邂逅
「で、ここが新大陸ですか…」
出発から早半日。
船から降りる時に見えた景色は、こじんまりとした港に、その先には見渡す限りの荒野。
そしてーー
「ーーあの城」
マクナがすっと指を伸ばす。
その荒野の彼方に砂漠の蜃気楼のように揺らいで見えるのは、巨大な機械を連想させる灰色の城と城下町だった。
「なんつーか…」
タクウが露骨に嫌そうな顔でベッド…の様な石の台に寝転がる。しかし、この宿の部屋の間取りからにして明らかにそれはベッドそのものだろう。
「天と地の差ってヤツだね…」
宿に着いた直後に出された食事も貧しさを感じさせるものだし、この宿は全体的に貧しいものだった。
「なんでこんなに向こうと差があるんだよ!」
ムゲンもヤケクソ気味に怒鳴る。
「うるせーぞ!!」
と、隣の部屋から怒鳴られた。壁もかなり薄いらしい。
「…取り敢えずみんなで色々調べてみよう」
そういうと、マクナは立ち上がって部屋の外に行ってしまった。
『みんなで調べてみよう』と言われたからにはムゲン達も当然部屋の外に出る事になったのだが…
「なんか、みんなテンション低いね…」
廊下ですれ違う人々はみな一様に暗い顔をしていた。
「そりゃあんな飯出されたらテンションも低くなるな…」
「少し黙れバカ」
ムゲンでも流石に食事の内容だけがこの暗い空気を作り出しているとは思っていない。
何か、別の要素があるのだろう。
宿の中で最も人が集う場所の一つ、食堂。
「…テンション低いね」
マクナが呟く。
夜になり、夕食を食べる人々が数十名程居るが、全員表情は暗い。そして、普通の宿ならばよくあるあの喧騒もまるで無い。
「情報収集もクソもないだろこんなの…」
ムゲンがため息混じりに呟く。
すると。
「ほう?そこのお子様達は情報が欲しいのかィ?」
何やら胡散臭そうなやつに目を付けられたのだった。
「こういう宿屋ってのはオレたち情報屋のいい餌場でね、お互いに情報を共有したり、客に買わせたりしてんのさァ」
ひとりでにまくしたてる自称情報屋の男。安っぽい話し方だが、その奥には歴戦の勇者然とした何かがあった。
「えっと…じゃあ、この宿屋の皆さんがテンション低めな理由も…?」
おずおずと尋ねるガンバに対して情報屋は。
「おうともガキンチョォ!何のためにオレがここにいると思ってんだィ?」
ばんばんとガンバの肩を叩く男。
今更だが、この男は酔っているらしい。酒の匂いが漂ってきた。
「じゃあ、その情報を買ーー」
タクウが言いかけたその時。
「いや、買わなくていいだろ」
ムゲンが遮った。
「そうね…堕天使さんから得る情報なんて、信用ならないもの」
マクナも情報屋に対してとんでもないことをのたまったのだった。
周りの人々はムゲンたちの会話を聞いていないのか無反応。しかし、ムゲン達は一気に殺気立った。
「うぉいうぉい!!あの堕天使が俺の訳ねーだるぉーがァ」
ゲタゲタ笑う男。
「そんなアホみたいな魔力をダダ漏れにしておいてよく言えるよな」
獰猛な笑みを浮かべるムゲン。
その次の瞬間、宿屋は吹き飛んだ。





