485話 オカズ交換は楽しいです。
「えぇっ!!これ全部夜風さんが作ったの!?……ねぇ、良かったらオカズ一品交換しない?」
楽屋にてお弁当を食べていたら、良くあるオカズ交換を須磨さんから(つか、同い年かつ親しい演劇部の部員が須磨さんしかいないんだけど)持ちかけられた。
うむ、須磨さんのお弁当の中身は…レタスとプチトマトのサラダに玉子焼き(多分間に海苔巻いてるヤツ。手が込んでるなぁ)にアスパラのベーコン巻きか…。
「では…玉子焼きを差し上げますから、アスパラのベーコン巻きを。」
「うぅ…アスパラのベーコン巻き、私の好物の一つなんだけど…よし、分かった!」
「トレード成立ですね。」
いやぁ、私もアスパラのベーコン巻き好きなんですよね。今回はアスパラなかったので諦めたんですけど、まさかオカズ交換で手に入るとは…現実逃避の塊であるこのお弁当も報われると言うものです。
「はむ…ん〜、甘い玉子焼きだ!!」
「出汁巻きも好きなんですけど、今日は甘い玉子焼きな気分だったので…あ、このベーコン巻きも美味しいですよ。」
「あ〜、分かる!甘い玉子焼き食べると、ちょっとホッとするよね。」
急に名前知らないけど顔は覚えているクラスメイトの女の子に話しかけられて、大変慌てた…え、玉子焼きから話が膨らんだの?て言うか、良くこんな感じに他の人の話に入れますね…私無理です。(あ、誉めてますよ?)
「ちょ、スグ…夜風さんビックリしてるじゃない。」
「あ、ごめんごめん。私は竹河・ムンター・優って言うの。親しい人からはスグって呼ばれてるんだ。」
「あ、ご丁寧に…えっと、竹河さんは玉子焼きは甘い方がお好きなんですか?」
「ん〜、どちらかと言われたらね。甘い方が幸せな気持ちになるんだよねぇ。…ねぇ、菊花。そのお弁当菊花が作ったの?」
「…私が料理苦手なの知ってて聞く?」
「にゃはは、やっぱり同室の子に作って貰ったんだ!!…その点、夜風さんは凄いよね。私も唐揚げあげるから、夜風さんの玉子焼きくれない?…まぁ、冷凍食品の唐揚げだけど、美味しいよ?」
むむっ、また断りづらいお申し出が…唐揚げも捨てがたいんですが、私まだ玉子焼き食べてなくて…いや、お弁当に入らないで余ったのは食べましたけど、この時点でお弁当からはまだ食べてなくて…ちょっと悩みますね…。
「…はんぶんこ、しません?私、その…まだ玉子焼きを食べてなくて…。」
「あ、そうなの?ん〜…分かった!」
そう言うと、竹河さんは何を思ったか、唐揚げを半分食べてから私に差し出した。…うん、玉子焼きに比べて、唐揚げを箸とかで半分にするのは難しいのは分かるけど…人があからさまに口を付けたものを食べるって…恥ずかしいやら何やらで微妙な気分だ。(しかもアーンって…いや、良く私もイヴィールやペルラにしてるけどね?やるのとやられるのでは、こんなに羞恥心に差が出るとは…。)
恐る恐る…と言った感じで唐揚げを食べ、顔の赤みを引くまで俯いたまま咀嚼した。
「では、私も…はい、どうぞ。玉子焼きです。」
やっと顔の赤みが引っ込んだので、玉子焼きを半分にしてお弁当の内蓋に乗せて竹河さんに差し出した。
「あ、ありがとー!!はむ…うん、良い甘さ。私的には、もう少し甘くても大丈夫だけどね。あと醤油。玉子焼きの中に醤油入れてないんだ?」
「家の玉子焼きでは醤油入れなくて、砂糖と塩を入れるだけなんですよ。醤油は後掛けです。」
「ふへぇ、そうなんだ!?…はぁ、玉子焼き一つ取っても、家の味ってあるんだねぇ。」
「それ言ったら、『目玉焼きに何掛ける?』と言うアレはどうなるのよ…因みに私はソース派。あ、お好み焼きに掛ける方ね。」
「何おう!?目玉焼きにはケチャップでしょ!!」
…あらら、お弁当の玉子焼きから、段々お弁当の会話じゃなくなってきた…私は目玉焼きには醤油派です。




