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インフィニティ・ワールド  作者: Yamato
少年の旅立ち~堕天使討伐編~
30/79

無限の一撃

「…成る程」

再び納得したように両断された腕をムゲンたちから少し離れてところから見つめている。

「成る程成る程喧しいぜ!!」

距離を詰めるムゲン。

「このままもう一本の腕も!」

剣を先程と同じく振り上げーー

「甘い!」

ーー素手で弾かれた。


だが!


「刃物に素手で直接触るなんて、堕天使とやらの知能指数もロクなものじゃないな!」

どろりと溶ける、ムゲンの剣。

「なっ!」

それは堕天使の腕に液体状になって絡みつく。

腕を封じられ、もがく堕天使。

「くっ!」

そこへガンバが、一閃!

「はぁぁぁぁっっ!!」

鮮血を散らし、宙を舞うもう一本の腕。

そして、大きくよろける堕天使。

「兄さん!マクナさん!」

「了解だぜっ!」

「ええ!」

マクナが自らの血をつけた紙に魔力を込め、堕天使に投げつける。

すると、刹那、ひらひらと飛んでいた紙は瞬きする間もなく、さながら弾丸の如き速度へ変貌し、堕天使の腹に紅の孔を穿つ!!

「人間風情が…ッ!」

涼しげな表情、態度、そして体制を瞬く間に崩される堕天使。

(…行ける!)

ワープ魔法でマクナの背後に待機していたムゲンが、スライディングで堕天使の足の間を潜り抜け、コンマ数秒で堕天使の後ろに回り込む。

そしてハンドスプリングで飛び起き、剣を抜刀してーー


「…天使とは、天、即ち神からの使い。

ならば、たかだか人間、それも12歳の小童達に押し負ける道理が何処にある?」


「ーーーーーーえ?」

その言葉に反応した時には遅かった。

一瞬にして閃光と爆風がムゲン達の意識を掻っ攫っていった。


「…やり過ぎてしまいましたか」

最早城も何も無い。辛うじて城壁が残っているのみ。

そして。

「マジで殺りにきやがったナ!オマエェェェェ!!」

ぽひゅ〜んと、間抜けな音を出しながら瓦礫の中から堕天使に突貫したのは…言うまでもなく、キリューである。

「…妖精ですか」

「そのとーりダ!!」

顔面数センチで睨み合う両者。

しかし、両腕がない女と、ゆるキャラじみた何かしか存在していないので、絵面がシュールすぎてシリアスも何も無い。

先に沈黙を破ったのは堕天使だった。

「マジで殺るも何も、貴方も知っているでしょう?『あの少年達は危険すぎる』と」

「そりゃネ、あの洞窟に数千年もいれば嫌でも知ることになるヨ…でもネ」

キリューが呆れ気味に答えた。

しかし。

「それだったら、もっと早くに、確実に殺りに来た方が楽だったじゃないカ?堕天使らしくこう、大陸ごと消し飛ばしたりとかナ」

そう、何故この様な回りくどい戦法をムゲンに対してとったのか。

「情報を周りの大陸に拡散させないためにそこいらからかっぱらった宝物使って周りの大陸の宿やら何やらを豪華にしたり…」

そう。港というものはありとあらゆるものが交易される。金、銀、食物、そして『情報』。

いわば、口止め料である。

「...」

堕天使は何も答えない。

「わざわざ『らしく』するためにこっそり生贄を寄越せと脅したりナ」

これもあの港の人々が暗い顔をしていた理由だろう。

「…」

再びノーコメント。

「と言うか、最早今更な感じだケド…オマエ、というカ、オマエらの目的は世界の破壊でも何でも無く、多分『ムゲンの抹殺』ダロ?」

単刀直入に言うキリュー。

「えぇ、その通りです」

即答する堕天使。

「そしてそれを指示したヤツ、理由は当然…」

ガラリと瓦礫が崩れる音。

「ーーーオレの魔力が理由なんだろ?」

そこには。

「ヘヘッ…そんなにすげぇのかよ、ムゲンの固有魔力ってヤツは…」

ボロボロのタクウ。

「だからこそ、始末に神の使い、天使が来たんだね…」

血塗れのガンバ。

「本物の堕天使なら、もっと堕天使らしく消しに来たでしょうけどね…超遠距離からの一斉射撃とか」

マクナは障壁で無事だったようだ。

そして皆が抱いている堕天使像がロクでもないイメージであることが確定した。

「…まだ立ち向かいますか?」

呆れ気味に堕天使、否、「天使」が問う。

「当然!!」

ムゲンは剣を抜くと、横に倒した8の字…即ち、無限を表す記号の軌跡に剣を振る。

「ムゲン!!それってーー」

そう、マクナは知っている。

幼い時の記憶で、薄れゆくモノだったとしても、彼女は知っている。

「…やるっきゃ、ねぇよ」

ぽつりと呟いた、たった12歳の決意の言葉。

それを肯定するかの様に、ムゲンの剣に光が灯るーー!


