4話 父様とお出かけ。
やっぱり、琴波が6歳児らしくないです…。
さぁて、今日の朝ごはんは何だろうなー。
「本日の朝食は、卵焼き、焼き鮭、ホウレン草とニンジンの和え物、豆腐とワカメのお味噌汁、白ご飯でございます。」
隅の方で控えていたリベルタさん(この家の執事さん。細身で綺麗な顔立ちをしています)が、スラスラと説明してくれた。
琴波に生まれ、記憶を取り戻していくなかで最初に驚いたのは、文化が殆んど地球と同じと言うことだ。
衣食住の『衣』は、和服や洋服、その他見たことの在る民族衣装の数々。デザインは、現代っぽいなからファンタジーなのまである。
衣食住の『食』は、普通に和食と洋服、中華料理すらある。(因みに、食事中の会話は煩くなければオーケーらしいが国によって微妙に違うらしい…と、父様が言っていた。)
衣食住の『住』は、和風の平屋から典型的な西洋風のお屋敷まで多種多様に存在している。
これらを見ると、この世界は異世界っと言うより、現代から派生したパラレルワールドといった方がしっくり来る。
まあ、そんなことは置いといて…今は目の前の朝ごはんを食べる事のみに集中しようかね。今日も美味しそうだなぁ。
「では、神々と、精霊に感謝して、頂きます。」
「「頂きます。」」
父様のあとに続いて、母様と私が、同時に言った。…あ、『神々と〜』は、頂きますの前につける、この世界独特のもの。大体はこの部分を端折るんだけど…なんと言うか、父様の趣味らしい。
「琴波ちゃんも、もう6歳ね。……やっぱり、学校行くの?寮生活になるのよ?」
モグモグとホウレンソウとニンジンの和物を食べていたあら、母様が心配そうな声で私に聞いてきた。
「むぐむぐ……ゴクン。はい、母様。前から自分の力や、魔法、世界の事を知りたいと思っていたし、寮にも入ってみたいと思ってましたから。」
「そう…なら良いのだけれど。」
うん、食事の合間に会話するって、何か家族の団欒って感じだ。
父様が、私たちの話に割って入らない辺りが、更に。
母様と、たまにユリナさんをまぜながらお話をしつつ、朝食を確実に平らげていく私。
ああ、今日も美味しかった。
「それでは琴波。制服を仕立て屋から受け取りに行くぞ。」
「はい、父様。直ぐに支度をします。」
今日は、父様と二人だけでお出かけだ。服取りに行くだけだけど。父様は知らないが、私は今来ている服の上に薄手のコートを着るだけだから、支度は早いんだよな。…そう、私は。
「うー、ローファーにするか、ブーツにするか…はたまたストラップシューズにするか……むむむぅ。」
……ユリナさん。靴まで選ぶのまだですか…はぁ、早く終わると良いな。(なんだか、とっても遠い目したくなってきた…。)
結局、靴決まるまで15分ぐらい掛かった。服決めの時より、疲労感がヤバい…。
しかし…今の状況に比べたら、ましな方かな…。
「(父様、何故靴決め辺りから押し黙ってるの!?怖いんだけど!!何、何なの!?アレか、私の精神削って楽しんでるの?そうなの父様っ!?そう言えば、父様と二人っきりになった事ないや…こんなにキツいものなの?よくリベルタさん耐えられるな…年の功ってやつ?リベルタさん、まだ二十代だけど。)」
物凄い重圧のせいか、思考回路が変な方へ飛んでる…だって、だってっ。
「……琴波」
そんな風に内心テンパっている状態で急に父様に声を掛けられて、私の動揺の許容範囲のメーターが一気に超えた。
「ひゃいっ!?」
思いっきり声が裏返ったァァァ!?
「……?どうした。」
「何でもないです…。」
どうやら父様は余り気にしていないようだったけど……あぁ、穴があったら隠れたいよ…。
「で、何ですか?」
羞恥心が収まった頃、私はできる限りすまし顔で父様に質問の内容を聞いた。
「ああ……学校、楽しみか?」
「はい、とっても!屋敷の中や本だけだと、本質は片面しか分かりませんし、もしかしたら情報に偏りや誤りがあるかもしれません。実際に見て、感じて、様々な物事を見極めていくには、学校は最適と思います。」
って、また6歳児にあるまじき堅苦しい受け答えをしてしまった…バカなの、私っ!!成長しろよ、私っ!!
「……そうか…いや、私の研究室が怖くて寮に入りたいのかと思ってな。」
父様の研究室……ええ、怖いです。怖いですけど、それは理由じゃなくて結果なんだよな。
「父様が好きでやられている研究ですし、それが原因で家を離れたりはしませんよ。」
「……すまん。ありがとう。」
「お礼なんて要りません、家族なんですから。」
恥ずかしいくらいベッタベタな台詞だが、事実なので仕方ない。
「では、今度研究室の中に招待しよう。」
「………怖いのは、ナシですよ?」
いや、ホントに。
琴波の家は、使用人がユリナとリベルタ、料理長ぐらいしかいないです。
※捕捉
屋敷から、徒歩30分程度の所に、仕立て屋がある商店街があるので、琴波達は歩いています。