天使
「ッ!!」
宿屋が吹き飛ぶ。その風圧でムゲン達も凄まじいスピードで吹き飛ばされる。
(なんだよアレ…なんなんだよアレ!!!)
理解が追い付かない。宿の食堂であからさまにおかしいーー何がおかしいと聞かれても上手く言葉にできないーーそんな魔力を放つ男に話しかけられ、直感的に彼らは察した。
『コイツは只者ではない』と。
しかも、その直後にコレである。
混乱する頭を無視して、空中で木の葉のように舞いながら姿勢を整えようとするムゲン。
「ーー遅いです」
遥か上空の暴風に煽られる彼の耳にそよ風の様にその声は届いた。そして次の瞬間。
「ッッ!?!?」
ゴンという鈍い音と衝撃を感じた瞬間、目の前は黒一色になった。
「お目覚めですか?」
「…お目覚めです」
意識を取り戻せば、目の前に先程自分と宿屋を吹き飛ばした後、追撃を加えてきた金髪の女性。改めて見てみると
豪華絢爛な部屋。
そして部屋に満ちるむせ返る程の濃密な魔力。
「では良かったです」
テキパキと紅茶と手拭いを用意する女性。
しかし、この部屋に満ちる魔力は先ほど体験したばかり。
「…それが本当の姿か」
「はい。まぁ、あの姿は『もう一つの本当の姿』ですが。そして私は『堕』天使では有りませんが、地上の人々から見れば私と行いは堕天使とも言えるでしょうね」
業務口調なのか、私情を交えた声なのかは判らなかった。
「では、お身体を拭わせていただきますので、服を脱いで頂けませんでしょうか」
そして、突如ムゲンに対してラノベ展開を強いる堕天使。
…信頼するかはさておき、こんな文章を作者は好きで書いているわけではないと一応言わせていただく。
が、しかし。
「敵に対して丸腰になるわけねーだろ」
そんな作者の杞憂は物の見事に消え去った。
そして、彼女を12歳とは思えない眼力で睨みつけるムゲン。
「…では」
すっと指で十字を軽くきる堕天使。
「ーー?!」
一見すれば、それは極々自然な動作。
しかし、それが異常である事がムゲンにははっきりと理解できた。
何故なら。
(なんで勝手に服脱いでんだよ俺!!!)
そう、ムゲンは勝手に服をどんどん脱いでいた。
恐らく、堕天使に魔法で身体を操作されているのだろう。しかし、それ自体はブレイドとの修行でやられたこともある行為だ。
ムゲンが驚愕、戸惑いを隠せない理由はーー
(しかも、まるで、抵抗出来ない!!!)
よくアニメである、『ギギギギ』といったぎこちない動作ではなく、滑らかにムゲンを操っている。
つまり。
「貴方程度の魔力抵抗では私の魔法に対抗など出来ませんよ」
ということだ。
場所は移り。
「いつつつ…」
タクウとガンバ、そしてマクナはそろって別の場所に吹き飛ばされていた。
「ここは、何処だ…?」
「…多分、敵の本拠地の近くだと思うわ」
幸いにも全員無事に意識を取り戻していた。
そして。
「確かに、そうだね…」
目の前には鋼の城がそびえていた。