ムゲン・シンの固有属性魔力、「無限の魔力」。

これは字面通りムゲン自身に魔力が無限にあるというわけではなく、分かりやすく言い換えると「無限属性」の魔力ということだ。

そして、無限ということは文字通り、限りが無いということ。

では何が限り無い魔力なのか?

その答えは。

「…聞かれてねぇけど教えといてやる。オレの魔力属性の『無限』ってのは、それはメチャクチャ分かりやすいチートだ」

それは自分自身に言い聞かせる様に。

「何せ、『魔力を無限に増幅出来る』んだからな!!」

次の瞬間、一気に剣に宿った魔力光が昂ぶった。

「クッ!」

一気にムゲンに光弾を放つ天使。

「させるか!」

「全部まとめてお返しするよ!!!」

それを全てタクウとガンバが叩き落とす。

「小癪な!!」

ムゲンに対して距離を詰める天使。

しかし、そこにいたのはーー

「ムゲンだと思った?残念!マクナちゃんでしたー!!」

杖をしっかりと天使に向けて構えたマクナ。

「バインド!」

マクナの杖から光の縄が伸び、天使へと向かってゆく。

「効くか!」

それを弾き飛ばそうとする天使。

ーーマクナの持つ単純な魔力量は恐らくムゲンを遥かに上回り、それどころかこの世界ではトップレベルの量を保持する。故に、天使への生贄にされかけた。

そして、たった今マクナが放ったバインド魔法の強さは込めた魔力量に比例し、その込められる魔力量は当然、術者当人の魔力容量に比例する。

「なっ!?」

天使は縄を弾き飛ばすどころか、縄に絡みつかられ地面に這い蹲る様な格好になった。

「この程度の束縛魔法!!!」

…が、流石は天使。瞬く間に再生させた腕で縄を千切っていく。

「こんのぉ…!」

マクナも粘るが、これでは時間の問題だろう。

「ウラァァァ!!!!」

「ハァァァァ!!!!」

そこで天使に加わる打撃と斬撃。

そう、タクウとガンバだ。

「逃すかオラァ!」

さらにタクウの身体強化からのかかと落とし!!

「ぐっっ!?」

脳天に踵を斧の奴に振り下ろされ、地面に顔が激突する天使。

その反動で顔が地面から離れた所にーー

「次ッ!!」

ガンバの槍の石突きによる打撃が眉間に加えられる!

そして。

「喰らえ…!!」

天使は先ほど、人間の12歳の少年に負ける道理は無いと言った。

しかし、天使は致命的に見誤っていた点があった。

それは、その負ける道理がない相手というのが、『ただの平凡な子供だった場合』に限られるという点。


ならば、当然『異常で非凡な子供』だった場合は「負ける道理も有る」ということだ。


…最後に。

魔力というものは術者の感情にも左右されやすい。己が感情が高っていれば猛っているほど、より力強く、激しく炸裂する。


故に、ありったけ自分を鼓舞させ、12歳の少年のセンスからしてみればとてつもなくカッコつけた感じでーー吠える!!!

「『インフィニティ・ブレイク』ーーーー!!」

それは至極単純な必殺技。

極大の『無限の魔力』のエネルギーを纏わせた、ムゲンの渾身の斬撃が天使に叩きつけられる!!!!

「人間の小僧ごときがッッ!!!!」

それを目の前に展開した魔法陣による極大の熱線で相殺しようとする、天使。

しかし、その選択は誤りであった事にすぐに気付く。

「なっ…!?」

それは、最初は僅かな変化だった。

ムゲンの剣に宿る魔力が少し大きくなった、と認識した刹那。

1の魔力が倍になり、そのまた倍、更に倍、さらに数十倍、数百倍と果てしなく強力になってゆく!!!!

「うおおおおおおおお!!!!!」

「ッッ!!」

天使も魔力を上げて抵抗するが、いかんせん気付くのが遅すぎた。さらに言えば、魔力の上がるスピードも激情によって加速されたムゲンの『無限の魔力』の方が遥かに速かった。

「くたばれェェェェェェェェェェェェ!!!!!!」

無限の魔力の光はより激しく輝き、ムゲンの剣から放たれた一撃は天使に到達した!!

「がががががががカゴががががギガァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!」

そして、凄まじいスピードで膨大なエネルギーを叩き込まれた天使の身体は一気に空に跳ねあげられる。

「オラァ!!!!!炸裂しろ!!!!!!」

ーー無限の魔力の更なる特徴。術者の意思により、無限の魔力によって蓄積された膨大なエネルギーを『消滅』させるか『炸裂』させることができる。

「ムゲン!!!伏せて!!!!」

ムゲンが地に伏せた刹那、大空は瞬時に閃光に覆われたーー!


