第99回 ベタ日和
「…あれ?美味しい?」
ミントはチロルお手製のお弁当を食べ、果てしなく意外そうな顔で物凄く失礼な感想を口にした。
「! ホント!?」
が、ミントの感想を聞いてパアッと顔を明るくするチロル。
そこから少し離れた生垣に隠れてその様子を見ていたココアは
「流石は私!感謝してよねチロルー?」
と言った後
ピュッ
シュパンっ
アロエのシートの上に瞬間移動していた。
「へ?」
急に起こった出来事にココアが小首を傾げると
「…覗き見とは感心できない趣味だなココア?」
その隣からプリンの声が聞こえてきた。
「へ?あっ!!ちっ違うよー!!これはそのチロルのお弁当の指導者としてチロルの成長具合を見るためにミントの反応を見ていたのであって、決してそのあのえとあれでそのっ!!」
それを聞いて焦りながらブンブン手を振って弁解を述べるココア。
「ぷわ…ねむねむ」
「って聞いてよー?!」
結構意地悪なプリンくんでした。
「? なんかさっき変な音しなかった?」
先程までココアが隠れていた生垣の方を見ながら小首を傾げるミント。
「…ミントきゅん…」
それを無視してチロルは静かにミントに話し掛けた。
「? 何?」
ミントが自分の横にいるチロルの方に目を戻すと
「アタイね?劇的に気付いたコトがあるの」
うつ向き加減にチロルがそう言った。
「げ…劇的に?」
何をそんなドラマチックに気付いたのかミントが尋ねると
「…今まで一回もミントきゅんの気持ち聞いたコトなかったってコトに」
ってチロルが言った。
「うん。そだね」
あれだけ振り回しておいて今更気付いたのかコノヤロウ☆とか思いながらめ一杯頷くミント。
「じゃあ…今聞くね?」
すると
「…アタイはミントきゅんが大好きで、ミントきゅんのお嫁さんに安心してなれるように、ココアに手伝って貰いながらいっぱいいっぱいお料理の練習してきたんだけど…」
チロルは今にも泣きそうな声で
「ミントきゅんはアタイのコトどう思ってる?」
と、ミントに尋ねた。
「…」
その質問に答える代わりに
「…チロル」
ミントは静かに彼女の名前を呼んだ。
「?」
ミントに呼ばれ、うつ向いていたチロルが顔を上げると
ちゅっ
ミントとチロルの口が重なった。
「えっ―…?」
驚いたようにチロルが目を見開くと
「…こないだの仕返し」
ミントは頬を赤らめながらそう言った。
「ミント…きゅん…っ」
パシッ
ミントは顔が真っ赤になったチロルの手を取ると
「ほほほほらっ!!はっ早くしないとダンスパーティー始まっちゃうよ?!」
彼女の顔を見ないように、彼女を引っ張りながら学校に向かって駆け出した。
「うんっ!!大好きミントきゅんっV」
「に゛ゃー!!」
その夜
「プリンはわたくしに贈って下さらないんですの?」
ダンスパーティーの会場でふわっふわの黒いドレスを着たムースが尋ねた。
「む?」
長い髪を一つに束ね、白い礼服を着たプリンがいつものように小首を傾げると
「…赤い薔薇の花のことですわ」
ほんのりと顔を赤くしながらムースが言った。
「!? ぼっ僕がそんなことをすると思っているのか?!」
顔を赤くしながら驚いたようにプリンが聞き返すと
「いいえ?」
挑発的に笑いながらムースが答えた。
「くっ…」
その挑発に乗ってしまったプリンは
パッッチィン!!
と大きく指を鳴らした。
すると
ブワッッ!!!!!
「「?!」」
ダンスをしていた皆さんの動きを止めてしまう程の大量の赤い薔薇が会場いっぱいに出現した。
「…!!」
ダンスをしていた皆さんにとってはえらい迷惑な行為だが、会場いっぱいに現れた真っ赤な薔薇を見て
「ぷ…プリン…!!」
ムースは超感動していた。
「わっ…わたくしのためにありがとうございま―…」
ムースがお礼を言いながらプリンの方を向くと
「ぐー。」
「…」
魔力をめ一杯使ってしまったプリンは、立ったまま寝てしまっていた。
「超可愛いですわV」
何やらプリンパパに似ているムースでした。
「こっこっココアさん!」
ダンスが出来なくなってしまったためにブーイングが飛び交う会場で、薔薇に溺れながらサラダがココアに話し掛けた。
「? 何ー?ってか大丈夫ー?」
薔薇で一杯になった会場から出ようとしていたココアが振り向きながら聞き返すと
「ぼっぼくと踊っていただけませんか?!」
薔薇からやっとのことで脱出できたサラダがそう言った。
それを聞いたココアは
「ああゴメン。私、猫アレルギーなの」
「はにゃあ?!」
って言った後、会場を後にした。
「…」
パーティー会場から抜け出したココアは、辺りをキョロキョロと見回した。
「…誰を探してるのココアちゃん?」
「!」
すると、後ろからポトフの声が聞こえてきた。
「…会場にも来ないで何処行ってたのよポトフー?」
淡い桃色のドレスをふわりと舞わせながら振り向きざまに尋ねるココア。
「あっはっはっ!俺が会場に出たらレディたちに囲まれちゃうだろォ?」
黒い礼服を着たポトフはそう言った後
「…ココアちゃん、俺を探してたんだ?」
ってニヤリと笑いながら言った。
「ちっ違がうわよバ―…」
どうしようもない眼帯ナルシストにココアがそう言いかけると
ス…
「…俺と一緒に踊っていただけませんか?」
ポトフは片膝を折ってココアに手を差し出した。
「…」
顔を赤らめながら、ココアはその手を取った。
「…五万円ね?」
「ええっ?!」
その頃
「そ…そんにゃ…」
ココアにあっけなくフラれてしまい、へなへなと力なく床に崩れ落ちるサラダ。
ぽん…
「?」
そんな彼の頭に優しく手が置かれた。
「元気出しぃ?初恋なんてそんなもんや」
それに次いで、上からタマゴの声が聞こえてきた。
「た…タマゴくぅん!!」
そんな彼の優しさに触れ
ガバァ!!
「おおう?!」
感極まったサラダは、猫のように彼に抱きついた。
タマゴの胸でサラダがふにゃんふにゃん泣いていると
「あっあの…もしよろしければ…踊っていただけませんか?」
後ろからオドオドした声が聞こえてきた。
「にゃ―…!?」
驚いてその声がした方を振り返るサラダ。
そこにはオドオドしたアロエが立っていた。
「やったなサラダ!!セカンドラヴの始まりや!!」
そう言いながら文字通りサラダの背中を押すタマゴ。
「で、でもっ…」
オドオドしながらサラダがそう言うと
「ボーイズ ビー アンビシャスや…!!」
グッと親指を立てながらタマゴが言った。
「い…イエッサァ!!」
タマゴからの謎の激励にサラダはそう答えた後で
「よっ喜んで!!」
って言いながらアロエに手を差し出した。
「わぁ!本当ですか!?」
可愛らしく微笑みながら喜ぶアロエの両手には、メスやクーパーが危険に輝いていたそうな。
「ひにゃあああああ!?」
サラダくんのつんざくような悲鳴を最後に、魔法学校のダンスパーティーは幕を閉じましたとさ。




