6話 散歩に行こう。
サブタイ決めるの、お話考えるより大変になってきました。
制服を取りに行った後の一週間は、バタバタした。
たとえば、母様が「やっぱり、学校いかないでぇ!!」って泣きついて来て、制服やら何やらの準備物を隠したり。(隠されたものは一応すぐ見つかったが、母様を宥めるのが疲れた……一体幾つなんですか母様。可愛かった…可愛かったけども。)
たとえば、父様の研究室に招かれて、以前見た真っ黒い頭が三つある犬の頭を撫でさせてもらったり。(研究のために某所で借りたケロべロスの子供らしい。あの超大型犬並の大きさで子供だと……。人懐っこくて、毛並みもっふもふだった。て言うか某所とかどこだよ…怖くて聞けないから、その時は聞かないけど。)
たとえば、ユリナさんの着せ替え人形になったり。(一体、何着着せる気なんだ、あの人。と言うか、何着あるんだよ、私のクローゼット。まだ着たことない服が山ほどあるんだけど。つか、クローゼット無駄に広いなっ!!)
たとえば、商店街の裏路地に、美味しいお菓子屋さんを見つけたり(ああ、お菓子旨い。モグモグ。)
うん。こう客観的に見たら、私の毎日って結構充実しているんじゃないだろうか。
「充実はしているが……疲れた。明後日入学式なのに。」
特に母様が泣きついてきた時が疲れた……美人に泣かれるの苦手なんだよな、私。
父様については余計に疑問が増えた。さっきも思ったけど、某所ってどこなんだ?しかもケロベロスって……ま、まさか本当に魔界が存在しているのか?……いや、この事は考えないようにしよう。(でも、ケロベロスってあの世の入口の番人じゃ…こう言う所だけファンタジー仕様なの?)
「……はぁ~……そうだ、気分転換にそこら辺散歩しよう。」
そして、野外スケッチしよう。そうしよう。
風景画だと、私の『創造する者』《クリエイトマスター》(あ、能力に名前付けました。)は発動しないし。…風景画や背景って、ぶっちゃけ苦手なんだが…でも、人物や動物のイラストにすると『創造する者』発動しちゃうんだよね~。(例として上げれば、先日描いた猫モドキですね。)
「えっと、スケッチブックに筆箱出して…色鉛筆も持って行くか。適当なカバンの中にそれ入れて…あ、飲み物いるな……うーん、水筒持っていくか。」
考えが大方纏まったので、部屋着(と言うか寝間着。言わずもがなユリナさんセレクト)から動きやすそうな格好に着替える。
Tシャツに、ジーパンを穿き、まだ肌寒いのでダークグレーのパーカーを羽織る。鬱陶しかったので、髪の毛はうなじの所で一つに束ねた。
「……何か、懐かしいな。」
『私』の頃は、今みたいに女の子らしい格好じゃなくてこんな格好しかしなかったっけ…そう思うと、なんやかんやと言いつつも変れたのかな、私。……殆んどユリナさんのお陰だけど。
コンコン――
「コトハお嬢~、朝ですよ~。って起きてるよ……ね…。」
「あ、おはようございますユリナさん。……どうしたんですか?」
ユリナさんは、私の姿を見て固まったようだった。
……あ~、いつもユリナさんが選らんだ服って、女の子らしい服(スカートとか、ワンピース等)だったから、今私が着ている服(全部一応女物だが、見ようとすればギリギリ男物にも見れる服装。しかも髪を無造作にうなじ辺りで結んでいる。)を見て、ショックを受けたんじゃ…。
「カッコいい系か!!盲点だったよコトハお嬢!」
ユリナさんの要らん扉を開いたみたいだ。
……帰ったら、また着せ替え人形になるな、私。ふっ(思わず遠い目をしてしまったよ…。)
「あれ?コトハお嬢、お出かけするの?」
今にも今着ている服を引っペがして着せ替えを始めような気配を漂わせていたユリナさんは、はたと私が自分で着替えっている理由について聞いてきた。…まぁ、基本的にはユリナさんの言われるがままに着替えますからね、私。
「はい、気分転換にそこら辺をぶらっと散歩してこようかと。」
「そっか。……あ、だったら飲み物いるね。水筒に入れて持ってくるよ。」
「ありがとうございます。」
ユリナさんって、こう言う時は使用人と言うより、面倒見のいいお姉さんって感じだな…絶対良いお嫁さんになるよ、うん。
……って、おっさんか、私は。
「精神年齢だけだと、もう二十歳超えてるからなぁ、私。……普段気にしてないけど。」
まぁ、二十歳超えてるって言っても、まだ前半だけどさ。
…肉体年齢は6歳で、精神年齢が二十代前半……気にしたら、負けだよな。うん。(一瞬合法ロリって言葉が頭を過ぎりましたが、そうでもなかったと思い直したのは余談です。)
服の量とクローゼットの広さは、ご想像にお任せします。