彼女は帰る。1人は嫌だと思いながら。
猫を一目見て、飼いたいと思った。
けれど それは出来ない。
「ごめんね、うちじゃ飼えないの」
すり寄ってくる黒猫を撫でながら言い聞かせる様に言う。
伝わるワケないけど。
寒空の中1人で公園のベンチに座り、猫に話しかけているなんて
誰が見ても変だと思うことだろう。
「コレあげるね、君、綺麗だから」
そう言ってコートのポケットから鍵を取り出し、
飾りで付いてる赤い紐の付いた、銀色の鈴を彼の首に着ける。
まるで、首輪の様でピアスと合っている
「これなら、他の猫と間違えないわね」
“ニャーオ”
まるで返事の様なタイミングで鳴いた彼に言ってみる。
“明日も此処に来るから待っててね”
そう言って猫と別れる。
もう、夕方だ。帰らないと。
私の帰る所は一つしか無い、けれども
あそこは
.......私の“家”じゃない。
彼女は帰る。独りの場所へ。
そして、「家」に帰ってきた。
教会の様な風貌の建物が視界に大きく映る
見慣れた門に可愛らしい、木で出来た看板が目に入る。
『ひまわりのいえ
心理カウンセラーおります。
お気軽にどなたでもどうぞ』
________そんな文字が書かれている。
何時も思うが、心理カウンセラーに来る人で
お気軽に来る人なんて....いるのか?
いや、居ないだろ。
冷静に突っ込んでみる
そんな門を潜ると
“あぁ、“また”独りになる”
その言葉が脳内で繰り返される
丁寧に彫刻が施された扉に手を伸ばす。
そして、ゆっくりと息を吸う
そして、ゆっくりと扉を開けた
出迎えてくれたのは_________________
_____________静寂。