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学校日和  作者: めろん
97/102

第97回 不憫日和

お祭りから帰って来て


「ぐー。」


いつものように枕を抱えながらぐうぐう眠るプリン。


「…」


彼とは対照に、ポトフはお祭りでゲットしたモコモコした羊さんクッションを抱えながら、暗い天井を見つめていた。


「…眠れないのポトフ?」


そんな彼に、ミントが静かに話し掛けた。


「! ミントもか?」


ミントも眠れないのかと思ってポトフが尋ねると


「ううん さっきまで寝てた」


ミントは首を横に振りながらさらりと答えた。


「あ…そォ…」


ちょっぴりがっかりするポトフ。


「あはは 今日はなんかいろんなコトがあったもんね〜?」


ちょっぴりがっかりしているポトフをよそに、ミントが笑いながら言った。


「…ミント」


すると、ポトフが静かに彼の名前を呼んだ。


「何?」


ミントが小首を傾げると


「メアイ カムイン?」


ミントのベッドを指さしながらポトフが尋ねた。


「取り敢えず逆吊りになってみよっか?」


にこっと笑うミント。


「冗談ッス」


ブンブン首を横に振るポトフ。


「あはは じゃ、コーヒー入れてあげるね?」


すると、眠れないポトフを見兼ねてか、ミントがベッドから降りながらそう言った。


「! ありがとォ―…」


彼にお礼を言っている途中で


(…れ?コーヒーには覚醒作用があったような…なかったような?)


とか思うポトフ。


「えと、確かポトフは超ブラックだったよね?」


ポトフがそんなことを思っている間に、カップを持ってこちらに戻ってきたミントが彼に尋ねた。


「"超"?」


ポトフが首を傾げると


「ハイ♪」


にこっと笑いながらミントがポトフにカップを手渡した。


「…わァお…墨汁の芳しいかほり…」


そのカップいっぱいに注がれた超ブラックコーヒーを見て超喜ぶポトフ。


「…でもよかったねポトフ?」


再びベッドに戻ったミントは、彼から貰った墨汁の使い道を考え、仕方なく書道をやり始めたポトフに言った。


「はェ?」


毛筆を墨汁につけていたポトフが顔を上げると


「ポトフの本当の両親が見付かって、本当は親に捨てられたんじゃなくて…まあ"ババロア"の死亡届はもう出しちゃったみたいだけど…」


布団を被ったミントが静かに言った。


「あっはっはっ!枕が兄貴なのは頂けねェけどな?」


半紙を呼び出しながら笑うポトフ。


「ぐー。」


すると、プリンのいびきが聞こえてきた。


「…こんないびきに区点入れるようなヤツと俺の何処が似てるってんだ?」


それを聞いて不満そうにポトフが言うと


「そうかなぁ?二人は結構似てると思うけど?」


ってミントが言った。


「へ?」


再び毛筆に墨汁を染み込ませながらポトフが聞き返すと


「…確かに髪の毛の色とか目の色とかは違うけど」


ミントは大きく息を吸い


「授業中ほとんど寝てるとことか、そのクセに頭良いとことか、たまに同じ夢見てるとことか、しょっちゅう台詞被るとことか、女子にモテモテなとことか、たまに危険なとことか、素直じゃないとことか、喧嘩っ早いとことかそっくりだよ?」


って一気に言った。


「そ…そうかァ?」


予想外の長台詞を聞きながら小首を傾げるポトフ。


「うん それにポトフのその笑い方とか、抱きつき癖とか、光魔法とか、お父さんにそっくりだよね?」


ミントは頷きながらそう言った。


「…ミント」


そんな彼に、筆を置いたポトフが静かに話し掛けた。


「何?」


ミントがポトフの方を向くと


「を手紙V」


って言いながら、にこっと笑ったポトフがミントに半紙を手渡した。


そこには


[I love you forever♪]


(私は貴方を永遠に愛しています♪)


って書いてあった。


「…」


ミントはマジックペンを呼び出すと


キュッ


っとその手紙に一本の線を加え


「お返事」


それをポトフに手渡した。


「?」


その手紙を開くポトフ。


そこには


[I rove you forever♪]


(私は貴方にロープを巻き付けて永遠に固定した♪)


と書かれていた。


「あ…あっはっはっ…ミントは冗談が上手い―…」


「向日葵!!」


「なァァァァァァ?!!」









翌朝


「はい ご飯だよ〜」


新しくやって来たルームメイト(金魚×3)にエサをやるミント。


「わー!食べてる!」


金魚鉢の水面に浮かんだエサをぱくぱく食べている金魚たちを見て、目を輝かせるプリン。


「これが金魚のエサだからね?」


エサの袋を閉じ、それをテーブルの上に置きながらミントが言うと


「うむ。分かった」


プリンはコクンと頷いた。


「よろしい …にしてもこの金魚、なんか配色がオレらに似てるね?」


金魚鉢の中を元気に泳ぎ回っている金魚たちを見ながらミントが言った。


「む?一郎侍たちが?」


ミントの言葉を受け、同じように金魚たちに目を向けるプリン。


「"いちろうざむらい"?」


透かさず聞き返すミント。


「! 本当だ!」


それが聞こえなかったのか


「一郎侍がミントで、二郎童(わはら)が僕で、ぞんじ三郎がわんわんだな?」


斑模様の金魚、白い金魚、出目金の順に指さしながら微笑むプリン。


(…一郎と二郎は良いとして、何故三郎だけが古語の敬語の世界に?)


"ぞんじ三郎"を"存じ候ふ"と解釈したミントは


「あ、これは食べちゃ駄目だからねポトフ?」


ふと思い出したように、先程まで金魚のエサがあった場所を指さしながら、なんでも食べてしまうポトフに注意をした。


「! あ…あっはっはっ!ななっ何言ってんだよミント?俺が金魚のエサなんか食うワケねェだろォ?」


ミントの言葉にビクッと反応し、慌てて金魚のエサの袋をテーブルの上に戻すポトフ。


「…減ってる」


その袋を見て、プリンがポツリと呟いた。


「あ…あっはっはっ…」


たらたらと冷や汗を掻き始めるポトフ。


「…もう食べちゃったんだ?」


呆れたようにミントが尋ねると


「は…歯応え最高☆」


ポトフはグッと親指を立てた。


「失せろ」


「俺の扱い酷くねェ?!」


直後、ポトフはプリンの枕によってお仕置きされた。


ドカ―――――――――ン


「…」


元気よく吹っ飛んでいったポトフを見て


(よかった ポトフいつもと変わってないみたい♪)


以前と変わらないポトフの姿に、心からの笑みを向けるミントでした。


「って何強引に良いオチにしてんだァ?!」


ちゃんちゃん。

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