皇帝の秘密の校庭で会いましょう?
今、まさに……自分の目の前に……あのあの、自分を一撃で心を盗んでいった、可愛い……。
「眼鏡ポニテちゃんっ!!」
「まあ、そうですね。いやあ、ほんと実物みたら、へんてこさが満載ですね。あの砂吐きキラキラ台詞はどこに行っちゃいました?」
眼鏡ポニテちゃん、今、なんて言いました?
流石にそんな台詞は、自分、言えませんよ。
「あー、一応、自分は雄哉なんですけど、雄哉じゃないです……」
「うん、本物なら、もっと四人とフラグ立てまくって、あっという間に鳥かごエンディングに持って行っちゃうだろうし」
……なんですか、その『鳥かごエンディング』って……物凄く怖いんですけど!!
「颯爽とあっまーいマスクとあっまーーーーいセリフで、がんがん好感度あげてく人だからね。好感度あげるのに雄哉くんほどピッタリな人はいないよ」
「そんなの聞きたくなかったぁーー!!」
おーのぉーーと悲しんでいると、眼鏡ポニテちゃんは、ぽんぽんと肩を叩いて励ましてくれた。
あ、きゅんとしちゃう。
「もしかして、好きなキャラ……誰一人いない? 瑠璃ちゃんとか蒼くんとか、意外と可愛いよ?」
「男は無理っす。自分、ごくふつーーの男ですし。瑠璃ちゃんは、手作り攻撃が怖いっす……」
「……そういえば、惚れ薬とか仕込んでたわ」
「やっぱり食べなくてよかったあああああ!!!」
いや、そうじゃなくって、もしかして……。
「眼鏡ポニテちゃん、もとい、僕の心のオアシスちゃんは……あのゲーム、クリアしたんっすか」
「もちのろんですよ!! クリア後に出来る各キャラになって攻略とか、ファンディスクも、スチルコンプも全部やりました!! 特に雄哉くんは、私の推しです」
……ずきゅん。
「今すぐ君を抱きしめて、僕だけの楽園へと導き、幸福の彼方へと連れていきたい」
「あ、ちゃんと砂吐き台詞、言えるじゃないですか! そそそ、それですよ!! 萌え!!」
「なら、君の為にささやかな詩を囁こうか、君のその可愛らしい耳元で……」
って、自分、何言ってるんですか!! なに、耳元で囁こうとしてるんですかっ!!
「あ、なーる。雄哉くんが好きな相手に、オートモードで発生するんだ。おもしろ……」
と言いながら、眼鏡ポニテちゃんは、ふむふむと分析している。
いや、そうじゃなくって!!
「そそそ、そういえば、前世持ちって、本当ですか?」
「うん、前世は、ふつーのOLですね。ゲーム大好きな彼氏と付き合ってたよ」
それは聞きたくありませんでした。くっ……相手は彼氏持ちかよ。くっそーーーマジか。
うう、泣いちゃう。いや、泣いている。
「よしよし」
「せめて、お名前聞いてもいいっすか? そして、このゲームの攻略方法、教えて欲しいっす。できれば四人とは付き合わない方法で……」
「私の名前? 実はモブみたいだから名前ないんだよね。んーと、表示では、『柊さーや』になってるね。きっとプレイ時の名前がそのまんま名前になってるっぽい」
眼鏡ポニテちゃん、もとい、さーやちゃん。名前が可愛い……。
「僕の心の聖書に、しかと刻んだよ……」
「ホントに、私のこと、好みなんだね。すごいねー。でも……」
「いわないで、ホント、自分、挫けそうです……」
可愛そうな雄哉に、さーやは言う。
「まずは、今、どのくらい好感度上げてるか確認しようよ。そのいつも付けてるウォッチで見ることが出来るから」
「マジで!!」
ぴっと、さーやに言われて、起動させる。
「おーのぉおおお!?」
「うっわーー、なんで全部『???』なんだろ? まあ、私にはなんか、見えるから教えてあげるけど、今、70近く稼いでいるよ。ちなみに最高は200。200になったら、鳥かごエンディングに自動的に入って」
「入って?」
「好きなキャラを別荘に閉じ込めて、うーんと愛し合っちゃいます。エロく」
「まったあああああ!! 待って、今、何て言いました!?」
「別荘に閉じ込める? それとも」
「エロくって、なんすかっ!? 全年齢ゲームっすよね、これ!!」
「うん、普通はね。けど、限定解除したら、伝奇で楽しい18禁モードに入ります。まあ、これは後で話すとして、まだ好感度そんなに上がってないから大丈夫。四人の好感度を100に上げなければ、そんなモードには入らないので、安心してね」
「怖いんですけど、それええええ!!!」
なんて、恐ろしいゲームなんだ……。
「まあ、とにかく、今は、4人と避けまくって、好感度あげなければ大丈夫だと思うよ。えっと、がんばって?」
「ううう、励ましてくださーい。時々、こうして励ましてくださーい。自分、もお、挫けそうなんですけど……好感度が『???』なのも変なのに……」
「どうどう。でも、へんてこな雄哉さん見るの楽しいから、頑張ってほしいな。今の雄哉くんが突き進むエンディングってどれになるんだろうね?」
「ごくふつーーーのエンディングがいいっす、もう、平穏がいいっす…………」
けれど、お陰で、いろいろ知ることが出来た。
うん、光が見えたのは、とても良いことだ。
「頑張って、だれともくっつかないエンディング目指すぞーー!!」
「おーー!!!」
そういって、雄哉は意気揚々と校庭を後にする。
「あ、すっかり忘れてた。逃げまくったら、強制イベント出るんだったっけ……大丈夫かな?」
さーやがそんな不穏なことを呟いていたとは、当の雄哉は知らなかったのであった。
大丈夫です。これはコメディなので、18禁にはなりません。ご安心を。ただ、雄哉くんが可哀そうになるだけです(笑)。
 




