまま凄まじい魔力を保ったままーー否、更に勢いを増しながら背後にいた少女へと魔力の奔流が押し寄せた。

「ぐっああああああ!?!!!???」

爆風が辺りに吹き荒れたーー。


「いやぁ、感情的になるって恐ろしいことだねぇ」

少女の襲撃から三日後。ガタゴトと音を立てながら荷馬車は白銀の山岳地帯から抜け出していた。

襲撃によって被った損害は決して小さい物ではなかったが、それでも黒字が出る分の薬は皆破損も無く、無事だったので一安心だ。

…そんな中、あの中年の傭兵が馬上で携帯食(さまざまな魔物の肉と穀物を乾燥させて押し固めたもの)を食べながらポツリと呟いたのが先程の台詞である。

「そ、そうっすね…」

ムゲンが馬車の屋根から引きつった笑みで返事を返す。

で、何故そんな笑みを浮かべる羽目になっているのかというと…

「まさか、お前さんが剣を失くして、あの崖っぷちで『無限の魔力』を解放した挙句、道端でグースカ眠ってたんだからなぁ…」

『無限の魔力』をロクに魔力の無い状態で放った結果、案の定気力を使い果たしたムゲンは意識を失っていたのだ。

そこに、運良く少女を撃破した際の爆音を聞き付け皆が引き返して来たのだった。

ちなみにだが、ムゲンの剣はあの後、剣そのものに宿った魔力を頼りになんとか雪の下から探し当てた。キリューが。

「はい…もう…反省してます…」

柄になく萎縮するムゲン。しかし、中年傭兵はがっはっはと笑い飛ばし。

「いや、責めちゃいねぇ。むしろあの小娘をほぼ無傷で生け捕りに出来たんだろ?商人さん方には申し訳ないが、俺たち傭兵はこれでボーナスが貰えるんだ」

満足気にニヤニヤしていた、が。

「ケッ!ムゲンと俺たちを雪崩に巻き込んで報酬独り占めしようとしていたクソ野郎が何言ってやがるんだ!!!」

「わっ!バカ兄!!それは言うなって…」

タクウとガンバの怒号が空気を裂いた。

だが、中年傭兵は悪びれもせずに一言言い放った。

「傭兵なら報酬を優先するのは当然だろ?」

と。


悲鳴と業火。

黒煙と何かが焼ける匂い。

地獄というものが存在するならば、私からしてみれば眼前に広がる光景はまさにそれだった。

「ーーーー!!!」

誰かが何かを叫んでる。

「ーーーー!!!!!」

誰かが何故か笑ってる。

「…」

そして。

私は。

あの時。

何をしていたのだろう。


「…」

薄暗く、湿った木の匂いと車輪の音が一斉に私の脳内を満たす。

不快感を感じて軽く身じろぎすると腕と足に魔法で作り出された枷が施されていたことに気付く。

そして、武器が手元にないことにも。

「…」

だが、然程焦ってはいなかった。むしろ現状は幸運ともいえる。

ムゲン・シン。

タクウ・レブ。

ガンバ・レブ。

マクナ・メリッツ。

遂にあの堕天使を討ち倒した少年少女のうち、三人に出会えたのだから。

「…」

ならば次にする事は決まっている。こんな所で手間取ってるわけにはいかない。

手足の枷を身体強化魔法で無理矢理破壊する。すぐ気付かれるであろうが、さしたる問題ではない。

「……よし」

全ては私の復讐の為に。

その為なら堕天使にも、そしてそれを討ち倒した彼らにも私は縋ろう。

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