199話 慣れなきゃやってられません。
「あー、もうっ。私の恋愛観は良いんですよ!きっと、なんやかんやで見合い(悪い言い方だと政略)結婚することになるんでしょうからね。…傍流とは言え、家が一応貴族ですし。」
「もう、夢ないねぇコトハ。昔に一度ぐらい考えたことない?自分の理想の王子様が、目の前に現れるところとか。」
考えたこと…ないな。昔らかこんなんだったし。
「お嬢さん、お嬢さん!なんやお嬢ちゃんと話し込んどるとこ悪いんやけど…喉とか渇いとらん?なんか飲む?」
影の精霊が人並みに気を使っている…だと。
「でしたら…冷蔵庫の中にあるオレンジジュースを、コップに入れてくれません?勿論、ルナさんの分も含めて。」
「任せてぇな!…ハァハァ…激しいツッコミも良いけど、こう言うパシられる様な感じも…中々ええなぁ。」
あ、気を使ったんじゃなくて自分の為でしたか。…影の精霊を見直した私がバカだったわ。
「ああっ、その見下したような目線もたまらんで!久しぶりにお茶くみ人形をしたかいがあったってもんや!」
「バカッ、お茶くみ人形はカラクリ人形の一種だから喋らねぇよ!そもそも、んな動きが滑らかで色々な点が気色悪いお茶くみ人形があってたまるか!」
「光の精霊のツッコミもナイスやで!」
うん、私もこんなお茶くみ人形が居たら嫌だな。…そりゃ、日本人形風のお茶くみ人形も怖いけどさ。(ほら、人形って何か眺めれば眺めるほど怖く見えると言うか…。日本人形に限った事ではないんですけど。)
「…ねぇ、影の精霊さん。本当に一度で良いから、君をバラしてみてもいいかな?」
ちょ、ルナさん?一体どこから工具一式と…コレはメスとハサミ!?待て待て待て!貴女は何をしようとしてるんですか!!
「る、ルナさんストーップ!」
「ええ、何で止めるのさ。こんな複雑な生命体、一度バラして中身を確認しなきゃ僕の気がおさまらないよ!!影の精霊さん、怪我してもなんか平気みたいだし!」
「そんなことしたら、影の精霊が喜びまくって私や光の精霊さんの手に負えなくなるじゃないですか!」
ホワイト影の精霊の時でも結構精神的にキたのに、ノーマル影の精霊でそんな事(影の精霊風に言ったら“ご褒美”)をしてしまったら…うっ、想像したくない。
「あと、お偉いさん方の許可なく精霊(妖精もだけど)を解剖したりしたら処罰ものですよ?」
確か…精霊の位によって変化はするけど、そこそこ重い罰則ではなかったっけ?
「コイツ、一応は高位精霊に部類されるみたいなので…もし“うっかり”バラしたりしたら…。」
「バラしたりしたら…?」
「……影の精霊〜、オレンジジュースまだですか?」
「あっ!?はぐらかさないでよコトハ!そう言う風にやられたら物凄く気になるじゃないか〜。」
「ん〜…せやったら、お嬢ちゃん。お嬢さんのキツネさんをモフッとけば気が紛れるちゃうかな?あと、オレンジジュースお待ちどお様やで〜。」
「余り物でスミマセンが、俺が持っていたお菓子も付けました。…お口に合うかは分からないんですけど。」
影の精霊と光の精霊共々、頭の上にお盆乗っけてこっちに歩いて…手で持つには、中々二頭身って大変だから頭に乗ってたんだろうけど…面白い絵面だなぁ。
「お二人とも、ありがとうございます。…キツネさん〜?」
「きゅう?」
「ルナさんを癒してあげてくれませんか?」
「…別に、僕は疲れたりはしてないんだけど。…あう、尻尾が誘惑してくるよぅ。」
「きゅきゅ!?きゅぅう!!」
「え、ちょ…なんかキツネさんにメチャクチャ威嚇されたんだけど!?」
そりゃあ、尻尾はあんまり触ってほしくないからじゃないかな?現に私も…威嚇って程ではないにしても警戒はしてたし。
「ルナさん…私の時同様、尻尾は触ったらNGですよ。お腹をモフるだけで勘弁してあげてください。」
「えぇ…まぁ、尻尾と同じくらいお腹も魅力的なんだけどねっ!おりゃっ!!」
「きゅきゅ!!」
キツネさんめ…二回目だから流石に慣れたのかしら?反応が少し落ち着いてる。(相変わらずテチテチ叩いてはいるけれど。)




