71話 事前に連絡して下さい。
ウダウダゴロゴロして過ごしていたら、あっという間にテスト休みが終わりを告げた。(イヴに手紙の返事書いて、ちゃんとその日のうちにポストに出しましたよ?内容は…内緒です。)
「…で、どうしてまた四コマぶっ続けで魔法実技の授業が入っているんですかね?」
教室に着いて、時間割りとか各授業の準備物を書く小さい黒板を見たら、『今日は時間割りを変更して、一〜四時間続けて魔法実技の授業をします。』と書いてあった。
「ほへぇ〜、楽しそうだね!ちょうど前の時間割りでも魔法実技あって体操服を持ってきてたし、良いんじゃない?」
…あ、もしかして、この前した魔力判定の結果をもとに何かする気なのか?私、装置ぶっ壊してしまったからキチンと測っていないんだけど。
「……不安だ。」
「あら、大丈夫よ琴波。別に生徒対抗の模擬戦やるわけではないのだから。」
「そりゃあ、基礎の基礎の魔法しか習っていないからそうでしょうけど…。」
うん、別の意味でいまいち気分が煮え切らないんです…。…以前魔法実技の授業で、ある程度魔力を込めると発光するランプや懐中電灯みたいな魔法具を、魔力判定で使った装置と同じく爆発させたことあるからなぁ。(『周りの“ある程度”は、夜風で言ったら“ちょっと”でいいんだよ。』と、担当の先生に笑顔で言われました。先生の目尻に、ほんのり涙が滲んで見えたのは気のせいであってほしいなぁ。)
「って、そろそろ行かないと授業遅れますね。行きましょうか。」
…ほんの微かに感じる嫌な予感は、当たらないでほしい。切実に。
「これより、適当に…六.七人の班分けして模擬戦をするぞー。」
…何で当たってほしくない予感ばかり当たるんだろう、私。
「先生ー、僕達まだ簡単な魔法しか使えませんよ?どう戦うんですか?」
そうだ、言ってやれ!えっと……クラスメイトのA君!(ごめん…名前…つか、男子は大半の人の名前まだ知らないや。…今度顔写真付きの学級名簿見て覚えようかな。)
「あれだよ、魔法は基礎の基礎が出来てれば後はイメージの問題だからな。魔術はそれと呪文の発音と滑舌と…モノによっては大量の魔力が要るけど。
忘れた奴のためにここで復習だが、魔法は現実…昔っぽく言えば現世の中に“有り得ない”現象を起こすモノ。それを、呪文を使って複雑で様々なものに特化させたものが魔術だ。
二つの間には明確な差はない。魔法でも、イメージし難かったらイメージし易いように言葉を使ってもいいしな。
ただ魔術の呪文は、呪文に使う文字の種類が豊富な上に全てが色んな意味で特殊だし、呪文一つが、言わばパソコンのプログラムみたいな役割を果たしているんだ。一つでも発音か滑舌が悪いと思っていた様には魔術は発動しないし、必要な魔力が足りなかったらそもそも魔術が発動しない。
まぁ、魔術については追々話すとして…独学である程度までは勉強している奴等も居ることだし、復習はここまでだ。
模擬戦についてだが、魔力を流すと防御壁が出てきてある程度…そだな、致命傷なら防いでくれるが掠り傷程度は守ってくれない特殊で微妙な魔術具を渡しておく。もし掠り傷一つも付けたくないと言う奴がいるなら、各自で防御魔法でも掛けておけ。」
ちぃぃ、結構しっかり受け答えされた上に模擬戦についての疑問まで言い当てやがった!
あ、魔術具と言うのは、対象(今の場合は腕輪)に呪文を書き込むか彫り込むかして、呪文を発声する時間を短縮する道具です。
今回の腕輪に書かれている(あら、これ浅く彫り込んだ上から色塗ってある。芸が細かいなぁオイ。)のは、最も一般的な『天空の言霊』と呼ばれる呪文に使う文字…専門用語っぽく言うと呪い文字です。
『天空の言霊』の特徴として、呪い文字の中では至って魔力消費も少な目で使いやすいのですが、何をどう組み合わせても何か魔術具の機能として中途半端になってしまうのと、呪文にすると発音が凄まじく難しいと言うのが玉に瑕と言うかなんと言うか…。
それのせいか、『天空の言霊』は主に魔術具に使われることが多い。(大抵の場合簡単な魔法と組み合わせて使うか、比較的怪我が少ないポジションの人が使う魔術具です。魔術具だが特性ゆえに安価で手に入りやすいのも、こう言う授業で支給されるポイントですね。)
なーんて現実から目を剃らしても、現実は逃げてくれない訳で…。(こんなに力一杯現実逃避してるんだから、少しぐらい現実が逃げてくれても良いじゃねぇかコノヤロー。本気でマジ泣きするぞコノヤロー……グスン。)




