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学校日和  作者: めろん
98/102

第98回 集合日和

青い空の下、深緑に美しく輝く森の中から


「ミントォ〜!!」


虫取り網と何かを担いだ一人の少年が元気に走ってきた。


「? 何ポトフ?」


涼しげな木陰に座ってコーラを飲んでいたミントが、顔を上げながら彼に応えると


「鹿捕まえたァ♪」


「鹿捕まえた?!」


ポトフはにこっと笑いながら担いでいた鹿を下ろしてミントに見せた。


「あっはっはっ!一緒に食おうぜミントォ♪」


気を失っている鹿の角を持ちながらポトフがそう言ったので


「いやいやどうやってこんなの捕まえてきたのさ!?って言うか食べるの?!」


ミントは暑いのも忘れて素早く突っ込んだ。


「? 鹿はうまァいぞ?」


小首を傾げるポトフ。


「味聞いてないし!!てか大体虫取り網持って森に行ったのにどうして鹿連れて帰ってくるのさ?!」


ズビシッ!!と、ポトフが担いでいる虫取り網を指さしながらミントが激しく突っ込むと


「これでボカッ☆と」


ポトフはその時のことを再現するかのように、虫取り網の柄の部分で気を失っている鹿の頭を弱く叩いた。


「使い方間違ってるし!?なんのために網ついてると思ってんのさ?!」


休みなく突っ込むミント。


「む…どうしたの?」


すると、ミントの隣で眠っていたプリンが目を覚まして起き上がった。


「あ!プリン!なんかポトフが虫取り網…の柄で鹿を!!」


突っ込み疲れたのか、助けを求めるようにミントがそう言うと


「! わー!鹿さんだ!」


プリンは目をキラキラと輝かせながらそう言った。


「うん。そうだね鹿さんだね」


プリンが突っ込みを助けてくれるワケがないと瞬時に悟るミント。


「丸焼きがオススメだ」


「バッカお前、生のが美味いに決まってんだろォ?」


そんなミントは置いといて、プリンとポトフは鹿の食し方について語り始めた。


「あ、やっほーみんなーって鹿?!」


そこに通りかかったココアがこちらにやって来た。


パキコーン


「…こんにちはココアちゃんV」


パキコーンとかいう変な効果音を出すなり、爽やかモードに切り替わったポトフは、黒い髪を掻き上げながらココアに真っ赤な薔薇の花束を差し出した。


「はいはいどーも」


かなり適当にココアがそれを受け取ると


「まあ!素敵ですわ!薔薇の花束をお渡しになるなんて!」


ぱんっと胸の前で手を組みながらムースが言った。


「「へ?」」


突然現れたムースに驚くプリンと、ムースが言った言葉を聞き返すココア。


「あはは…赤い薔薇の花言葉は"情熱的で甘美な愛情"ってヤツだよ確か」


そんなココアにミントがそう言うと


「!?」


ココアの顔が分かりやすく紅潮した。


「お詳しいのねミントさん!そう…スウィートラヴ…とっても素敵ですわ!!」


「いやぁそれほどでも〜」


キラキラと目を輝かせているムースに褒められ、後頭部に手を当てるミント。


「す…スウィートラヴ?」


赤くなった顔で真っ赤な薔薇の花束を見つめながらココアがそう呟くと


「…そう…」


ポトフはそっとココアの顎に右手を添え


くい…


「?!」


と彼女の顔を自分に向けさせた。


「…俺からココアちゃんへのスウィートラヴ…♪」


そして、ポトフは彼女の顔に自分の顔を近付けていった。


「ぽ…ポト―…」


突然の出来事にココアが足をすくませていると


ドカアアアアアアアン!!


「―…フー?!」


寸前のところでポトフが左の方に吹っ飛んでいった。


『おうコラあれで倒したつもりか?鹿を嘗めんじゃねえぞ小童が』


「鹿が喋ったー!?」


次いで右から聞こえてきた声に驚くココア。


この声の主は、先程まで気を失っていた鹿である。


「ってェな…つうか」


ポトフはムクリと起き上がると


「よくも邪魔しやがったなテメェ!!」


瞬時に間合いを詰めて鹿に回し蹴りを見舞わした。


スカッ


「なっ?!」


が、鹿は予想外に素早い動きでポトフの攻撃をひらりとかわしたのだった。


『フッ…この程度か?まったくもって話にならんな』


トッと優雅に着地した鹿が鼻で笑いながら言った。


「はっ…テメェこそ嘗めてんじゃねェよ?」


ポトフは鼻で笑い返すと


ヴンっ


と光の剣を出現させ、その切っ先を鹿に向けた。


『フフッ…そうでなくては…さぁ試合開始としようではないか!!』


「上等だァ!!」


ドカ―――――――ン!!


