32話 体調管理はちゃんとしよう。
昨日のリアマ嬢の発言のせいで、全く寝れなかった……。
ファイスカ家当現主のリアマ嬢のお父上、ヴォルカン・イーグニス・ファイスカ。属性自体の純度はリアマ嬢には劣るものの、体内保持魔力の多さと魔法操作の技術は世界屈指の腕前で、ファイスカ家始まって以来の天才。
人柄は、その才能を鼻にかける事のないさばさばとしていて温厚。しかし一度一族の者が傷つけば、傷つけた者には情けは掛けない冷徹さを持つ。
昨日、布団の中でファイスカ家の事をスマホで調べた結果判明した事の一部だ。(お陰で寝不足。朝早くに調べればよかった…。)
いろんな意味で勝ち目ないだろ、これじゃあ。
「はぁ、憂鬱だ。」
「コトハ、目の下に出来た黒い痣みたいなの何?とすごい怖いんだけど…。あと、どうしてそんなに目が充血してるの?」
ため息を吐きながら支度をしていると、ルナさんが質問してきた。
「目の下に出来た痣みたいなのは寝不足で出来る隈と言うものです。目が充血してるのは、こちらも寝不足が原因です。」
「そ、そうなんだ。…体調悪いんなら、学校休めば?ノートは、僕達が見せてあげるから。」
優しいなぁ、ルナさん…その優しさが身に染みるよ。
「嬉しいお誘いですが、体調が悪い訳ではないので休む訳にはいきません。…それに、今日はリアマ嬢のお父上がいらっしゃる日。リアマ嬢に失礼を言ったのも事実ですから、ここでちゃんとお叱りを受けてケジメを着けたいんです。」
「コトハ……何か男前だね。うん、分かった!僕は応援しかできないけど、頑張ってね!」
私が今頑張らないと、夜風家の存亡に関わるからな…。逃げるに逃げれないっ…。
いつにも増して食欲ががた落ちして、オニギリ一つを食べるのがやっとだった。
こんなに緊張したの、『私』の時にやった高校入試の時以来だな…。(あの時の方が、今の緊張感よりまだましなのだがな。)
「うっぷ……吐きそう。」
「ちょっと琴波、大丈夫?貴女オニギリ一つしか食べてなかったじゃない。」
朝ごはんを一緒に食べた由榎さんにも心配された…。
「だ、大丈夫ですよ…。少しばかり気持ちが悪くて吐きそうなだけですから。」
「吐きそうな時点で、体調かなり悪いでしょう。無理はしてはダメよ?」
「やっぱり部屋に戻る?肩貸すよ?」
二人の美少女に心配を掛けてしまった。
「大丈夫です、これは精神的なものですから…。原因を早く取り除けば治まりますから…。」
安心させるように由榎さんとルナさんに言った。
…安心させるようにしたはずなのだか、二人はため息をついてこう言った。
「「そんな真っ青な顔してそんなこと言っても、全然説得力ない(よ!/わよ。)」」
顔が青いのも、寝不足のせいですよ…。決してリアマ嬢一団(同じ寮生だしね……何回かは確実に寮内で顔を会わせます。)の視線で体力を大幅に削られているわけではないですよ、ホントウデス。(もしそうだとしても、口が裂けてもリアマ嬢には言わないけどね。面倒事はもう御免だ!)
結局教室に入るまで、登校途中から合流したディオさんとソルさんにも「どうした、顔青いぞ?」とか「大丈夫ですか?フラフラしてますよ。」とか言われて心配された。…はは、寝不足のせい…寝不足のせいさ。
朝から頭がボーッとしたり、鈍い痛みの頭痛がしたり、足元がおぼつかずフラフラしたり、目の前が霞んで見えたり、体が燃えるように熱かったり…。
全部ネブソクノセイサ。
教室に到着して、直ぐにドサッと机に突っ伏すと、机がひんやりしていて気持ちよかった。
「あ~、机が冷たい…。」
「おい、夜風。お前本当に寝不足だけか?真っ青通り越して真っ白だぞ顔色。」
「やだなぁ、ディオさん。本当に寝不足だけですよ?今はなんか体が熱いので、こうやって体を冷やしてるんです。」
「それ、完全に風邪引いてるじゃねえか!」
風邪?え、風邪引いたの私?…『琴波』になって初めて引いたな、風邪。
そう思ったら段々と意識が飛んできた。
最後に聞いたのは、騒がしい教室の音と、ガラガラと扉が開く――たぶん先生入ってきたが音だった。




