皇帝と涼のカンケイ
最初は逃げようかと思った。
目の前に涼がいて……。
「何か、困ってる……?」
自分、思わず足を止めてしまいました。
なんかちょっと、思い詰めた表情を浮かべているというか、なんというか。
放っておけない雰囲気を感感じて。
「涼、なにかあったのか?」
しまった、思わず声をかけてしまった!!
「あ、いや……君には関係ないことだから」
いや、涼にそう言われると、こっちも気になるというか、なんというか。
……ん? 何かを探している?
「何か、探しているのか?」
「!!! ……流石は皇帝、だな……なんでもお見通しなんだな」
「お前のやろうとしているのを見れば、それくらいわかるだろう? 何を探してるんだ」
その自分の言葉に、涼は観念したように口を開いた。
「亡くなった祖母が無くした結婚指輪だ」
「なんだって? それは大切なものだろ?」
「そうだな。……もう何年も探している。けれど、今年でもう諦めようと思ってるんだ。生きているときにここで転んで落としてしまった結婚指輪、もう無くして5年は経ってる。見つからないものなんだよ」
「どうして、それを……まだ探してるんだ?」
そう自分が尋ねると。
「罪滅ぼし……ですかね。あのとき、転んだのは……俺の所為だから。悪気はなかった。でも、祖母を押して転ばせてしまったのは、俺だから……」
その悲痛な表情を見て、十分だと思った。
「お前のおばあさまは、ここで転んだんだな?」
「あ、ああ」
自分、いろいろな計算を始めます。ここで転んで無くして、未だ見つからない結婚指輪。
ころころ転がって、どこに向かう?
どこを探せば、見つかるんだ?
こいつの、悲痛な表情だけ、何とかしてやりたい。
「どんな指輪だ……教えろ」
「小さなダイヤがはめ込まれた……シンプルなものだ」
「……わかった」
そのまま、辺りを見渡し、怪しそうなところから、片っ端から探していく。
「ちょ……お前がそこまですることないだろ!?」
「いいんだ。放っておいてくれ。お前のその悲しい顔を、何とかしたいだけだから」
「!!!!」
がさがさと探して、そして、きらりと光るそれを見つけた。
よかった、まだあった。
それを拾い上げ、自分のハンカチを取り出し、綺麗に拭いて、手渡す。
「ほら、見つかったぞ。よかったな」
「!!!!!!!!」
「じゃあな。今度は落とすなよ?」
そういって、自分は颯爽とその場を後にしました。
そして、気づきました。
「あれ、これって……好感度アップのイベント……じゃないっすよね?」
答えをくれる人は、そこには、いませんでした。
ぴこん。
『桐生涼との好感度が100になりました』。
 




