兄弟も旅立つ!
「・・・へぇ」
ムゲンはゆっくりと立ち上がり、盗賊兄弟を睨みつける。
「二人の実力が不安なら試すだけ試していけい!」
「いや、そーゆー問題じゃないんだけどな・・・」
そこまで言ってムゲンは気付く。
今、盗賊兄弟の祖父は「実力」と言った。ならば彼らは今までムゲンに本気を、実力を発揮していない。
つまり、先程の盗賊兄弟達はあくまでムゲンから金目のものを盗るために手加減していたということだ。
それは裏を返せば今はそうではないという事だ。
(あー、つまり全力を見せろと?)
「盗賊兄弟、兄のタクウ・レブ!」
「同じく、弟のガンバ・レブ!」
タクウ、爪を構える。
ガンバ、槍を構える。
ムゲンはーー
「チッ、面倒クセェ・・・さっさと終らせるぞ!」
いきなり後ろ、つまり縁側から外に飛び出した!
呆気に取られる盗賊兄弟。
しかし、何時までも突っ立ってる訳にはいかない。
「あんのヤロー!」
「追おう!兄さん!」
二人も縁側から飛び出した。
縁側に残されたのは、盗賊兄弟の祖父ーー名前を「ウノ・レブ」というーー。
(お前達はきちんと見てくれ。『世界』というものを・・・)
彼は祈るように目を瞑り、酒を呑んだ。
「何が『さっさと終わらせるぞ!』だ!いきなり逃げやがって!」
キレ気味に怒鳴るタクウ。
『馬鹿兄!場所を教えてどうするんだよ!』
ガンバがテレパシー魔法でタクウを叱る。
深緑に染まった森を駈ける、二つの影。
(クソォ!全く追いつかねぇ!)
ムゲンが逃走し始めてからまたほんの数分しか経っていない。盗賊兄弟も少し出遅れたが、それでも僅かなものだ。
盗賊達も焦りだす。
「早く見つけねー・・・とッ!?」
その焦りに応えるかの様に大量の魔力の光弾が飛んでくる。
その一つにタクウが激突した。
『兄さん!』
「先行ってろ!回復したら追いつく!」
長年連携を取っていたのだろう。躊躇いも無くガンバはタクウをその場に置いていった。
そして、静寂が残った。
「・・・チッ」
回復魔法はタクウの得意分野ではない。少し時間が掛かってしまう。
(なんで魔法なんてモノが存在するんだよ・・・クソッタレ!)
「・・・そりゃあ、分かったら苦労しないっての」
突如、タクウの身体が凄まじい風圧と共に、宙に浮いた。
「!?」
『投げ飛ばされた』という事実を受け止めるまでの僅か数秒が、隙になった。
「オラァ!くたばりやがれェェ!!」
拳に魔力を纏わせて、タクウの腹に叩き込んだ!
「ガッ・・・!」
ガクリと力が抜けるタクウ。
「見つけたぞ!ムゲン!!」
しかし、安心してする間も無くガンバが槍を構えて突進して来た!
「んな分かりやすい攻撃、効くかッ!」
ムゲンはガンバの後ろにワープ魔法で回り込むと、剣をバットに変えて意識を飛ばす程度の威力で殴った。
「グッ・・・」
軽く呻いて動かなくなるガンバ。
「おめーらさ・・・もっと魔法の勉強しろよな〜」
「ふむ、遅かったのぉ」
再び、縁側にて。
気絶した盗賊兄弟を担いだムゲンに語りかける。
「うるせー、不意打ちかます為にどんだけ身体能力強化魔法掛けたと思ってんだ」
ムゲンが先程圧倒的な力で盗賊兄弟をねじ伏せられたのは、強化魔法のお陰のようだ。
「で?どうするかの?連れていってくれるか?」
二人を肩から降ろすと、少し間を空けてムゲンは話し出した。
「・・・この状況で断れる程俺は馬鹿じゃねーよ。それに正直言って、もしも俺があいつらから逆に不意打ち食らってたら、ここまで楽に勝てなかったぜ」
「つまり、『認めた』ということかの?」
ムゲンは溜息を吐くと頷いた。
「あぁ。良い囮になりそうだ」
次の瞬間、ムゲンにハリセンがぶち当たった。
「囮に使う前提で仲間にしようとするなァ!」
「こんな人と旅なんてしたくない・・・」
散々な評価を受けるムゲン。
まぁ、それは妥当過ぎて最早感動できる。
「テメーらァァ!ぶっ潰すぞゴルァァァ!」
ハンドスプリングでムゲンが立ち上がると一目散に駆け出す兄弟。
「ふふっ、彼ならうまくやってくれそうじゃの」
一瞬呆気に取られれたが、すぐに微笑んで呟く。
「爺ちゃん!」
「行ってくる!」
「覚えてろよ!クソジジイ!!」
準備もろくにしてないのに旅立つつもりのようだ。
しかし、祖父は止めない。
むしろそうしてほしいようだ。
手を振りながら彼らは遠ざかって行く。
旅は道連れ、世は情け。
その旅の終着点は何処なのか。
それはまだ誰も知らなかった。





