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知らない間に攻略対象になってました  作者: 秋原かざや


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12/17

皇帝と涼のカンケイ

 最初は逃げようかと思った。

 目の前に涼がいて……。


「何か、困ってる……?」


 自分、思わず足を止めてしまいました。

 なんかちょっと、思い詰めた表情を浮かべているというか、なんというか。

 放っておけない雰囲気を感感じて。


「涼、なにかあったのか?」


 しまった、思わず声をかけてしまった!!


「あ、いや……君には関係ないことだから」


 いや、涼にそう言われると、こっちも気になるというか、なんというか。

 ……ん? 何かを探している?


「何か、探しているのか?」

「!!! ……流石は皇帝、だな……なんでもお見通しなんだな」

「お前のやろうとしているのを見れば、それくらいわかるだろう? 何を探してるんだ」

 その自分の言葉に、涼は観念したように口を開いた。


「亡くなった祖母が無くした結婚指輪だ」

「なんだって? それは大切なものだろ?」

「そうだな。……もう何年も探している。けれど、今年でもう諦めようと思ってるんだ。生きているときにここで転んで落としてしまった結婚指輪、もう無くして5年は経ってる。見つからないものなんだよ」


「どうして、それを……まだ探してるんだ?」

 そう自分が尋ねると。


「罪滅ぼし……ですかね。あのとき、転んだのは……俺の所為だから。悪気はなかった。でも、祖母を押して転ばせてしまったのは、俺だから……」

 その悲痛な表情を見て、十分だと思った。

「お前のおばあさまは、ここで転んだんだな?」

「あ、ああ」


 自分、いろいろな計算を始めます。ここで転んで無くして、未だ見つからない結婚指輪。

 ころころ転がって、どこに向かう?

 どこを探せば、見つかるんだ?

 こいつの、悲痛な表情だけ、何とかしてやりたい。


「どんな指輪だ……教えろ」

「小さなダイヤがはめ込まれた……シンプルなものだ」

「……わかった」

 そのまま、辺りを見渡し、怪しそうなところから、片っ端から探していく。

「ちょ……お前がそこまですることないだろ!?」

「いいんだ。放っておいてくれ。お前のその悲しい顔を、何とかしたいだけだから」

「!!!!」


 がさがさと探して、そして、きらりと光るそれを見つけた。

 よかった、まだあった。

 それを拾い上げ、自分のハンカチを取り出し、綺麗に拭いて、手渡す。


「ほら、見つかったぞ。よかったな」

「!!!!!!!!」

「じゃあな。今度は落とすなよ?」


 そういって、自分は颯爽とその場を後にしました。


 そして、気づきました。

「あれ、これって……好感度アップのイベント……じゃないっすよね?」

 答えをくれる人は、そこには、いませんでした。



 ぴこん。

『桐生涼との好感度が100になりました』。

 



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