そうして彼らの戦いは始まった。


「…何キャラなのよあの鹿はー?」


ココアが悪役口調の鹿に少し遅めの突っ込みを入れると


「惜しかったですねココアさん?」


と、後ろから話し掛けられた。


「!?」


その声にバッと振り向くココア。


「…ポトフ=フラントにはもっとガッ!!っていって欲しかったですね」


そこには、大きめのバスケットを持ったアロエが、何か詰まらなそうに立っていた。


「ななな何言ってんのよアロエ!!ってアロエ?!」


顔を赤くすると同時に久しぶりの登場人物に驚くココア。


「お久しぶりです。アロエです」


ペコリと丁寧に頭を下げるアロエ。


「なっなんで此処にアロエがいるのよ!?って言うかムースまだいたの?!」


突然現れたアロエに突っ込みを入れた後で、そう言えば少し前に突然現れたムースに突っ込みを入れるココア。


「まあ!なんですの?!失礼ですわね!ヒトを使い捨てキャラみたいに!!」


その突っ込みを聞いたムースが怒った様子でココアに聞き返すと


「「ゴッゴホンッ!!」」


と、ミントとプリンとココアがわざとらしい咳払いをした。


「…なんですのその咳払いは?」


しらっとした目で三人を見るムース。


「「い…いや別に…」」


その視線から逃れるように顔を背ける三人。


「アロエはこの辺りで昼食を取ろうと」


その三人の隣で、バスケットを持ち上げながらアロエが言った。


「わ!ホント!?私もお腹すいたー!ってコトで私にもちょうだーい?」


素早く食い付くココア。


「…いいですよ よろしければ皆さんもどうぞ?」


すると、その場に大きなシートを広げながらアロエが言った。


「え?足りるの?」


ミントが小首を傾げながら尋ねると


「はい 今日はなんらかの意思を感じ取ったので多目に作ってきましたから」


アロエはコクンと頷きながらバスケットをシートの上に置いた。


「"なんらかの意思"って…まあいいか…じゃ、お言葉に甘えてお邪魔しまーす」


いささかの疑問を感じながらシートに上がるミントと


「まーす」


ミントにちゃっかり続くプリン。


「まあ!不思議なお料理ですわね!」


更にちゃっかりプリンに続いたムースがバスケットの中身を見ながらそう言うと


「…サンドウィッチだ」


さらりとプリンが言った。


「? さんど…?」


初めて聞いたのか、プリンの言葉に小首を傾げるムース。


「サンドウィッチ…何か魔女に関係があるのでしょうか?"ウィッチ"なだけに」


その隣でサンドウィッチを持ったアロエが小首を傾げると


「さー?昔は魔女の肉でも挟まってたんじゃない?」


タマゴサンドを食べながらココアが言った。


「グロテスクですね」


と言いながらハムサンドを食べるアロエと


「まあ!それは本当ですの?!」


顔を蒼白にしてサンドウィッチを見るムースと


「多分違うだろうな」


そんな彼女にクールな突っ込みを入れるプリン。


「♪」


彼の隣でミントがトマトサンドに手を伸ばした瞬間


「やぁん!お弁当ならアタイのを食べて〜ミントきゅ〜んV」


がばぁ!!


どこからともなくチロルが飛び出してきてミントに抱きついた。


「ちっチロル?!ってかお弁当って―…」


ほんのりと顔を赤くしながらミントが言うと


「今日は自信作なんだよ?えへっ♪」


チロルはにこっと笑いながら可愛らしいお弁当箱をミントに見せた。


「へ…へ〜ぇ?そ…そうなんだぁ〜…?」


そのお弁当箱を見、嫌〜な過去を思い出したのか、冷や汗を掻き始めるミント。


「! そうそうー!それで私は此処にミント呼びに来たんだったー!」


すると、ココアが思い出したように手をパンッと叩いた。


「?」


ミントが小首を傾げると


「さぁ!今まで特訓してきた成果を見せちゃいなさいチロルー!!」


ってココアが言って


「オフコース!当然よ!」


それに頷いたチロルはミントの手を取った。


「え?ちょっ…え!?」


チロルに立たされたミントが焦っていると


「…ついでにガッ!!っていっちゃってきても良いですよミントさん?」


アロエが小声で話し掛けてきた。


「なななっ何言ってんのさアロエ?!」


素早く突っ込むミントに


「本能のままに」


アロエはグッと親指を立ててそう言った。


「いやいやだから何言ってん―…」


ミントは突っ込みの途中で


「さ!行きましょミントきゅんV」


「―…NO―――ッ!!」


チロルに誘拐されましたとさ。

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