オワリを忘れた物語
神様から僕は力を貰った。
誰にも与えていないって、神様は言っていた。
僕は当然嬉しかった。
そのことを言われたときには、当然『なんだろう?』と思って期待した。
『他の誰にも与えていない能力』=『誰も持っていない能力』
僕はこの世界で唯一の報われ者。
響きが良いなぁ~。
それこそ僕に合っている。
ある日、僕は友達に言った。
『僕は神様からすごい能力を貰ったんだ』って、興奮のあまりかみそうだったな。
けれど、友達の反応は興味を示してるでもなく、羨むわけでもなく、淡々としれっとした口調で、『神様なんかいないよ。どうしたんだ? お前』
憂いを投げられた。
正面から受け止めるのが難しかった。
脳に後ろへ引っ張られる感覚になった。
きっとこれは無意識に後ずさっただけだったのかもしれない。つい狼狽えて気が抜けたのかもしれない。
どちらにしろ……僕はーー正面にいるやつにムカついた。殴りたくなった。
彼を友達等という存在にしたことを取り消したい。
ならばいっそ、
僕はこの人生をーー
ーーやり直したいっ。
バッ、と僕の目の前が点滅を起こした。
当然意味が分からなくなった。
不明になった。
たしかな感覚を疑った。
顔を上げると、まず一本の電柱が見えた。
高くそびえ立つ凛とした存在を主張するように。僕は奇妙な意志を持った。
一本の電柱の隣を見ると、うり二つの存在が……電柱がそびえ立っていた。
そしてそのとなりへ僕は首を回す。
電柱が立っていた。
そのとなりにも電柱が立っていた。
そのとなりにも電柱が立っていた。
そのとなりにも電柱が立っていた。
そのとなりにも……………………
そのとなりにも……………
そのとなりにも……
そのとなりにも
そのとなりにも存在する。
堂々と居座っている。
そびえ立っているのにーー居座っている?
ーーーーなんで?
どうしてそこに電柱があるの? よくわからない感覚になるような感覚になった気がした気がしたような感じになっているみたいな感じになってしまっている? 僕は何? これは何? 今は何? どうが何? 何が何? 一体何? 何?
眼前に光が現れる。
その光に何かが包まれているように見え、焦点をそこに集中させた。
見覚えのあるシルエットがある、ような…………。
僕は……
すると声がかけられた。
『あなたは過去に戻りたいですか?』