5話 甘いものは別腹です。
サブタイに深い意味はありません。多分。
父様とお喋りしながら歩いていたら、いつの間にか仕立て屋に到着した…おお、全然気が付かなかった。…途中何回か、商店街の美味しそうな食べ物を、物欲しそうに見ていたのですが…最後に父様から「帰りに一つ買ってやるから、な?」と苦笑いされたのは余談です。超恥ずかしかった。
父様が、仕立て屋のドアを開けると、カラン、カランとドアに付いていたベルが涼しげに鳴った。…このドアベルの音好きだなぁ。
「おお、夜風の旦那様と琴波お嬢ちゃん。そろそろ来る頃だと思ってましたよぉ。」
出迎えてくれたのは、仕立て屋《プファオ》の主人、シュナイダーさん。父様の昔馴染みなのだとかで、良くこの仕立て屋を利用させてもらってる。
見た目三十代ぐらいなのに、嗄れ声としゃべり方がお年寄りみたいな印象を与えるシュナイダーさん。なんか、不思議な人だ。
「琴波お嬢ちゃんの制服ね、はい。一応、サイズが合ってるか着てみてくれるかい?」
「あ、はい。」
お店の中にある小さな更衣室(試着室?)の中に入り、入学したら、ほぼ毎日着ることになるであろう制服に着替える。そう、今回取りに来た服とは、このトレラント学園の制服の事だったのだ。
薄水色のワイシャツに深紅のリボンタイを付け、藍色のプリーツスカートを穿く。その上からブレザー代わりに、裾が少し長い(腰より下だけど、膝までは届かない微妙な長さ。)フード付きローブを羽織る。…デザインとかが所々違うけど、気分は某魔法学校な感じだな。梟と杖ないけど。
寧ろ、梟代わりに携帯電話(と言うかスマホ)持たされてるよ私。……前から思っていたんだけど、この世界って、もしかしたら現代日本より科学水準だいんじゃなのだろうか…?
また思考の渦に呑まれかけていたら、外からしたシュナイダーさんの声で、現実に戻った。
「琴波お嬢ちゃん〜。サイズ合ってた?どこもキツくない?と言うかちゃんと着れた?」
「(…シュナイダーさん、私を一体何歳と思ってるんですか?)…サイズは大丈夫です。少し大きいですけど。」
「何、直ぐに丁度良くなろうて。琴波お嬢ちゃんはまだまだ成長期なんだから、それぐらいにしとかないと後から大変なことになるからのぉ。ふぉふぉふぉ。」
う〜む。
シュナイダーさん、顔は二枚目なのに、口調のせいで確実に三枚目キャラ。だけど、それだから商店街の人達に慕われている。……なんと言うか、不思議な人だけどお得な人だな。
「じゃあ、それ包むから、脱いだら渡してくれのぉ。」
その言葉だけ聞いたら、シュナイダーさんがただの変態みたいだな……まぁ、言わないけど。
「分かりました。」
仕立て屋からの帰り道。
私の制服が入った袋を父様が持って、私は沢山の種類のドーナッツが入った箱を、満面の笑顔(ニヤニヤしてるとも言う。)で抱えている。
父様、一つは買ってくれるって言ったもん。後のドーナッツは自腹だから問題ないもん!…今さら子供っぽくしみても、色々遅いか…。何か、自分でやってて悲しくなったし。
「そんなに沢山ドーナッツを買って…食べきれるのか?」
「母様と父様にユリナさんとリベルタさんの分も在りますから。私だけだと、流石にこの量のドーナッツは食べれませんよ。」
「クククッ、そうか。」
そうだよ。全部食べきれるわけないよ……多分、きっと。
「ただいま戻った。」
「ただいま戻りました。」
「お帰りなさい、旦那様、琴波お嬢。…ねぇ琴波お嬢、その抱えている箱、何?持とうか?」
「私は大丈夫ですよ。それより、父様の荷物を持ってあげて下さい。」
替えのワイシャツや、夏服なんかも入っているから、父様の方が大荷物なんだよな〜。
「あ、旦那様すみません。今お持ちします。」
「ああ、助かる。」
「すごい量ですね……」
何か、大変そうだな。
「私も手伝いましょうか?」
「「私達で持てるから、琴波(お嬢)は心配しなくても(いいぞ/いいよ)。」」
…二人共、声を揃えて拒否らなくても……地味に傷つく。
シュナイダーさんの名前の由来は、ドイツ語で「仕立て屋」。
……まんまっすね。




