曇天
「…で?散々体を拭いてさぁ…俺をどうするつもりだよ?」
身体を一しきり拭かれたムゲンは椅子に座らせられ、不服そうに堕天使を見上げる。
「体を拭いたのは私が潔癖症なので悪しからず。そして、その後はどうするも何もありません」
「全力でこの島、否、この世界諸共消し飛ばします」
そんなこの作品の中でぶっちぎりの不穏発言を堕天使がぶちかましたその数分後、ムゲンと分断されたタクウ達は鉄の城…の城下町に入っていた。
「うっわ…!」
城下町に入る為の検問をやや適当に済ませ、関所を抜けた直後に広がった景色は。
「…酷いや」
だだっ広い大通り。
鉄の塔が辺りに建てられ、空は魔力煙でどす黒く曇り昼から夜かも判らない。
人々の表情も暗く、俯いて歩いている。
「なんでこんなことになってるの…?」
マクナが疑問を零したコンマ数秒後。
「ーー悪いね、迎えが遅れちまったァ」
後ろには金髪の男ーー堕天使が立っていた。
さらにその数秒後。
「ヒッ、ヒィィィィ!!!」
「お、お助けを!どうか私だけは!!!」
「慈悲を!!慈悲を!!!」
阿鼻叫喚が展開されたのだった。
しかしそれを気に留めることなく堕天使は続けた。
「ここではまともに話せねェ、赤い髪のガキンチョと合流してからこちらの事情を説明しよう」
城門までワープで一気に移動し、そのまま城内を歩いて行く一行。
真っ直ぐ広い一本道を歩いているところから、どうやら玉座の間まで歩いているらしい。
そして続く沈黙。
「…ムゲンを捕らえているのね?」
それを打ち破ったのはマクナだった。
「ああ」
そう一言だけいうと歩き続ける。
(…今のところは何も教える気はないのね…ムゲン…!)
歩く。
(…ムゲンなら大丈夫だな!アイツは色々とスゲーし)
歩く。
(ムゲンはどうするんだろう…僕たちもどうするか決めないと…)
大きな扉が開いた。
「ムゲン!!」
そして眼前には、棒立ちしているムゲン。
「…随分と遅いお着きで」
ムゲンはダラダラと手を振る。
「んだよ!心配させんなよ!!」
ニカニカ笑いながらタクウが近づこうとしたその時。
「来るな馬鹿!」
ムゲンの怒号がタクウに対して発せられーー
「じゃあお前ら、死んでくれ」
堕天使の左手から放たれた爆風が城の上半分を丸ごと吹き飛ばした。
「…こざっぱりしてしまいましたね」
『元』玉座前にてぼやく堕天使。
玉座は黒焦げになり、壁も今にも崩れそうだ。そして天井、即ち城の上半分は消し飛び鋼色の空に覆われていた。
気づけば堕天使はあの女性の姿へと変貌していた。
「全く、何故人間という生き物はこうもーー」
服と髪についた埃を払い、頭を軽く押さえながら嘆息する堕天使の視線の先には。
「ーークソッタレが」
マクナとムゲンの張った結界の中で血塗れになっている一行が。
「みんな…無事…?」
杖で辛うじて立っているマクナ。
「少なくとも、死んでは、いないぜ」
至近距離で爆風を受けながらもなんとか耐えたタクウ。
「なんとか…」
咄嗟にマクナと共に距離を取ったガンバ。
そして、ムゲンはーー
「フゥゥゥ…」
全員の中で最も派手に血塗れになりながらもしっかりと立っていた。
「…成る程、流石ですね」
堕天使はそれだけ呟くと。
「では二撃目で死んでもらいましょう」
再び魔力を掌に集中させはじめt『やらせるか!!』
誰一人として瞬きする間も無く、迸る深紅の一閃が、堕天使の腕を両断した。





