カリスマとはこの世で最も儚い物である・・・と思う。
盗賊兄弟しか住んでいない筈の森に現れた老人。
「ほうほう・・・」
ムゲンの剣を興味深そうに眺めている。
そんな老人にムゲンがかけた第一声はーー
「・・・どちら様?」
で、あった。
「ふむ、自己紹介がまだじゃったな」
顎から生えた白く長い髭を撫でながら老人が呟く。
「いや、それ以前に色々と疑問があるんですがそれは・・・ま、いっか」
老人の出す独特な雰囲気に呑まれるムゲン。
「ワシの名前は・・・・・・『ああああ』じゃ」
「偽名じゃねーか」
「よくぞ見破った」
「考えた時間の割にど直球すぎるだろ!そんな名前は今時ド◯クエのネタネームでも使われねぇよ!」
ムゲンのツッコミが炸裂するのを合図としていたかのように、空気と同化していた盗賊達が口を開いた。
「何やってんだよ、爺ちゃん!」
「もう!茶々入れないでってあれ程言ってるだろ!?」
「いや、孫達の言動は常に気になるもんじゃろ、それと好きな歯磨き粉の味」
「なんでそんなに局所的なんだよ」
辺りにはもう何というか、ほんわかした空気がただよっていた。
それにムゲンもこの老人の正体は盗賊兄弟の祖父というなんか大切そうな情報をもたらされておきながら全く興味を示していない。
「まー、折角の客人じゃ。『もてなして』あげなければ」
ようやくムゲンも相手の悪役的な発言に警戒心を持ったようだ。
「・・・へぇ、どんなもてなしをしてくれるんだ?」
「ご飯とお風呂、しかも温泉で源泉掛け流し」
旅館か。
「マジか」
「マジじゃ」
即座に釣られたムゲンであった。
ちなみに、ムゲンの名誉の為に言っておくと彼は村を出る前から1週間程風呂や水浴びなどをしていない。
・・・面倒くさがりめ。
「取り敢えず、孫達の拘束を解いてくれんかの?」
「いや、保険としてこのままにさせてもらうぜ」
「ええ〜」
「そんな〜」
駄々をこねる盗賊達。
最早、一応主人公を追い詰めたというカリスマ補正は綺麗さっぱり無くなったようだ。
「さあさあ、こっちじゃ」
数時間後。
ムゲンが彼らの家に着いた頃にはすっかり陽は沈んでいたーー
続く。





