最初の夜3
「じゃから幼女ではない! 妾はシルカ・ニャガンカ・ククルシル! 破壊魔王である!!」
「いいからその辺の残骸集めてくれ幼女」
「妾はれっきとした15の乙女じゃぞ! そこは訂正せいっ!」
「……俺とひとつしか違わないって……何がお前をそんなに」
「憐憫に満ちた目で見るなあっ!!」
ひとまず危機は去った。
今俺が何をしているのかというと、破壊魔王(自称)ことシルカ(自己申告15歳)に手伝ってもらって、魔物の残骸を片付けているところだ。
正直あまり触りたくはないが、このまま放置して他の魔物や肉食獣が集まってきても困ると考えたからだ。俺は戦いで折れた木の幹を適当な大きさに割って、簡単なシャベルを作って穴を掘る。シルカには箒代わりの枝を渡して、周囲に飛び散った肉片を集めてもらっていた。
律儀に地面を掃く破壊魔王。本人は15だと言い張っているが、どう見ても良くて小学校高学年……睨まれた。
「あたしホントに15だからね。そういう趣味だからって言い寄ってこないでよ」
「いつから俺がそういう趣味になってるんだよ! 被害妄想が捻くれてるな! ……っていうか、妾言葉はどうしたんだよ?」
「あんたちっとも恐れ入らないじゃない。もう飽きた」
「…………」
ポーズかよ。
「んじゃ魔王『ごっこ』もおしまいか」
「遊びじゃないわよ! あたしはこの世界の破壊魔法をあまねく習得し、世界最強の『破壊魔王』としてその名を世界に轟かせるのよ!」
…………。
「まだなってなかったのかよ魔王! 身分詐称だぞ!」
「い、いーじゃない! どうせいつかなるんだから! 予約よ予約!!」
「子供か! ……いや、子供でいいのか」
「まだ言うか!!」
いいのかそんなので? 無いとは思うけど、この世界の魔王に知られたらいろいろまずい事になるんじゃないのか。
「なんでも千年ほど前に『大魔王』が遺言で、魔王の世襲を禁じたらしいのよ」
その後、なんやかやあって魔王の名は『魔の道を極めたもの』という称号に近いものに落ち着いたという。
「だから、魔王って結構いっぱいいるわよ。人間の魔法使いや国王の二つ名に使われることもあるし」
「なんか……俺の持ってる魔王のイメージと違う……」
獅子心王とか野球の神様とか、そんな感じなのだろうか?
だが、俺は『魔王の配下』に命を狙われたんだが。
「じゃあこの魔物はどうして俺を狙ったんだ?」
「普通に軍勢もって戦争やりたがる魔王もいるってだけよ。この辺だと北の樹海にナワバリ張ってる『森獣魔王』あたりかしらね? 目と鼻の先で『勇者召喚』なんてやられたから、ケンカ売られたと思ったんじゃない?」
「俺が売ったわけじゃないんだが……」
おかしい。それでは辻褄が合わない。
世界が危機になったから俺が召喚された。俺が召喚されたから森獣魔王は襲ってきた。順序が逆だ。俺が呼ばれたのはもっと別の理由があるのだろうか?
最初はシーナさんが心配で、一刻も早く神殿に戻ろうと思った。だが、今は足が動かない。自分の周囲があやふやで、どこへ向かって行けばいいのか何も分からない。俺は、考えてる以上に危険な立場にいるんじゃないのか?
「なあ、お前どこに住んでるんだ?」
「え……ええっ!? あんたまさか本気であたしを……この変態っ!!」
「違うそうじゃない。というか、お前は自分がロリだと肯定したいのか否定したいのか」
「じょ、冗談に決まってるじゃない! ……まあいいわ、近くの泉にアジトがあるのよ」
なんにせよ、この血塗れパジャマ姿ではどこへも行けないだろう。スプラッタ映画の登場人物みたいだしな。シルカに服を譲ってもらえるように頼み込む。風呂もあればありがたいな。
「じゃあ、ここを始末するか」
2メートルほど掘り下げた穴に、魔物の死体を放り込む。身体強化を使っているので驚くほど軽い。そのせいか、さほど罪悪感は感じなかった。――俺が殺した生き物。知能があり、会話もした。――
俺は、自分で思っている以上にドライなのかもな……。
「じゃあさっさと燃やしちゃいましょ」
「え?」
持っていた箒を穴に放り込むと、シルカが腰に手を当てた仁王立ちポーズから右手を突き出した。
「EXファイヤー!」
なんだその中二ワード!
彼女の手のひらが赤く発光したかと思ったら、穴の底から凄い勢いで火柱が上がった。
「熱ッ!! ちょっ! おい! やりすぎだ!!」
「魔物の皮は丈夫なのよ。しっかり焼かないと中まで火が通らないわ」
「料理か! そうじゃなくて!こんなに派手な火柱上げたら他の誰かに見つかっちゃうかもしれないだろうが!」
「あっそうか。てへぺろ」
「……こいつ……」
大急ぎで土をかぶせて消火し、俺たちはその場を後にした。




