皇帝の傾向と対策(涙)
さて、夜になりました。
ここで少し纏めてみようと思う。
現在、自分は4人のキャラに言い寄られている。
一人目。茶髪の元気君こと、男主人公、薮内蒼。
人懐っこいだけでなく、若干、しつこさも感じる。
早々におさらばしたい相手だ。
二人目。眼鏡のイケメンこと、男ライバル、桐生涼。
初日で好感度を上げてくる、良い男だ。
しかし、それに騙されてはならない。確実に自分に好意を持っている。
危険だ、こいつもかなり危険だ。
三人目。縦ロールのお嬢様こと、女ライバル、綾小路舞彩。
接触は少ないが、同じクラスなので、油断ならない。
縦ロールでなければ、友達に……いや、あの性格なら無理か。
金で何とかしそうな、危険人物。
四人目。大和撫子を絵にかいた、女主人公、林葉瑠璃。
四人の中で一番接触が少なく、どんな相手かいまだわからない。
ただ、一人目主人公の明るさがあるので、油断してはいけないだろう。
まあ、四人の中では一番まともそうだ。言い寄ってくる相手でなければ。
……なんだか、追いつめられてる気がするんだが、気のせいだろうか?
まあ、四人一斉にフラグを折るのは難儀だと思うので、まずはホモ部隊である、蒼と涼を何とかすることを目標にしよう。
相手にするなら、まだ女の子の方がましだし。
そして、夜が明けました。
おはようございます。
こういうのは、先手必勝、さっさと終わらせるのが先決だろう。
登校して早々に、蒼と涼を捕まえることに成功した。
「ちょっと話がしたいんだが、いいか?」
「わ、何々? いいよいいよ。言って言って!」
「いや、ここでは言いづらいんだ」
人目もあるからなと告げると、蒼はおおっと手を打ち。
「じゃあ、場所移そうか」
「人気のない所が良い。こっちだ」
他の奴は来るなと、視線で周りに知らせつつ。
自分は蒼と涼の二人を連れて、人気のない校舎裏にやってきた。
「この際、はっきり言わせてもらう」
そうだそうだ! こういうのは、しっかりバッチリ分かりやすくスマートに直球勝負!
回りくどい言い方すれば、変な取り方されるからな。
「俺は男に興味はない。諦めろ」
………。
……………。
…………………あれ? 自分間違えましたか?
いや、間違ってはいないはず、だよね……って、おいおい!!
「う、うわああああんっ!!」
こ、ここで泣くのか、お前はっ!! 蒼、お前、男だろ!?
「告白してないのに、振られちゃったよぉーー!!」
「……胸が苦しいな」
涼まで悲しそうな瞳でこっちを見るなっ!!
こっちまで胸が痛くなるだろうが!!
……あれ? こっちまで被害くるって、どういうことっすか?
うう、こっちも泣けてきたよ。
「お、男には興味がないが、友として付き合えるって断言できるのなら、お前と一緒になっても構わないぞっ!!」
思わず、妥協案を言っちゃったじゃないかよ。全くもう!
「本当?」
「友として付き合えるって断言できるならな」
大事なことなので、もう一度言っておく。本当に大事なところだ。
「断言しよう」
って、涼! お前が先言うか、それ!
「ぼ、ぼくもっぼくも断言するっ! 断言するよっ!!」
さっきの涙は何処へ行った?
思わずそう言いたくなった。
「これで、ぼくたち、皇帝君の友達だねっ♪」
……あれ?
もしかして、いや、ひょっとして……フラグを折るつもりが……フラグを立てた?
つーか、これ、何が正解なんだよぉーーー!!
だれか、自分に攻略本を下さいっ!!
こうして、徒労に終わった一日が過ぎたのだった。がくり。