皇帝、不良になります!?
あの、眼鏡の彼女、天然さんだったけど可愛かったなー。
なんていうか、あのままお持ち帰りしたかった……。
でもまあ、今はもういないし。
そう! 今の状況をホント、なんとかしないとあの子に近づけないよ、マジで!!
このままだと、八方塞がりだし。
さて、考えるか。
ふむ……なんていうか、アレ。
好感度を低下させればいいんじゃないかと。
何をすれば、自分、好感度下げれるでしょう?
むむむむ、難しい。
できれば、4人いっぺんにざっと全員が下がるような。
コイツ、やべえみたいな?
ん?
コイツ、やべえ?
自分、今、何かきゅぴーんときました。
マジやべえのが、今、閃きました!!
そうだよ、ヤバいと思わせればいいんだよ!
ほらあれ!
昔懐かしい雰囲気感じるけど、あれだ。
リーゼント決めて。
特攻服着ちゃったりとか。
木刀とか持っちゃったりとか?
バイク乗り回したりとか。
ただいるだけで、むっちゃこわーい。
『不良』になればいいんじゃね?
おおっ!! 我ながら、グッドアイディーア!!
思わず叫んでしまって、メイドさん達に怪訝な顔をされちゃいましたが。
それはともかく。
良い方法だと思ったので、さっそく翌日に実行することにしました。
いつものようにサボって、不良が居そうなところを探ります。
ふふ、なんかサボりってだけで、不良な感じしない?
この調子でどんどん不良になれれば……いやいや、もっと踏み込んでいかないと。
えーっと、不良って、どこら辺にいるんだっけ?
あっ!
そうだ!
こういうのは、体育館裏だよね!
鉄板、鉄板!!
……って、見つけた。
本当にいた!
あー、やっぱ、セレブ学園だねー。
普通に茶髪で粋がってる人たちだよ。あんまり怖くないけど、まあしかたないかー。
3人もいるし、なんとかなるはず……って、やっべえ、なんて言って近づくか、そこまで考えてなかった。
うーん、どうするべ?
そんな風にウォッチングしてたら、不良さんのところに一人の使いっ走り風のおにーさんがやってきました。
たいしたことない連中だけど、ここは聞き耳立てて、様子を見ようか。
「兄貴、大変だ!! アツシが捕まっちまった!!」
「なんだと!?」
「そういうことは、もっと早く言え!!」
なんかもう、突っ込みどころ満載だけど、これって、チャンスかも?
もうちょっと聞いてみよう。
「アツシが俺らのグループで一番弱いからって、酷いことしやがるっ!!」
「兄貴、きっと俺らのグループを潰しにかかってきてるんすよ!」
「金で解決したりとかしてたからか?」
「まあ、俺ら、ぶっちゃけ、それほど強くないしなー」
おい、馬鹿!
そこは弱くてもぶん殴って言い聞かせるところだろ!?
つーかさ、ここで自分がその不良さんを助けてきたらさ、不良さん大喜び、箔もついて、より素敵な不良ライフできそうじゃありませんか?
「話は聞かせてもらった」
あ、あれ?
なんか、不良さん達、自分の姿みて震え上がってるんですけど?
いやいや、自分、不良さん達の下僕になるために来てるんすけどー?
……ま、細かいことはいいか。面倒くさい。
それにたいしたことない不良さんだもんね。
「そいつを助けてくれば良いんだろう? 了解した。俺が行ってきてやろう」
にっと笑みを浮かべて。
「俺の大切な学友に手出ししたツケを払わせてやる」
「いえ、そこまでしなくてもっ!!」
って、なんでそこで、不良の皆さんが自分のこと、止めてくるんですか?
大丈夫っすよー、自分、ステータス上げは得意なんすよ。
下手なやつらには負けません。ふふふ。
というわけで、果たし合い場所……じゃなかった、決戦場所に向かいました。
「なんだテメー?」
あ、こっちの方がマジ不良だね! うちの学校の不良よりも迫力あるよ!
スカウトしたいくらい。
でもさ、ここでうちの不良さんを喜ばせないと不良にはなれないよね?
「それはこっちの台詞だ。おまえが連れて行った仲間を帰してもらいに来た」
お、囲みますか? いいっすねー!
あ、うちの不良さんら、震え上がってる。
大丈夫っすよー、全部自分が片付けますからー。
伊達に親父に米軍に突っ込まれてませんしー。まあ、あのときは、マジで死ぬかと思いましたけど、あそこのおにーさんたち、意外と優しいし、おかげで筋トレ好きになりましたもん。武器の扱い方も丁寧に教えてくれましたから。
おっと、話がそれました。
まあとにかく、目の前の不良さん、迫力ある割になんか弱そうなんだよね。
筋肉ないし、たぶんこれ、ハッタリでなんとかしてるパターンだな。
「来るなら来い」
「言われなくても!!」
ああ、やっぱり。
パンチとか全然、力入ってない。がむしゃらに振り回してる感じ。
もう少し、腰を落として、ちゃんと相手に決めないと。
こう、えぐるように!
「ぐえ!」
「うおっ……ぐふ」
「ごはあ……」
はい、おしまーい。
ぱんぱんと手を払って、振り返ります。
おお、うちの茶髪不良さん、ちゃんとお仲間さんを救出してましたね。偉い偉い。
「今度はなにかあったら、俺のところに来い。不良になってやる」
決まったー!!
これで、明日の朝からみーんな怖がるぞ!!
そして、迎えた翌日。
「流石、皇帝様!!」
「あんな不良をも救ってあげるなんて、素晴らしい!!」
え?
えええええ!?
ちょ、ちょっと待って!? そこは、うちの子がグレたー!! じゃないのー!?
そこ、もうちょっと怖がって?
あの迫力ある不良を伸しちゃったんだよー?
「皇帝自ら助けてあげるなんて、凄いよ、皇帝!!」
にっこりとあの男主人公な蒼に微笑まれて、自分、気が遠くなりそうになりました。
なんとか、なんとか立って耐えてしまった自分が切ないですっ!!
いつになったら、終わりますかね? これ。