数日後、宿屋にて。

「…すっげぇ」

ムゲンの目の前に山高く積まれた特産品、財宝、その他の報奨金。

「うっひょぉぉぉ!!!」

そこにダイブしようとするタクウ。

「兄さん落ち着いて!!!」

それをすんでのところで止めるガンバ。

「本当にありがとうございました…あの堕天使を名乗る者…天使に我々はこの島に閉じ込められ、労働を強いられていたのです…」

ミッドガル王国の国王からお礼を言われたら、超巨大な街全体でお祝いのカーニバルをしたり…

さらに、堕天使が占拠していた城の地下から大量のロストテクノロジーと思われる数々の品が残っており、それに関する研究も凄まじいスピードで進んでいた。それは堕天使に支配され、奪われた時間を取り戻すどころか、おつりがくるほどのものだった。


歓迎され、祝福され、2ヶ月が経った。

「そろそろ帰るか」

そんなムゲンの発言により、ついに島に帰ることとなった。

「そうだね。みんな心配してるだろうし」

「平和になったからまたいつでも来られるからね」

「来たくなったらくりゃいいな!!」

荷造りしながら、そんな事を話していた。


「まぁ、ご苦労だった」

遥か彼方。人類にはおよそ到達不可能な時空の極点ともいうべき領域。

ーー其処は神界と云う。

そして其処に鎮座する者がいた。

「申し訳ございません…」

ムゲンに木っ端微塵にされた筈の天使がそこで鎮座する者に傅いていた。

「いや、こうなることは当然解っていたからな。気にしなくていい」

金髪、金眼。男にも見えるが、女にも見える極めて中性的な者がそこには居た。

そして、一呼吸おいて天使に問うた。

「疑問があるな?言うがいい」

間髪入れずに天使が問う。

「はい。何故、『全知全能』たる貴方様がこの様なマネを?」

全知全能。神界たる此処において、その発言が意味するのは唯一無二にして絶対的な絶望、または希望。

「成る程。確かに私はこの結末が当然視え、そしてその様な操作も出来た。だがな…」

酷く憂鬱そうに嘆息した後、こう言い放った。

「『全知全能』であるということは『無知無能』であるということなのだよ」

その存在の名は至極単純。

ただ一つの漢字で表す事ができる。

ただ一文字。「神」とーー。



「よし、じゃあここでお別れか」

ムゲンとマクナ。そしてタクウとガンバ。森と村の分岐点に2組は立っていた。

「まーいつでも会えるし、会いに行くからまたすぐ会えるけどな!!!」

別れの空気を微塵も感じさせないタクウ。

「そうだけどね…でも、こんな大冒険は二度と無いと思うよ」

ガンバは僅かに寂しそうにしながら、ムゲンとマクナに微笑んだ。

「うん、そうだね」

マクナも微笑み返す。しかし、それは寂しそうにではなく、明るい笑みだった。

「…じゃあな!」

「またねー!」

ムゲンとマクナがテレポートを開始する。

「おう!!」

「…またいつか!!」

それを見送る盗賊兄弟。

そして数秒の後、二人はその場から魔力の粒子と共に消え失せていた。

…僅かな沈黙の後、ガンバが決意の表情で切り出した。

「…兄さん、僕は盗賊をーー」

だが次の瞬間。

「ああ、やめるか!」

タクウによってそのしんみりとした流れはぶった切れた。

「…兄さん…いや、言いたいことはそれだったけどさ…少しくらい空気を…」

ガンバががっくりした様子で森へと歩きだしてーー

「なんだよー!いいじゃねーかよー!!」

タクウもその後を追いかけた。

その様子を見ているのは、空に浮かぶ満月のみーー。


「ただいまー…」

「ただいまでーす…」

その頃、村に着いたムゲンとマクナ。

待ち受けていたのは。

「おかえり、ムゲン!」

「…おかえりなさい」

ムゲンの両親。

「おかえりなさい」

「よく帰ったねぇ」

三角木馬…村長夫妻。

「よう、ご帰還かい?」

師匠こと、ブレイドだった。

「おう、きっちりマクナは連れ戻しましたよ。この通りに」

ムゲンは少し照れ臭そうにマクナを前に出させた。

「この度はご迷惑をお掛けしました…」

マクナもおずおずと村長夫妻達の前に出る。

「全く、マクナを連れもどせつったのに、堕天使…いや、天使までそのままぶっ倒してくるとはなぁムゲン」

呆れ気味にその様子を見守るブレイド。

「でも、ムゲン…あの子、いつも退屈そうにしていたのに」

ムゲンの母がブレイドの近くで呟くように、穏やかな表情で語る。

「あー、またどっかに旅したいなぁー」

「気が早いよ!ムゲン!」

夜も更けているというのに騒ぎ合う二人を見ながら、少し微笑む。

「今じゃあんなに楽しそうですから、今回の旅はきっといい経験になったと思います」

「…そうならいいんですけどねぇ」


こうして、ムゲンの最初の旅は穏やかに幕を閉じた。

しかし、彼が敵に回したのが、途轍もなく強大なものである事に気付くのはまだまだ先の話である。




インフィニティ・ワールド第1部、堕天使討伐編、了

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