朱に交われば赤くなる。ならトンデモ師匠に交われば……
「あー眠い」
昨日の家族会議で母親を説得した後、一晩かけてムゲンは旅の荷物を一人で準備したのだ。
もうすでにムゲンの部屋の唯一の窓から見える空は白み始めている。
「これが旅立ち、か」
ムゲンは窓からの景色を一別しながら呟くと、師匠に挨拶をするべく自分の部屋からワープした。
「おう、来たか」
ムゲンに話しかけながらいきなり光線を放つブレイド。
「チッ、寝起きドッキリしてやろうと思ったのに」
そう言いながら光線を反射魔法でそのままブレイドの方に跳ね返した。
ひらりとブレイドはそれを躱し、爆音とともに小屋の約三分の一が黒こげになった。
「お前この家弁償させるからな?覚えてろよ?」
「いや自分で出した魔法だろ」
「反射して俺の家を黒こげにしたのはお前だ」
「俺が反射できるような魔法使う師匠が悪い」
いつも通りの会話。
「ああ、言い忘れていたが」
「?」
ブレイドはニヤッとした。
「ワープ魔法は『よっぽど』の時以外使用禁止な」
「えー」
めんどくさそうな顔をしてうなだれるムゲン。
しかしすぐに顔を上げた。
「オイ、その『よっぽど』の判断基準ってさー、人それぞれだよな?」
「考えるな、感じるんだ」
「ほざけ」
ため息をついた後ムゲンは自分の荷物を担ぎ上げると、玄関の方に向かった。
「行って来るぜ」
「おう、色々なものを見て、聞いて学んでこい!ついでにマクナちゃんの救助!」
「優先順位が逆!」
一頻りキレ芸を見せた後、ムゲンは頭をボリボリ掻いたと思った瞬間そこから姿は消えていた。
「もうワープ使ってんじゃねぇか」
ナイスツッコミ。