83話 緊急事態発生しすぎ。
「で、この混沌風呂に何分くらい浸かっていればいいんですか?」
先生が、私が入った辺りで大釜に焼べていた火を消しているから、段々と深緑色の液体が冷たくなってきた…腹冷えそう。
「さぁ?多分だけど、こう言うのって五〜六分でいいんじゃねか?」
だったら、既に時間経ってる…寧ろ過ぎてるじゃないですか。さっさと上がって体を温めないと風邪引く…。
「〜っくしゅん!ズズッ…先生、コレからいい加減上がりたいのでタオル貸していただけませんか?」
「タオル?……ああ、悪い夜風。この部屋にはタオルかそれに準ずるものはねぇんだわ。あっても、洗っていないハンドタオルが数枚ぐらい。」
…何ですって!?
「どうするんですか!このままだったらゆるゆると体温奪われて風邪を…くしゅん!」
「あ〜、俺も冷えてきた。ふむ……夜風、これは緊急事態だからやるだけであって決して他意はないからな?訴えとか起こすなよ?」
いきなり何を言い出すんですかこの先生は。うぅ、お腹冷えてきた。
身を小さくして、出来るだけ体温を外に逃がさないようにしていたら、不意に先生が私を後ろ向き(あ、人体模型と羊のヌイグルミに目があった…うん、シュール。)に移動させたかと思うと、急に背中に抱きついてきた。
「…冬山で遭難した男女ですかコレは。」
「しゃーねぇだろ、コレが一番効率いいんだ。」
「そう言われましても…こう言うのって、恋人同士か仲の良い男女がするもんですよね?そう考えると何だかなぁ。」
「あらあら、お二人はとてもお似合いですよ?」
「そんなこと言われましても、先生が生徒に手を出すとか犯罪じゃあないですか。」
「そーだぞ。ついでにロリコン疑惑もかかるから…って、然り気無く第三者が混じってるな。」
ふと視線をずらすと、ビデオカメラを片手にニコニコしているエヴァンジル様が…はい?
「何でいるんですか聖女様。一応鍵を閉めていたはずなんですが…。」
「あらあら、鍵を閉めていたんですか?何やら不純な気配がしますねぇ。」
話が進まねぇぇぇえ!
「と言いますか、何でビデオカメラを回しているんですか?」
「ふふふ。このカメラは、私の力をつかって立体(3D)映像に出来る様になっていて、音声もクリアに録れるように改造して貰ったんですよ。あ、この映像後で差し上げましょうか?」
「要りません。…と言うか、聖女様がそう言う事しても良いんですか?」
「あらぁ、私こう言うの大好きですよ?寧ろ、教会なんてゴシップの塊ですからねぇ。…ん〜、例えば…エルフ領のとある小さな国のお姫様が敵対している国の王子様と駆け落ちした話とか、竜人族のとある集落に代々受け継がれている秘匿の妙薬とか?」
噂好きの女子高生かよ…。
「…聖女様、先生の立場の事もありますし、ここで見た事勿論そのカメラに録っている映像は他言無用でお願いできないでしょうか…。あと、出来ればタオルを四枚ほど保健室から頂いてきてくれたら嬉しいです。」
「あらあら、良くできた生徒さんですねぇ。ん~…まぁ、お二人共困っているようですし仕方ないですよね。…分かりました。タオルはバスタオルで宜しいんですよね?では、失礼しますねぇ。…その…楽しんでくださいね!」
バタンッ
「何か、疲れた…。(つか、この状況で何を楽しめと?)」
「お淑やかそうな聖女様の、まさかの素顔だったな。」
いい人ではあるのは確かな筈なのに、いざ話してみるとエヴァンジル様はノリがまるで女子高生のようだった。いや、もしかしたら普通の女子高生の方が扱い楽かも。
コンコン――
「アルベロ?お前ここに居るのか?」
「あ、やべぇ。」
ガチャ
「ん、お前なんで後ろ向いてるんだ?つか、何を抱いて……っ~~!?」
えーっと、状況を確認しよう。
目の前に、学年主任であるヴィオーラ・プリューニョ・カメリア先生(通称、ヴィオーラ先生)が顔を真っ赤にして固まっている。
恐らく、裸のアルベロ先生が同じく裸の私に抱きついているのを見て…ね。うん、私だって立場が逆だったらビックリするもん。
「せ、せ、せ、生徒に何手を出してるんだお前ぇぇぇぇぇえ!!!!」
…ああ、また話がややこしくなってきた。




